第11話 醜い笑み
デートのお礼と言われても。
俺は考えながら、はー、の姿を見る。
はー、は俺を見てから笑みを浮かべる。
何というか赤面してしまう。
思いながら目の前を見ると.....苦笑いの蝶が。
「ラブラブを見せつけてくれないでくれる?お兄ちゃん」
「お兄ちゃんは悩んでいるのです。.....こうなってしまったからには仕方がないだろ」
「そうだけど。でも何だか腹立つ」
「おう。言ってくれるじゃないか」
俺は言いながら蝶を見る。
蝶は溜息混じりにまた苦笑い。
それから、私。洗濯物を入れてくる、と立ち上がる。
そして俺達の元から去った。
俺はその姿を見ながら、ハーッ、と息を吐く。
何か持って来た、はー、は聞いてくる。
「蝶ちゃん何か言ってた?」
「.....夫婦みたいだそうだ」
「ふ!?」
「だってそうだろ?」
「そ、そんなことは無いかな!?」
「.....いや。そんな事はあるけどな」
絶対にそんな事はある。
思いながら俺は苦笑しながら目を回しながらの、はー、を見る。
ま、まあ良いけど!、と、はー、は切り出した。
そして、ごぼうの佃煮置いておくから!、と言ってから去って行く。
いや。酒屋か此処は?
「.....しかし美味そうだな」
酒屋はともかくとしてごぼうの佃煮が美味そうだ。
俺は呟きながらそのまま箸を使ってたべ.....何じゃこの美味さ。
愕然としながら、はー。お前腕が上がりすぎだろ、と告げる。
はー、はニヤッとした。
それから、美味いでしょ、と自信満々に胸を張る。
「.....美味いとかの次元じゃないぞ」
「カラットさんに教わったの。こういうのも」
「そうなのか。繊細だな」
「そうだね。あの人、ああ見えて乙女だから」
「お、おう。心も繊細だな」
俺は汗をかく。
すると、はー、は、披露したかったからね、と笑顔になる。
その可愛らしい笑みに赤くなってしまう。
そして、お前な。そういうのはあまり出すなよ?、と告げる。
はー、は、?、を浮かべた。
「.....いや。可愛いだよお前」
「まあそ.....え?」
「俺だけにしてくれ。そういう笑みは」
「.....」
真っ赤になりながらジト目になる、はー。
何だ一体、と思っていると。
胸を隠す仕草をした。
それから、何を企んでいるの、と聞いてくる.....は?
「.....いや。何も考えてない」
「さっきから恥ずかしい事ばっかり言ってくるから」
「こ、これは.....」
「もう!無意識にも程があるからね!」
「ま、まあな。うん」
俺は真っ赤になる。
それから慌てる。
すると、はいはい。お2人さん、とヌッと姿を見せた蝶。
吹いちゃうよ、と蝶は、はー、に告げた。
はー、は大慌てになる。
「きゃー!!!!!お味噌汁が!!!!!」
「もー。あまりにもイチャイチャするからだよぉ.....」
「味噌汁は確か吹くと味が落ちるんじゃなかったか」
「まあそうだね。だからこそ吹かないまま美味しくお兄ちゃんに食べてほしいよね?はーさん」
「.....も、もう。からかわないの。蝶ちゃん」
「.....」
微笑ましい光景だ。
思いながら外を見ると.....そこに黒づくめの何かが見えた気がした。
またかよ、と思いながら目線を鋭くする。
しつこいな、と思える。
「.....はー。それから蝶。外に不審者が居るから気を付けて」
「.....あ。例の人?」
「そうだな。しつこい」
「.....」
はー、を見ると。
何というか複雑な顔をしていた。
それから、しつこくてゴメンね、と言ってくる。
俺達は顔を見合わせた。
そして、気にする事は無いけど。.....でも大丈夫か、と聞いてくる。
「大丈夫だよ。しつこ.....」
そこまで言った所でインターフォンが鳴った。
俺は、?、を浮かべて外を見ると。
頭をオールバックにした紫色のスーツを着た中年の男が.....。
何だコイツ、と思いながら見ていると。
青ざめた顔をした、はー。
「.....紫谷さん.....」
「.....紫谷?」
「.....私との婚約予定の人」
「.....!」
「お兄ちゃん.....」
このいけすかない中年の野郎が?
俺は思いながらインターフォンを見る。
すると、すいません、と声がした。
それから、この薄汚い場所に私の姫が紛れ込んだみたいですが、と言ってくる。
あ?コイツ何言ってんの?
「乗っちゃダメだよお兄ちゃん。安い挑発だよ」
「.....」
「ゴメン。お料理.....途中だけど帰るね.....」
「.....駄目だ。はー。帰らせない」
「え.....!?」
俺はぶちっと何か切れた。
そしてインターフォンを開封する。
それから、何の用事ですか、と聞くと。
おやおや?、と声がした。
そうしてから、貴方はもしかして皆穂さんですか?、と醜い笑みを浮かべる。
『私は紫谷雫(したにしずく)です。以後お見知り置きを』
「.....誰か知らないけど帰ってくれますか」
『帰る?何故ですか?それなら私の姫を返してくれますかね?』
「.....」
何か腹が立ってきた。
はー、は首を思いっきり横に振る。
俺はその様子を見ながら落ち着かせてから。
睨みながらそのままインターフォン越しに告げる。
貴方に渡すものは何も無い。帰ってくれ、と。
それからインターフォンを閉じる。
忌々しい、と思う.....。
幼馴染から振られてから何故か翌日になって偽装の恋人になって欲しいと申し込まれました.....は? アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou
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