第2話 蜜柑、家に来る

凪山春風という幼馴染。

俺が告白して玉砕した相手であるが。

その初恋が砕かれてしまった後に俺に対して幼馴染がこう言ってきた。

まさかの言葉だったが。


『偽物の恋人になって!』


と。

どういう事かというと簡単だ。

実は春風の家は富豪である。

というのも不動産を持っており.....それなりの家なのだが。

しかしその。

まさかお見合いとかいう話で俺が巻き添えになるとは思わなかった。

それから.....その。


そのタイミングで後輩に当たる女の子に告白されたのだが。

どういう事だよ、と思いながら俺は唖然とした。

因みに俺だが未だに幼馴染を諦めれてはない。

つまり恋心が後輩に向く可能性は低い。

筈なのだが。

後輩は言ってくる。


『貴方に救われた命ですから。貴方が好きです』


と、である。

俺は赤面しながら後輩を見る。

どういう事かというと。

実は俺は後輩を救ったのだ。


何から救ったか。

それは自殺からである。

だから後輩は俺が好きだと言う。

俺は名前も名乗らずに去ったのだが。

後輩は調べたらしい。


俺の居場所を。

多少話的には怖いが.....でも。

そこまで俺を好いているんだな、と。

そう思えた。

でもそうは言えど。


俺は後輩の告白を受ける訳にはいかない。

そもそも俺は幼馴染が好きだ。

しかしながら困った。

どうすれば良いのやら.....。


考えながら俺は顎に手を添えつつ。

後輩にはすまないがその告白は今は留保してくれ、と言い。

幼馴染と一緒に帰って来た。


それから家に入ると、どしたの。お兄ちゃん、と声がした。

顔を上げるとそこに八重歯が特徴的な美少女な感じの爽やか系の妹が居た。

名前を横長蝶(よこながちょう)、という。


所謂バスケ部だが。

どしたの、と言われてまあ.....うん。

悩んでいるとしか答えれないな。


併しながら我が妹よ。

ナイスタイミングで声を掛けたな。

思いながら目をウルウルさせて蝶を見る。

蝶は、今日は部活休みなんだ、と言っていたがビクッと顔を引き攣らせた。


「何、お兄ちゃん。キモい」


「我が妹よ。我はどうするべきかな」


「また?今度は何があったの。お兄ちゃん」


「うむ。告白された」


へー、告白。.....は!?、と唖然としながら俺を見てくる蝶。

それから、どういう事!?一から説明して!?、と向いてくる。

俺は言葉に一から説明した。


すると蝶は、なるほど、と納得する様に頷く。

俺は靴を置きながらカバンを置いて涙目で、どないしよ、と向いてみる。

取り敢えず今のお兄ちゃんキモい、と言われたがめげずに。


「はー。全く。お兄ちゃんは。なんでそんな事になるのかな」


「知らんがな。俺に聞くなよ。大体まさか追跡して来るとは思ってなかったからな」


そこまで言った時だった。

いきなりインターフォンが鳴った。

俺はビクッとしながら後ろを見てみる。

それからドアをゆっくり蝶と共に開けると。

そこにお茶菓子の紙袋を持って長妻が立って俺をニコッと見て居た。

マジかコイツは。


「な、長妻。どういう事だ.....?」


「付いて来ちゃいました。流石にお宅は知らなかったので迷惑かなって思いましたが。すいません」


「マジかよ.....」


俺は額に手を添えつつ長妻を見る。

すると蝶が、長妻さん、と向く。

それから警戒を若干しながらだが玄関を開けてから。

長妻を見る。


「私は横長蝶です。兄がお世話になっております。もし良かったらお話を聞かせてくれませんか?大体はポンコツ兄から聞かせてもらいましたが」


「妹さんですか?」


「はい。兄がお世話になってます。中3です」


蝶を見ながら目を輝かせる長妻。

俺は、?、を浮かべながら長妻を見る。

長妻は、良い妹さんですね。先輩、と笑顔で向いてくる。

そうだよなぁ。


「良い妹だろ?よく相談に乗ってもらってるけどな。頼りないんだよ俺」


「そんな事無いです。先輩が私を生かしたんですよ?全く」


「まあそうだがな」


まあまあ。

話は中でしましょう、と言ってくる蝶。

俺はその姿に、まあそうだな、と頷いてから。


それから一応だが長妻を家に入れる。

っていうかこれまさか計画的じゃあるまいな?

何だかあざとい部分も長妻には有るし。

考えながら俺はジト目で長妻を確認した。



「それで先輩。私の告白、受けてくれますか?」


「あのな。無理だって言ってるだろ!この場所で話すんじゃない!」


「良いじゃないですか。蝶さんもかなり分かってくれてますよ?」


「無理なものは無理だから。すまんけどお前の気持ちには応えれない!」


ラブコメじゃあるまいし何でこんな言い争いなんかするのやら。

思いながら俺はニヤニヤして触れてこようとする長妻に赤面する。

蝶は溜息を吐いていた。


「もー。ラブラブだねー」


「ラブラブとかじゃ無いけどな。俺はコイツの愛に応えれないから」


「えー。先輩のいぢわるー」


「何が、いぢわる、だよ。お前.....」


でもそういう感じの先輩も好きですけどね。

と言いながら俺を柔和に見てくる長妻。

俺はその笑顔を見ながら手で口元を触る。

恥ずかしい。

と思っていると突然、真剣な顔に長妻はなった。


「.....先輩。私、今日来た目的。何だか分かりますか」


「!.....いや」


「私を生かした理由が知りたいから、です。聞きそびれていましたから。今の今までずっと」


「そうか」


2人が見てくる中。

俺は天井を見上げる。

それから2人に向いた。

それはな、と口を開きながら、だ。

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