第3話 親友の自殺があった皆穂と長妻の想い

長妻蜜柑(ながつまみかん)。

俺が彼女と出会ったのは1年前.....橋の上。

当時16歳の俺だった。

そこで.....中学生だった彼女は川に飛び込もうとしていた.....のだ。


それで俺は勢い良く抱きつき救った。

そうしてからこんな事を言われる。

何で私を救ったの、と。


俺は見開きながら話そうとしたが。

通行人が警察を呼んでくれたので.....まあ良いかと立ち去ったのだ。

面倒事はゴメンかな、と思いつつ。


「むう。先輩は酷いです。私の様な自殺未遂者を置いて.....行っちゃうんですから。あの後.....色々とモヤモヤ考えて大変だったんですよ」


「.....」


「ねえ。先輩。何故.....こんな私を救ったのですか」


俺はその質問に考える。

そうだな.....。

あの時は何も考えてなかった。


少なくとも、だ。

何故なら必死だったから。

だけどこうして長妻が真剣に聞いてくるなら答えるしかあるまい。

本音の全てを。

蝶が横を悲しげに見る。


「.....長妻。.....俺な。親友が3年前に死んだんだよ。自殺で」


「.....え.....」


「それも丁度.....あの橋の辺りだった。.....夜中に川に飛び込んで溺死だった」


「その親友さんは.....何か悩んでいたんですか?」


「.....受験の悩みかな。それで悩んで自殺したんだ。悩みが多かったみたいなんだけどな。.....今思っても涙は出るよ。.....軽く話しているけどね」


だから同じ事を繰り返したく無かった。

君に人生を違った視点で歩いて欲しかったんだ。

と笑みを浮かべて.....長妻を見る。


長妻はボウッと赤面する。

じゃ。じゃあ何で.....あの時去ったんですか?もしもう一度.....飛び込んでいたら、とも聞いてきた。


「俺なんか居ても仕方がないかなって思ったから。それに.....今回は人も居たしな」


「.....そんな理由で.....でも.....死んでいたら?もし.....」


「そんな事を言っても君は生きているじゃないか。.....反省はするけど生きているから良しにしないか?」


「まあそうですけど.....」


でも先輩が私の事を思ってくれているんだって分かりました、と長妻は笑みを浮かべてから俺を見る。

そして俺の手を握ってきた。

俺は赤くなりながらその小さな手を見る。


「私、やっぱり先輩を追って来てよかったです。好きで先輩の居る高校に入学して.....追ってきての1年間の片思いでした。.....責任取って下さい♪」


「.....いや.....俺は.....」


「やっぱり幼馴染さんが好きなんですか」


「.....!.....何故それを!?」


「フラれてもまだ.....凪山先輩が好きなんですか」


「そ、それはその.....」


悲しげに俺の手を握ってくる長妻。

そして俺を見てくる。

先輩。私じゃ駄目ですか。先輩がフラれたの.....知っています。昨日フラれたんですよね。こんな私だったら.....先輩を大切に出来ます。心から愛せます。だから.....、と言ってくる長妻。


俺は困って蝶を見るが。

蝶は、さて仕事仕事、と去って行く。

あの野郎!

俺は困惑しながら長妻を見る。

長妻は潤んだ目で俺を見てくる。


その様子に俺は唇を噛む。

それから、すまない、と言う。

俺は、はー、が好きだ、と。

長妻は、そうですか、と言いながら俯く。


「.....長妻.....」


「.....ぷっ。アハハハハ!!!!!」


「え!!!?!」


「何を深刻な顔をしているんですか?先輩。私が傷付いたとでも!?」


「え?!.....そ、そうだが.....」


私は諦めませんよ。先輩の事。

絶対に振り向かせてみせますもん、と満面に笑顔を浮かべる。

それから花咲く様な感じを見せる。

しかし凪山先輩ですかー。敵はでかいなぁ、と言いながら顎に手を添える。


「深刻に悩んだのにお前という奴は.....」


「アハ。凄く嬉しいです。先輩が.....そんなに私を心配してくれたのが」


「全く.....」


「.....先輩」


「何だよ」


「私を救った責任取って下さいね♪」


その様子に.....俺はハッとする。

今から10年前の景色が.....蘇った。

保育園当時。

女の子から言われた事を思い出す。

離れ離れになった記憶。


『私の事、気に掛けてくれてありがとう』


その女の子は、はー、とかでは無い。

誰かと言えば.....名前も覚えてない。

引っ越してしまったから、だ。

でも年齢は俺に近かった気がする。

はー、も一部しか覚えてないみたいだが。


「.....先輩?どうしたんですか?」


「!.....ああ。すまん。何でも無い」


「ふーん?.....あ。先輩。ゲームしませんか?恋人ゲーム」


「するか!普通のゲームならするけどしない!」


もー。恥ずかしがり屋なんですから、と揶揄う長妻。

全く、と思いながら考える。

今.....何故その女の子の事が過ぎったのか分からないが。


取り敢えず.....長妻とは何ら関係が無いだろうな。

偶然だろう。

思いながら俺はゲーム機を取り出してから長妻に渡す。

これするか、と言いながら。


「あ。マ◯オカートですね。楽しそう」


「ああ。負けないけどな。俺は」


「言いましたね?先輩は負ける定めなんです」


「意味が分からん.....」


俺は額に手を添える。

それから俺達はそのままゲームで遊ぶ。

途中で蝶も参加して、だ。

そして時間はあっという間に過ぎ。

夕暮れになってしまった。

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