ベートーベン ピアノソナタ第8番ハ短調作品13「大ソナタ悲愴」 第二楽章

 第2楽章 Adagio cantabile


 **********


 束の間訪れた

 安らぎの時

 柔らかな光が湖面を照らし

 やさしい風が草花を揺らす


 おやすみなさい

 今だけは


 気まぐれな女神が微笑み

 私の髪をそっと撫でる


 嵐のような試練が

 まるで全て夢であったかのように

 穏やかに過ぎる時


 けれど試練は

 この先も続くだろう


 この先に待ち受ける試練を思い

 強張る私の頬に

 女神の甘美な口づけが落ちる


 おやすみなさい

 今だけは

 何もかもを忘れて


 試練に打ち勝たんと

 立ち向かう人を

 神は必ず見ています


 私の中の情熱も

 今だけは

 弾むように体の中で踊るだけ


 今は

 今だけは

 この幸福な凪に

 身も心も全てを委ねて



 **********


 はい。

「悲愴」第二楽章でございます。

 第一楽章とは打って変わって、本当に穏やかでゆったりした感じです。

「悲愴」感は、ほぼ無いですね(笑)

「月光」の時も思ったのですけど、第二楽章って穏やか/明るいパートなのかな。

 そんな視点で考えた事は今までなかったのですけど……(・_・;)

(なんせピアノを習っていた頃は、ちゃんと真面目に向き合ってなんていなかったもので)



 この曲を聴いてわたしの中に真っ先に思い浮かんだ情景は、森の中の湖。

 木々の間から木漏れ日が差し込んでいて、その木漏れ日が、微かに吹いている風で少し波だった湖面に乱反射して、全体的に淡く光って見えるような、とても美しい湖です。

 そしてその湖の畔で、第一楽章で登場した青年ときまぐれ女神が、共に束の間の休息を取っている。

 イメージとしては、女神の膝枕で青年がうたた寝をしている、という感じでしょうか。


 青年はおそらく、最初の試練を無事に乗り越えたのです。女神を味方につけて。

 でも、疲れ果ててしまった。

 そんな青年を癒してあげようと、女神が青年を湖へと誘ったのでしょう。


 いわば、頑張った青年へのご褒美、ですね。

 そして、これからも続くであろう試練に、どうか青年が打ち勝てるようにと。

 そんな願いも込められているような気がします。

 女神と言えど、あまり手助けばかりはできないもどかしさもある。

 けれども、青年にはなんとか、神から与えられた試練を乗り越えて欲しい。


 もしかしたら、きまぐれ女神はこの青年に恋をしてしまったのかもしれません。

 なんちゃって。


 曲の中盤~終盤にかけて、少し、曲調が弾んでいるんですよね。

 それは、青年の中で踊り続ける情熱なのかな、って思いました。

 束の間の休息の間も、青年の中の情熱は消える事は無いと。

 きっと、青年の中の情熱は、この先いついかなる事があろうとも、消える事なんて無いのだろうな。

 やっぱりこの青年は、ベートーベンなんじゃないかなって思います(´ω`*)

 すると、女神というのは誰なのでしょうかね?

 女神のように美しい、ベートーベンが恋したお相手、なのかな。

(まぁ、いずれもわたしの勝手な妄想なのですけど)


 さて。

 この第二楽章は、当たり前ですが、第三楽章へと続きます。

 実はこの二楽章の情景は、三楽章まで聴き終えてイメージをしてから、もう一度構築し直しました。

(真っ先に思い浮かんだ森の湖、という設定は変わりませんでしたけれども)

 青年と女神の関係は、第三楽章では変わります。

 どのように変わるのか。

 第三楽章までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m


 という訳で、続きまして第三楽章です。


 2024.10.27

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