【  喫茶店セイラム  】 章紋のトバサ【ACT1】10728字凝縮版

オロボ46

【始まりの惨劇の夢】




 車の中にいたはずのワタシは、森の中にいた。




 ワタシはそこで、傍観者のようにひとりの女の子を見つめている。


 その女の子の顔は黒塗りされていて、よく見えなかった。


 ただ、手に持っているものに夢中なのか、ワタシが見えないのか、


 こちらに見向きもしない。




「10年前……あの子は森の中でキャンプに参加していたの」


 ……? どこからか声が聞こえてきた。


「同じようにキャンプをしにきた4人のお友達と仲良くなって――」


 この声は……お母……さま……?


「――みんなでどこかに、消えてしまったの」


 どうしてこんなところに……? どこにいるの……?


 ぐるりと辺りを見渡しても、女の子以外は誰もいなかった。




「あの子は、右手だけになって見つかった。他の友達は左腕、左足、右足、胴体を残して……見知らぬ女の子の首とともに」




 目の前の女の子は、ゆっくりと手に持っているものを掲げた。


 その両手には、首が乗っていた。


 目玉をえぐり取られた、白髪の少女の首。


 そのこめかみには、青色に光る紋章が埋め込まれていた。




 女の子の周りにいつの間にかあったのは、死体のパーツ。


 枝のように細い右腕。


 筋肉質な左腕。


 少しだけ胸の膨らみのある色黒の胴体。


 子供のものと思われる小さな右足。


 大人びた長い左足。


 どれも腐っている様子はなく、それぞれ青色の紋章が埋め込まれていた。




「見つけてくれたのは、首の子よりも小さい女の子。無邪気に死体に話しかけていたわ。人形に話しかけるみたいにね」










 女の子が、口を開けた。


 親しい友達を見たかのような、笑顔をワタシの後ろに向ける。




















 後ろを振り返ると、羊の頭をした大男がワタシを見ていた。
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る