月光 第一楽章

暗闇に広がる 静かな湖面

湖底から響く 低い鐘の音に

緩やかな波紋が 湖面を伝わる

静かに響き続ける三連符は

まるで

心の奥底に刻まれた記憶を

呼び覚ますかのように


澄み渡る柔らかなG#は

冬の夜空に在る月のようで

G#からA AからG# F#からB そしてEへと

緩やかに音色を響かせて

目覚めたばかりの記憶を

優しく照らし出す


穏やかな微笑みに包まれた

在りし日の幸せなひととき

取るに足らない 諍いも確かにあった

だがなぜ

ああも安易に手放してしまったのか


呼び掛ければ今でも

あなたの声が聞こえる気が

湖底の底から あなたの声が

それは私の声と重なり

今でもこの胸に

心地よいハーモニーを響かせる


悔やんでも悔やんでも

決して戻ることのない

月の光に照らされて

あなたと過ごした かけがえのない時間

今も変わらぬ 淡い月灯りに

照らされているのは

わたし ひとり


遠い場所から あなたを想う

あなたは今 幸せでしょうか

わたしと共に過ごした時は

あなたの中に

何かを残せたのでしょうか


ああ直に 今宵の月も沈みゆく

あなたとの幸せな記憶は

静かに響き続ける三連符に導かれて

再び 心の奥底へ

月の光も届かぬほどの

深い深い 湖の底へ


おやすみ あなた

さようなら あなた

わたしの愛した 愛しい人




*****************


ピアノ・ソナタ第14番 Op.27-2 嬰ハ短


というのが、正式名称(?)のようです。

こちらも有名な、ベートーヴェンの「月光」。

第一楽章は、特に有名ですよね。

第三楽章まであるのですが、実は全然、違うのです。

曲のイメージも、難しさも。

ちなみに私は、この「月光」の中では、第三楽章が一番好きです。

単調な曲より、激しい曲の方が好きなもので(^^;)

・・・・好き故に、表現は一番苦戦してます・・・・


この「月光」は、実はショパンの「幻想即興曲」に似ている、とも言われています。

違うな。

ショパンの方が後だから、「幻想即興曲」が、「月光」に似ているのか。

言われても、今まで全然ピンときていなかったのですが、文字に起こして初めて、私も気づきました。

おー。

G#に三連符!

なるほど、と。

でも、やっぱり違いますし、どちらも素晴らしい曲です。

感覚的には、「幻想即興曲」の方が若者な感じ。

「月光」は、成熟した大人な感じ。

かなぁ?個人的な感想ですけど。


この第一楽章は、ひたすら静かな感じです。

マイナー調ではありますが、そこまで暗くはなく、心が落ち着くような曲です。

これを書くにあたって、久し振りに譜面と対面しましたが、響き続ける低音が、この曲全体を支えている気がしました。


次は、続けて 第二楽章 です。

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