やってみたかった短編

@inb1091

俺はコイツにまた自己紹介をする。

「人って、必ず何か一つは覚えられないと思うんだよね。」


『いきなりどうした』と言いかけたが、俺に話しかける時コイツは〔いつも〕唐突なふり方をするのを思い出し、俺は「例えば?」と聞き返した。


彼は「そうだね。〔漢字を覚えられない〕とか、〔約束事を覚えられない〕とかね。」

と、返されたが俺はあまりピンとこなず、「つまりは?」と聞くと....


「つまりね、

僕は君の名前をまだ覚えてないんだ。」「10年も友人やってるのにさすがに酷くないか?」さすがに傷ついた。

――――――――――――――――――


「いや、一応知ってはいたが10年も経ってまだ覚えられないのか...」

「いやぁ!ごめん!僕、最近親の名前を漢字で書けるくらいになったくらいでさ。」「もはやそれは名前を覚えられないとかのレベルじゃないんじゃないのか?」


1度精神科に連れていく案はアリかもしれないな....


「いやぁ、本当に名前だけなんだよ。記号や英単語、四字熟語や化学の元素記号。後は、君の誕生日や小三の頃の成績表の道徳性をもう少し頑張りましょうを押されてた分m「それは忘れろ」...まぁ、僕はある程度記憶に自信はあるんだけど、名前だけはどうも覚えられないんだよ。」


「名前を覚えたとしても、同姓同名の人間を区別するのに必要なのは結局顔や声だ。それに結婚すれば人は姓を変える人もいれば、現代だとキラキラネームなんてものから改名をする人も一定数以上はいるだろう。

それに名前を覚えても、いつかは離れてしまう。顔や声だけならまだ上塗りできるけど、名前まで覚えたら、きっとイナくなってしまった時に、悲しさがずっと足を引っ張る...」


俺は何を言うでも無く、静かにその話を聞き続けるしか無かった...

その顔は、【悲しそうな】【辛そうな】顔を浮かべていたから。

でも、俺は思う。

「人は成長するし、声も変わる。面影は残るかもだけど、それですぐわかるとは限らないと思う。」

「...つまりは?」

「俺はお前、《名華 夢》を忘れない。お前に例え忘れられてもな。」

そう、彼女に言った。

「....その言い方はずるいなぁ...(ボソッ)」

いつの間にか日は落ちかけ、黒い鳥は烏か鳩かは分からない。ただ照らされた彼女の顔は赤く照らされていた。

「そろそろ帰るか...ほら、早く立て!」

「はーいはい!わかったよ!...名前、何だっけ?」

こいつは、きっと明日もするであろう質問をする。

無理に覚えなくてもいいのに、その名前を毎度俺に言わせる。

「...はぁ、〔織斑 守〕だよ。覚えなくても友達だからな。ほら行くぞ。」

「うん。ありがとう。



守」


俺達は帰り道にまた駄弁りながら忘れていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

やってみたかった短編 @inb1091

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ