第3話 ウォルの狙いと優しさ

雷斗は結局、城の人に連れて行かれた。 その時の雷斗は抵抗するでもなく、ただ下を向いて落ち込んでいる様子だった。 遠く離れて見えなくなる前に 私は雷斗の背中に向かって叫んだ。



「雷斗ー!雷斗を信じてる。一緒に帰ろう私達の世界に。私は大丈夫だから、雷斗は雷斗のやるべきことを頑張って」



雷斗は私の方に振り向いた


「ハナ!一緒に帰ろう。あの時の返事を俺はまだ聞いていない。あの場所に帰れたら、その時に聞くよ!」


雷斗はニコッと笑った。 いつもの雷斗だ!


雷斗は今度は自分の足で、堂々と歩いている。


あぁ、これが勇者のオーラなのね。



後ろから


「ハナ、妬けちゃうね」



「ウォル」



「ハナの婚約者なの?」


婚約者?


「違う!違う!婚約者じゃない!付き合ってないから」


「付き合う?」




「私達の世界では、お互いが好き同士なら付き合って恋人同士になるんだけど、結婚前提とかでは、ないの」


「ハナの世界の男性は、責任能力がないの?」


「そういうことじゃないんだけど」



「ハナの世界はそれが普通なの?」


「いろんな出会いがあるけど、私はちゃんと好きな人と結婚したいって思ってる」


「じゃあ勇者様は結婚相手じゃないんだね?」


「そうよ!そんな関係じゃないから」


私は、恥ずかしくて顔が赤くなる。


「だからまずは付き合って、恋人同士になるのが先かな?」


「ここは王族や格式ある家柄はハナが想像できない内容かもしれない。正室以外に側室を設ける事もあるから。子孫繁栄には必要だよ」


「そうなんだ。私は嫌かも」


「でも、婚約者が決まったらよっぽどの事がない限り、その相手と必ず結婚するよ。そして一生大切にする」



ウォルは私の目を見て話すから、私に言われてるみたいで、照れてしまう。


「ウォルは婚約者がいるの?」


「いないよ」


その顔は少し、照れたように話す。


「そう。いい人に出会えたらいいね」


私は心からそう思った。こんなに優しくてイケメンで、絶対いい縁談が来そう。


『でも、見つけた』

ウォルは私に聞こえない声で何かを言った。


「ん?何か言った?」


「ううん。もっとハナの世界の話しを聞かせて」



そう言って、私の手を握った。



「まずは、私の家に行こう。ハナは王宮では暮らせないと思うから」


「え?雷斗は?」


「勇者様は力が安定するまでは、逆に王宮から出れないよ。」


「もしかして、ウォルが私を拾ってくれなかったら私どうなってた?」

ウォルは少し渋い顔になって


「普通に城を追い出されて、今頃は、途方に暮れてたかも?」


その言葉に私の顔は青ざめる


え?私ってば、ポイってされてたの?


ウォル!私を助けてくれたのね。


「ウォル!ありがとう。でもウォルの家に行って迷惑にならない?」


クスクスとウォルは笑って


「ハナはやっぱり他の令嬢達と、違うよね。ハナは自分の心配だけしてていいよ。後は全部私に任せて」


ウォルはイタズラっぽく笑っていた。 その笑顔にゾクっとした。


「あまりお世話にならないようにするね」

「ん?好きなだけ、いていいよ」


甘えたら、この世界から抜け出せなくなる気がする。




でも今はこのウォルに頼るしか、わたしの生きる道がないんだと思う。

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