第10話 魔力
昼過ぎには、ウォルが帰ってきた。
「ハナ、ただいま」
ウォルは、少し機嫌がいいように見えた。
「ウォル、おかえりなさい。何かいい事あったの?」
ウォルは少し驚いたような顔をしたが、
「んー。特にないけど。勇者様が無理しないように言って来たから、ハナもここの邸でゆっくりできるよ」
「雷斗にあったの?雷斗元気だった?ケガしてなかった?」
「ハナ、落ち着いて!昨日の今日で、まだ何も出来ないよ。本人は頑張って早く結果を出そうとしているようだったけどそれだと、体内の魔素がなくなって、命の危険があるから急がないように、まずは訓練を頑張るように言って来たんだよ。勇者様は元気そうだったよ」
「そう、良かった」
あれ?知らない単語・・・
「ん?・・・・・魔素?」
「魔法を使うには、体内の魔素っていうのを使うんだ。ただ、魔素に限りがあるから、その魔素量を増やさないと何度も魔法は使えない。しかも魔素を使いすぎると死ぬ事もあるから、気をつけないといけない」
ウォルは私を庭に案内した。 するとウォルが手を地面にかざすと、庭に落ちていた葉っぱが風に吹かれ宙に舞った。
うわー!すごい。
「ウォル!これも、魔法でしているの?」
「そうだよ。これぐらいの魔法なら、何度も使えるよ。ハナ、あっちの木を見て」
私達から10メートルくらい離れた木をウォルが指さした。 ウォルの手のひらから、文字のような円形のものが浮き出て、緑色に光った!
ウォルが手のひらを木に向かってかざすと、緑色の光りは木に向かってまっすぐぶつかった! 木は光りがあたったところから半分に折れていた・・・・。
すごい。 私は言葉が出なかった。
「これは風属性の魔法なんだ。この距離なら、魔物もある程度なら倒せるよ」
「すごい!みんなこんな事ができるの?それならみんなで行けば魔王を倒せるんじゃないの?」
「これぐらいの魔法でもみんながみんな使えないよ。私は、ある程度素質があるから、出来るんだ。勇者様が魔王を倒しに行く時には残った者で、この国を守らなければならない。だから私は城に残って、みんなを守る仕事があるんだよ。陛下や王妃様、王女様を守るのが私の大きな仕事なんだ」
「そうなんだ。じゃあ私がアロニーの村に行く時にウォルとお別れになるんだね」
私は、思った事を口にした。ウォルは少し悲しそうな顔をして、
「ハナが、いいならずっとここにいていいんだよ」
え?
「そしたら私は、元の世界に帰れないよ」
「・・・・・そうだね」
何となく、今思った事があったけど、口にしたら、私は元の世界に帰れなくなる。そんな気がして、何も言わなかった。
『ウォルは、私にここにいて欲しいの?』
その考えを打ち消した。
「私も、魔法が使えるかな?」
「祭司にもう聞けないから、一つずつ確認しよう」
ウォルの機嫌は戻ったみたいだった。
ウォルは私の右手に触れ、手のひらを上に向けた。
「ハナ手のひらの中に私の魔力を流すよ。温かいものを感じるはずだから、それを体中に巡らせて・・・・」
と言って、ウォルの手に力が入った瞬間!!! バチバチッ! 痛い!!! 思わず、ウォルの手から離した!!! ウォルも驚いた顔をしていた。
「ハナに魔力が入らない!なぜだ?」 ウォルは
「ごめんね、もう一度、今度はハナから無理やり魔力を取らせてもらうね。もしめまいとか息苦しさとか出たらすぐに手を離してね」
私はうんうんと頷いた。私にはわからないけど私には魔力がないからウォルの魔力を受付ないのかも?こんなんで私この世界で生きて行けるの?不安が大きくなる。
ウォルがもう一度私の手のひらに自分の手をかざした。
すると 「ζευτγφξηικναδφγυθυτ・・・・」
聞き取れない言葉でウォルが詠唱した。 すると私の手のひらから虹色の光りが浮き出て来た!
その光りは、ウォルの手のひらにどんどん入っていく。
「ハナ、きつくない?」
「え?なんともないけど、私の手のひらからこの虹色の光りが出てるの?」
「そうだよ!ハナ、とっても綺麗だ。そしてハナの魔力は優しくて温かい」
綺麗だ!の言葉に恥ずかしくなる。
「ハナ、私が手を離しても光りがこのまま出るか、確認するよ。さっき私が見せた風をイメージして、手で落ち葉を浮かせてみよう」
そう言って、ウォルは私から手を離した!
手を離したと同時に虹色の光りは、すーっと消えていった。
「え?ウォル消えたよ?」
ウォルも不思議そうな顔をした。
「私もはじめて見る色だったから。対応が間違ったかもしれないけど、いろいろやってみよう。間違いなくハナの中に魔力があるから」
ウォルは優しく微笑んだ。
ウォルの言葉に安堵した。
良かった。
属性とかわかんないけど、魔力があるなら私もこの世界で、生きて行けるんだ。
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