ベートーベン ピアノソナタ第8番ハ短調作品13「大ソナタ悲愴」 第三楽章

 第3楽章:Rondo: Allegro


 **********


 降り注ぐ雨粒で視界が霞む

 地を跳ねる雫

 それは天から落ちた雫か

 それとも

 気まぐれ女神の涙か


 轟く雷鳴

 辺りを目映く照らす稲妻

 踊りましょうと女神が誘う


 雨が奏でる旋律

 美しく華やかなメロディ

 それは女神が見せた最後の舞


 私の心に光と温もりを残し

 女神の姿は遥か彼方へ

 追い掛けても手を伸ばしても

 もう届きはしない


 ひとり

 私はひとり

 孤独に打ちのめされる

 消えかかる情熱


 あなたの心を動かす情熱に

 全てを委ねなさい

 そして全ての試練を乗り越えた暁には


 私の呼びかけに呼応する

 女神の言葉が

 私の中の情熱を呼び覚ます


 私は誓ったのだ

 私自身に

 私の中の情熱に


 神の与えたもうたこの試練を

 必ず乗り越えてみせると

 そして試練を乗り越えた暁には


 心の中に焼き付いて離れない

 気まぐれな女神の煌びやかな舞

 艶やかな声

 悲し気な微笑み


 試練の先に待つ彼女の元へ

 私は再び立ち向かう

 負けはしない

 打ち勝って見せる


 必ず

 必ずだ


 **********


 はい。

「悲愴」第三楽章、最終章でございます。

 第一楽章の悲壮感もありつつ、第二楽章の穏やかさも挟みつつ、アップテンポの激しくも華やかな感じの曲です。まさに、最終楽章にふさわしいのではないかと(←何目線⁉ /笑)


 こちらも、第一楽章から引き続きの青年と気まぐれ女神の登場です。


 イメージとしては、第二楽章でゆったりとした安息の時間を過ごしていた森の泉に、突然嵐が襲いかかってきた、という感じですね。

 女神が青年を甘やかしていることを、神がお怒りになったのか。

 それとも、神の嫉妬かも?


 冒頭からのスタッカートの弾む音からも、その後の連符からも、雨音を想像しました。

 フォルテの和音は、雷かなぁと。


 神の怒りに触れてしまったと気づいた女神は、青年がこれ以上神からひどい仕打ちを受けないようにと、泣く泣く青年の元を離れるのです。

 けれども、ずっと青年を見守っているし、試練に打ち勝てるように応援している。

 一方の青年は、女神が離れてしまって初めて、自分の中に芽生えていた女神への想いに気づく。

 時すでに遅し、ですけれども。


 再び孤独に苛まれながらも、女神の応援を得て、再び自分の中の情熱を呼び起こし、試練へと立ち向かう。

 試練に打ちかったその先に、必ず女神が待っていると信じて。


 何て言うんでしょうかね。

 第一楽章では、しゃにむにただ「試練」に打ち勝とうとやっきになっていた青年でしたが、そこに「女神への想い」が加わったことにより、より成長したというか、より力強く艶やかな感じになった……言ってみれば「揺るがない強さ」と「色気」が加わった、ような気がします。

 曲の感じも、第一楽章より第三楽章の方が、強く色っぽい感じがしますし。

 ただの「悲壮感」ではないような?


 そうやって考えてもう一度第一楽章から通しで聞くとまた、面白いのですよねぇ♪


 楽章単体でただ聴き流すだけでもいい曲だなって思いますし、その曲に物語を付けて楽章単体で聴いても面白いですし。

 物語を付けたうえで通しで聴くとさらに面白いという。


 機会がありましたら、皆さまも色々な楽しみ方をしてみてくださいね(#^.^#)

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