第9話 接敵

「我らの敵はこの国そのもの!!この国を作りし、真祖共とそれに加担する異教徒共に神罰を下すのだ!!敵の指揮官は、忌々しき吸血鬼の真祖である!!!皆、よく聞け!!これは聖戦だ!!我々が自由を勝ち取りこの国を異教徒共から解放するのだ!!」


両軍は、即座に先頭を始めた。お互いに、重傷者や死者を出しながらそれでも自分の正義を信じて。


深夜零時から始まった作戦は、3時間にわたる総力戦の末に決着しそうになっていた。


「あぁ、やはり貴方でしたか。真祖へルミナ.....まぁ、我らが王オベロンがこんな作戦に参加するわけがありませんからねぇ。

この宗教は、人間が興した物でしたが一神教の我らエルフにとっては都合のいい宗教でした。

家で帰りを待つ妻がいるんです。早く決着をつけましょう。」


そう言って緑色の閃光を放つ。


「お前の妻は、既に死んでいる。それすら理解出来ていなかったのか?お前一人の身勝手な暴走の果てに、美しかった教会も荒れ果て信徒さえ荒くれ者や犯罪者くずればかり、もはや元の形は、見る影もない。お前の魂は我々が回収し、冥獄に捉える。これは確定事項だ。」


閃光を避け、真祖は霧へと姿を変える。


「降参するなら今だぞ...しないと言うなら容赦はしない。今はただトラキアの顔を立てているだけだ。」


「何を腑抜けたことを仰るか!私は国盗りをしようと云うのだ真祖くらい倒せず何とする」



エルフという種族は妖精族の中で、現在王道と名乗り、統治している種族だ。羽翼族や小妖精族などとの会合の際に、三帝と呼ばれる三種族の長が居り、エルフのオベロン 羽翼のティターニア 小妖精のイオランテと3人の王が居る。エルフ族はプライドが高く自分たちこそが至高だと考えている。その為に、目の前の事を自分に都合良く解釈する節が多

ある。

彼は、今まさに妻はとっくに自殺しているというのに死んでいないと逃避している。受け入れられないのもあるだろうが、あの日記を見るに自分が殺して、それで且つ彼女は許してくれた自身のことを許しきれないんだろう。


「アハハははは、それにしても妻が死んでいるだと?何をほざくかァァァ!!!!」


そう叫び辺りに暴風が吹き荒れる。暴風の中に風の刃が混じり、ヘルミナの身体に切り傷を増やし続ける。致命傷にほど近いダメージが入った所で暴風の刃は収まった。


「お前は、自らの妻と我の恩赦を無駄にした。ならば、これより断罪の刻だ。さぁ、顕現せよ!我が玉座よこいつの罪を天秤にかける。赫き剣の裁きを!!」


ヘルミナがそう叫ぶと、魔法陣が展開し、辺りに無数の赫い剣の刺さった赤黒い玉座が出現した。


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