第2話 真祖は妻には敵わない

 いつも、目が覚める時は誰しも憂鬱になるものだ。種族を問わず、怠惰を目指す生物は朝に眠気と戦うのは生きているという証だろう。

気持ちよく寝ていると体を揺すぶられている感覚がする。あぁ、朝が来たといつもここで思う。自慢の妻が俺を揺すって起こしているのだ。



「あなた、起きてください!まったく、少しでも目を離すとこれなんですから!早く起きて下さい!真祖が寝坊とか従者に示しがつかないでしょう!」


「あと5年....」


「どれだけ寝る気ですか...そんなことしたらロシェ様に怒られますよ!」


「.....血ぃ吸わせてくれるなら起きる」


「もう!しょうがない人ですね...私も起きたばかりなんですから、少しだけですよ?」


「えッ!?まじで??」


 冒頭では、あんなことを言ったな?あれは嘘だ...

何があろうと俺は吸血鬼、好きな人の血を吸っていいならいくらでも起きるものさ

そうとも、大人は嘘吐きだ。

特に俺レベルにもなるとそれは顕著だ。

簡単に言おう、それはそれは華麗に飛び起きた。

あのときの起き方は異常なほどに俊敏だった。


「あなたったら・・・」


とかいいながら呆れた顔をするが、そこもかわいい。


「あなた、今日は13師団に行くのでしょう?早めに行動しないと帰りが明日になりますよ?」


 シャツのボタンを外しながらそう言ってくる。


「うん、気は乗らんけど行かなきゃ面倒くさいからな・・・。」


 そう言うと、妻自慢の銀色の髪をなでながら、白くてハリのある首筋に噛み付く。


ツーっと噛み跡から血が白い柔肌に零れ傳う。


「あっ・・・」


 色っぽい声を出しながら抱きしめてくる。

そこがたまらなくかわいいのだ。


「んぁ、やっぱりお前の血はおいしいな」


 血を吸うついでに、キスマークを付けたことにはまだ気づいていないようだが、仕事から帰るころには気づいて帰ったら怒られるだろう。

 だが妻との時間を作るためには、このくらいしなければロシェに、後から口うるさく言われるのだ。

 だから、これも妻に対する愛ある行動だ。


「ふふ、では今日も頑張りましょうねあなた」


 満面の笑みでそういう妻には、真祖でも敵わないのだ。


「ああ、いってくるよ」

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