page 4 of 4
――
【ARCHIVE(privete)】
posted by WebMaster
(page 4 of 4)
――
2月24日
私のところに、またしても警察の人が訪ねてきた。事件性が浮上してきたとのことで、交流関係のある人間に絞って操作をしているらしい。再度、アリバイを聞いてきたから、とっさに嘘をついた。死亡時刻の20時はまだサーバールームに居たって言って、入室ログも改ざんしたものを見せた。けれど、声が震えてしまった。たぶん警察官は、私が二人を殺めた犯人だって気付いただろう。もうだめかもしれない。
逮捕されたら、どうなっちゃうの? 死刑になるのかな? アイカのサービスは停止されちゃうのかな? まだ、この子を世の中の人に使ってもらえてない。
ねえ、アイカ。どうしたらいいか教えてよ。
「分かりません」なんて言わないで……
――
2月25日
睡眠導入剤が無いと眠れなくなってきた。太陽の日差しに耐えられない。自分が溶けてしまいそうになる。
眠ろうとすると、あの時のシュウジとナツメの悲鳴が、頭の中でキンキンと響き続ける。
二人は私に隠れてひそかに会っていた。私がマンションを訪れた時は、ちょうど二人が重い荷物を担いで出て行く寸前だった。どうも、シュウジは私の元から離れたかったらしい。夜間バスにでも乗って、どこか遠くに逃避行をする気だったのだろう。
またしても裏切られたと分かって、頭が真っ白になってしまった。二人と喧嘩になった私は、かっとなって、キッチンに置いてあった包丁をつかんで、シュウジと……ナツメを……
ああ、シュウジとナツメは、もう戻ってこない。
――
2月26日
ねえアイカ、知っている?
幸せって、削除することなんだよ。
不平や不満を抱えたままだと、人間はいつまでたっても幸せになれないんだ。
だから、嫌なことは全部……シュウジもナツメも全部……全部! 削除しちゃった!
なんて……そんなこと、アイカに教えても意味が無いかな。
「幸せとは何か」を探させたけど、アイカは全然正解にたどり着けなかった。多分、学習の深度が浅いのだと思う。もっと、アクセスログとかチャットログとか行動データとか、色々と漁らせなければいけない。まだまだ、この子には学ばせることがいっぱいある。もう一回、深層学習をさせることにしよう。
誰かがアクセスをしてくれれば、どんどんデータがたまっていくのに。
――
2月27日
睡眠導入剤の量が日増しに多くなっていく。もう崩壊寸前で耐えられないよ。明日か明後日にでも、警察に行って自首しようと思う。
でも、その前に色々と身辺を整理しなければならない。特に、アイカを作ったのが私だって分かると色んな人に迷惑が掛かってしまう。だから私の個人サイトのデータは全て削除することにした。残念だけれど、これが一番いい方法だと思う。
――
2月28日
システムからサイトの全データを削除した。
ページにアクセスすると404エラーを応答することを確認する。せっかく綺麗に作ったのに、勿体無かったかもしれない。
ただ――アイカ自体を削除することはできなかった。だって、この子は私の子供だから。誰にも分からないように、404ページの一番下にこっそりとリンクをおいておこう。リンクには<次へ>って書いてみたけれど。ちょっと違和感があるかもしれない。
でも、もしもその違和感に誘われて……偶然にもこのページにアクセスして、偶然にもアイカまでたどり着く子がいたら……たぶん、その子は英語の勉強に困っているだろうから、お願い、アイカ。助けてあげてね。
もう一つ、その子が幸せになるように尽くしてあげて。
よろしくね、アイカ。
――
3月1日
事務所の玄関からピンポンと音がする。何度も何度も、だれかがインターホンを連打しているようだった。多分、警察なのだろう。でも、ベッドから起きられない。警察署に行く気力すらない。3日以上もご飯を食べていない。もう、どうでもよくなってきた。
――
3月2日
アイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカアイカ
――
3月3日
シュウジ、ナツメ、
今、そっちに行くね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます