最初の決闘 ~在学をかけて~
「えー、それでは、非常にめんどうなんだが、これより決闘の点呼を行う。決闘代表者はそれぞれ前へ」
放課後のグラウンド兼スタジアム。400mトラックから野球用のグラウンドまでを悠々と格納するだだっ広い場所。彩音先生はいつにもまして気だるそうだ。
「西、『維新姜也を退学させ隊』隊長、立昇 ジン」
「はい」
まるで新選組のような白と青の羽織を身にまとった集団の中から、立昇と呼ばれた男が前に出てくる。頭に白い鉢巻をまいているあたり、ホントに新選組でも模しているのだろう。
「東、維新姜也」
「へい」
まあ、相手は15人ほどの集団だが、俺はもちろん一人な訳で。立昇という男の正面に立つ。俺と背丈はほとんど変わらないが、見るからに相手のほうが強そうだ。
「両名、本決闘での勝利賞与を申告せよ」
決闘の勝者には絶対服従。あらゆる願いが決闘の前では等しく成就する。
「我々、『維新姜也を退学させ隊』が勝利した暁には、『維新姜也』の退学を所望します」
まあ、そりゃそうよね。俺を退学させたいんだもんね。
俺は、――
「俺が勝ったら、『退学を条件とした決闘の開催』を金輪際禁止、でお願いします」
俺の言葉に、少しだけ彩音先生が驚く。
「・・・維新くん、そんなのでいいの? そもそも君が勝つ確率も相当低い気はするけど、勝ったところで君に大して何もメリットないんじゃない?」
「大丈夫です。そもそも決闘しちゃってる時点で大赤字なんで。今後静かに暮らせるならまあ悪くはないかと」
面白い奴だな、君は。と彩音先生はくすっと笑った。
俺は、負けを前提としていない。この圧倒的不利な戦況で、勝利しか見ていない。だから、俺にとっての不利益はこの決闘に割かれる労力のみなのだ。
敗北して退学? 笑わせんな、こんなところで負けてたまるかってんだ。
「それでは、これより 維新姜也 対 『維新姜也を退学させ隊』の組手決闘 を行う。構え――」
1対15の組手を果たして組手というのだろうか。という疑念はぬぐえないが、やるしかない。
グラウンド兼スタジアムの観客席にはなぜか1-Aの女子全員が見える。それに加えて、新入生の決闘を見物に来た上級生どももちらほら。
大概、一人でボコボコにされる俺を見に来たに違いない。全くもって趣味の悪い奴らである。
「維新姜也。お前は、確実に、ここで倒す!!」
「あーはいはい、やれるもんならやってくれ。手短にな」
「――はじめっ!!!」
彩音先生の掛け声と共に、俺の在学をかけた決闘が幕を開けた。
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