第5話 後輩の祈り

まさかの展開というか。

長妻とお祭りデートする事になった。

俺は何というか当日の為に準備をやってみる。

しかし何というか夏の7月もそこそことなるとそこそこ動いただけで本当にあっついもんだな。


「うーん。お兄ちゃんの浴衣ってどこに直したっけ?」


「いや。良いよ。そんなの。浴衣じゃなくて普通の服でも良いだろ」


「だーめ。.....お兄ちゃんは手を抜き過ぎ」


「いや別にデートじゃないんだから」


「デートとか関係ない。.....浴衣でしょ。花火といえば」


「.....まあそうだけど.....」


これは実に面倒臭いな。

思いながら俺は溜息を吐いてしまう。

正直、蝶に全てを話したのが間違いだったな。

何というか調子に乗って話してしまった。

そしたら今の状態だしな。


「.....あ。あった。お兄ちゃんの浴衣」


「ああ。あったか?」


「そうだね。.....確かこの箪笥じゃないかなって思ったから。.....良かった」


「すまないな。いつもいつも」


「気にしないで。.....こういうのを探すのは得意だから」


1年前の浴衣である。

あの頃から成長してないだろうか?、と疑問に思ったが。

まあそんな事よりこういう物が大切に保存されているのにビックリだ。


俺は何も知らないな。

よく蝶の手伝いはしているが.....それでも知らない事だらけ。

何というか少しだけ情けなくなってくる。

そう思いながら俺は蝶の姿を見た。


「.....お兄ちゃん」


「.....何だ」


「長妻さんを必ず喜ばせてあげて。.....多分みんなそう願ってるよ」


「.....そうだな.....。はー、もきっとそう願っているよな?」


「.....うん。きっとね」


何というかあまり想像したくないけど。

俺はあくまで、はー、が好きなんだ。

だからこそ.....今でも長妻の事は、後輩、としか見れない。


でも今回の事と、はー、の事を組み合わせたら駄目だ。

長妻は必死に俺に向いてきたのだから。

その想いに応えなくてはな。


「取り敢えず浴衣は干しておく。.....だからお兄ちゃん。準備をしっかりね」


「.....有難うな。蝶。いつも感謝してる」


「.....私が出来る事はこれぐらい。.....後は全てお兄ちゃんの手に掛かっているから。運命も全部ね」


「.....そうだ.....な」


「だからこそお兄ちゃん。必死に頑張らないとね」


「.....ああ。分かった」


そして俺は持っていく物を確認してから準備を整える。

祭りまで期間はあるが.....取り敢えず今準備出来る物は準備しておこう。

思いながら俺はカバンに詰める。

女の子の必死の思い、か。

そう考えながら。



翌朝になった.....様だが?

俺は時計を見ながら横を見る。

そこに.....長妻が居た.....な、が、つま!!!?!

俺を見ながらニヤニヤしている。

よくお眠りで、と言いながら。


「.....何をしてんだこのアホ!」


「何って見れば分かりますよね。起こしに来ましたよ」


「モーニングサービスってか!?ドアホ!心臓が止まるかと思ったわ!」


「.....え?それはそんだけドキドキしたって事ですか?」


「.....別の意味でドキドキしたけどな」


俺は額に手を添えながら盛大に溜息を吐く。

それから、良い加減にしろ、と起き上がってみる。

そして、はた、と思う。


お前勉強しているか?、と言いながら。

すると、カー!カー!!!!!嫌な事を思い出させますね!、と吐き捨てた。

唾でも出そうな感じで。

何だコイツ.....。


「お前な。祭りにうかうかしてて勉強おろそかでは意味無いぞ。夏講習が待つぞ」


「勉強してますって。失礼ですね」


「.....本当か?お前の事だしな」


「舐めないで下さい。パイセン。抜群ですよ」


「.....抜群か.....なら良いが。お前の楽しみの祭も何もかもが中止になるぞ」


「ですね.....」


俺を見てから肩を落としてから落ち込む長妻。

そんな姿を見ながら俺は苦笑いを浮かべつつ、でもお前が頑張っているなら良かったよ、と言いながら笑みに変える。

すると長妻は、先輩.....、という感じになる。


「.....と、取り敢えずは下に降りろ。.....学校に遅れちまうから」


「.....そうですね。.....先輩」


恥じらいながら長妻はドアノブに手を伸ばす。

それから長妻は俺を見てくる。

先輩に出会って良かったです、と言いながら笑顔になった。


そして、では!、と敬礼して去って行く。

しかしさっきのセリフ。

何だよいきなり.....、と思ってしまった。


「ったく。恥ずかしい事ばかり言いやがって。クソッタレめ」


何だか知らないが.....本当に頭がクラクラする。

これが何なのかは分からないが.....まあその。

あの阿呆め、と思ってしまった。

それから俺は頬を掻きながら鏡を見る。

赤面している.....。

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