第426話 いつも通りのイルク村

・登場キャラざっくり紹介


・ディアス

 主人公、人間族、メインになるのは久しぶり


・サーヒィ

 鷹人族のサーヒィ、鷹にそっくり、妻にリーエス、ビーアンネ、ヘイレセ


・カーリッツ

 犬人族:シェップ氏族の若者、小型種の犬人族はそこまで賢くないはずだが、エイマの教育のおかげかとても賢い


・エイマ

 大耳跳び鼠人族の女性、イルク村……というかディアスの知恵袋


・アルハル

 猫耳と尻尾のあるニャーヂェン族の女性、帝国人で遭難者


・ジョーとロルカと領兵達

 ディアスの元戦友で人間族、今はメーアバダル領の正規兵、遠征で頑張った


・ゾルグ他、鬼人族

 鬼人族の村所属であり領民ではない、傭兵に近い立場


・ゴブリン族

 領民ではなく客人、または取引相手、サメそっくりの姿




――――





 うっすらと雪が積もり始めた広場で積み上がった荷物の片付けをしていると、聞くだけで彼らのものと分かる力強い翼の音が聞こえてくる。


 また報告書がやってきたかな? と、見上げるとサーヒィだけでなく手伝ってくれていた他の鷹人族も一緒にこちらにやってきていて……どうやら報告書を運んできた訳ではなく、イルク村に帰ってきてくれたようだ。


 サーヒィ達が帰ってきたということは、エイマ達も荒野に到着しているはずで……今朝方迎えにいかせたカーリッツの運搬隊と今頃合流しているのかもしれないなぁ。


 なんてことを考えていると、サーヒィ達が広場の……私達のユルトの側に立ててある止まり木へと次々に降り立って……何故だか目を丸くしながらクチバシをパクパクとさせる。


「おかえり、サーヒィ、他の皆。

 獣人国での仕事、よく頑張ってくれた……エイマ達はこちらに向かっているのか?」


 そんなサーヒィ達に近寄りながら話しかけると、サーヒィが代表する形で言葉を返してくる。


「あ、ああ……カーリッツと合流して積荷を荷車に乗せて、そろそろこっちに向かってるんじゃねぇかな。

 ……カーリッツとエイマの師弟の感動的再会とか色々あったんだが……なんか、こっちの方が色々あったっぽいな?」


「うん? まぁ、今回は特に苦労もしなかったからなぁ……怪我人もいないし平和なもんだよ。

 それよりも報告書によるとかなりの量の物資があるみたいだが、用意した輸送隊でどうにか出来そうだったか?」


「あー……どうだろうな、いけるとは思うが……まぁ、無理でもゴブリン達がなんとかしてくれると思うぞ?

 あのトカゲが作った川……まんまトカゲ川と呼ぶことにしたんだっけか? アレが結構な幅と深さになってるとかで、あそこにイカダやらを浮かべさせての運搬が楽に出来るらしいからな。

 荷車で運べない分があればトカゲ川の水源辺りまでは運んでくれるんだろうし、そこまで来ていればあとはなんとでもなるだろ?」


「あー……あの水源の辺りまで来てくれるなら、なんとでもなりそうだな。

 あそこもトカゲ池と呼ぶことになったそうだ……山からの小川が草原を通って荒野に向かってトカゲ池に合流して海に、という訳だな。

 それと以前ザリガニが暴れた時に出来た流れも荒野に向かっていて……そちらの整備というか治水も洞人族が進めてくれているらしい。

 そうすると……新しい川の名前はザリガニ川になるのかな」


「ザリ……? あ、あぁ、アクアドラゴンか。

 あっちの川も荒野に流れ込めば……あの荒野もちょっとは生き物がいて植物が生える土地になってくれるんだろうなぁ。

 ……ま、荷物の多さとかの関係でエイマ達がトカゲ池辺りまで来るのは明日か明後日だろうから、細かいことはそれからだな。

 ……オレはなんかどっと疲れたから久しぶりの我が家でゆっくり休ませてもらうよ」


 と、そう言ってサーヒィはバサリと翼を振るって小屋に向かい……鷹人族達も軽く一礼してからそれに続く。


 無理をさせたというか、頑張ってもらったというか……何度も何度も繰り返した獣人国との往復で流石のサーヒィも疲れがたまっているらしい。


 夕食は体力がつくものにしてもらって……一足早くサーヒィ達を労う慰労会をしても良いかもしれないな。


 よし……その辺りのことをアルナーと相談して、ついでにセナイ達にエイマ達が帰ってくることを報せておくか。



 

 そうしてその日の夜はサーヒィ達を労うことになり……翌日も荷物を片付けていると、エイマ達よりも先に別働隊のセキ達やゴルディア達が帰ってきた。


 怪我人などが出ることもなく……ペイジン商会に大体の物資を託したので忙しいこともなく、早めに帰って来ることが出来たんだそうだ。


 そうなるとわざわざ別働隊を出すこともなかったかな? なんてことを思ってしまうが……色々と混乱しているというか、慌ただしくなっている獣人国でたっぷり情報収集が出来たりしたのと、なし崩し的にメーアバダル領からの人間族の行商の行き来を認めてもらったりと、かなりの成果があったようだ。


 今までは獣人国出身のセキ達が特別に行商を許されていたが、それだけでなくゴルディア達も行商出来る……というか入国出来ることになったとかで、向こうの領主から割符という許可証ももらってきたらしい。


 よく他国の人間にそんなものくれたなと思うが……キコのことや獣人国の人を助けたこと、大量の食料……塩魚を格安で譲ったことも効いて割符がもらえたんだそうだ。


 そんな報告を受けた後は昨日に引き続いての慰労会が行われることになり……そして翌日。


 カーリッツ率いる運搬隊とエイマ達とゴブリン達がイルク村に到着し……向こうで保護したという女性、アルハルの頭の上に乗ったエイマが代表して声をかけてくる。


「……えっと、ボク達結構頑張ったと思うんですよ。

 当初の目的はしっかり果たせたようで、今のところ内乱は起きていないみたいですし、食料は出来るだけあちらの方々にばらまいてきましたし、これだけの武具持ち帰ってきましたし……。

 わーい、結構な大手柄立てたぞーって意気揚々と帰ってきたら……えっと、なんですか、これ。

 ホント何なんですかコレ、何があったんですか? ディアスさん簡単に説明をお願いします」


 ただいまとか、報告とかでなく、半目でもってそんなことを言ってきたエイマに、私は頭を掻きながら後ろに振り返り……村のあちこちに積み上がる荷物、ドラゴンの素材へと視線をやってから、エイマ達に視線を戻し口を開く。


「いや、その、少し前にフレイムドラゴンが3体やってきてな……ちょっとした騒ぎになったんだよ。

 山にあるらしい鷹人族の巣も大騒ぎだし、狼まで草原に逃げてきて……鬼人族の村も大騒ぎで。

 それでなんとかしようと思ったら……思っていたより簡単に終わったって言ったら良いのか、洞人族が用意していたバリスタでなんとかなってな。

 1体はバリスタで腹を貫いて倒せて、もう1体は翼を貫いて落とせて……その1体を私が倒したらもう1体が怒り狂って襲ってきて、それも流れで倒した感じかな。

 いやぁ……まさか3体も来るとは驚かされたよ、炎が厄介だったが鎧の力のおかげで今回は火傷も無しだ。

 3体も来てくれたおかげで解体やら素材の整理やらで忙しくてなぁ……まぁでも、大体のところは終わっているから、エイマ達はゆっくり休んでくれて構わないぞ。

 エイマ達を労うための食事を用意したし、いくらかの酒もあるみたいだし……宴会もやることになっているから、しばらくは仕事も休んでただ楽しんでくれ。

 それと……アルハル、君のためのユルトも用意してあるからゆっくりとしていくと良い、帝国に返してやれるかは分からないが、出来るだけのことはするし、なんらかの目処がつくまではここに居てくれて構わないからな」


 そんな私の言葉を受けて……エイマは「もー!!」と声を上げてアルハルの頭の上でうずくまり、すねたような様子を見せる。


「ほーら、やっぱりこうなった!」

「なっちゃったかー、なっちゃったなー……」


 ジョーとロルカと……他の領兵達も似たような声を上げ、全員似たような表情でやれやれと首を左右に振る。


「……ま、村が無事なら文句ねぇよ」


 と、ゾルグ。ゾルグもなんだか納得いっていないというような表情だ。


「薄々な……薄々分かってたよ、ちょこちょこディアスって聞こえてきてたしな……。

 でもな、ただの同名なんだろうと思ってたよ……王国ではよくある名前なのかなって。

 ……本人じゃん! ディアスじゃん! メチャクチャなやつじゃん!

 今も変わらずメチャクチャしてんじゃん!! バリスタ数基あったところでフレイムドラゴン3体が倒せてたまるかぁ!!」


 そしてアルハル。


 ……自己紹介が来るかなと思ったら、まさかの絶叫で、目を丸くするやら何と返したら良いのか困るやらで何も言えなくなってしまう。


「いやぁ、サプライズ大成功ですねぇ。

 エイマ先生なら驚いてくれると思って黙ってたんですけど……ここまで驚いてもらえるとは嬉しい限りです」


 そんな中、カーリッツはなんとも良い笑顔でそんなことを言っていて……それを聞きつけたエイマが起き上がってカーリッツに飛びかかる中、ジョー達の奥さんが駆けてきて、犬人族の家族が駆けてきて……そうして家族の再会やら何やらで場は一気に盛り上がり、そのままの流れで慰労会が始まった。


 その慰労会ではなんとも珍しいことにエイマが結構な酒を飲むことになり……すっかりと仲良くなったらしいアルハルと一緒に、なんとも元気に騒ぎ続けるのだった。




・第十四章リザルト



領民【237人】 → 【248人】

 鬼人族の女性11人がジョー達と夫婦となり、正式に領民に


家畜【ヤギ】5頭を手に入れた

 合計9頭


家畜【白ギー】4頭を手に入れた

 合計11頭

 

家畜【ガチョウ】30羽を手に入れた

 合計80羽以上(日々数が増えている)


家畜【馬:ハルジャ種】25頭を手に入れた

 馬の合計44頭、うちハルジャ種11頭は鬼人族夫婦の所有物だがイルク村在住のためカウント


 【ロバ】2頭 【ラクダ】3頭は変動なし 

 これら以外にもマーハティ領にて預かってもらっている家畜が数頭いるが、イルク村在住ではないのでカウントせず



施設【鉱山】が正式稼働、防衛設備も運用開始


施設【学び舎】が本格稼働、賢い領民が増えている。


隣国【獣人国】にて大量の武具と商船を手に入れた


モンスター【フレイムドラゴン】3体を倒し、その素材を手に入れた。


客人【ニャーヂェン族】のアルハルが滞在している。

客人【ゴブリン族】が何人か滞在している。



ニンジン他農作物が収穫された、海から塩魚がどんどん届いている、森での収穫もあり冬備えは完璧だ。


いよいよ村が雪に閉ざされ……静かな? 冬が始まる。




――――



お読みいただきありがとうございました。


次回から新章の予定……です、見逃しとかなければ


リザルトに関しても見逃しなどあればご指摘ください

情報が増えて把握が大変……!



そしてお知らせです。


3月15日発売、小説版第11巻の表紙公開です!



今回も近況ノートをチェックしてくださいな!


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