ロゼッタストーン

 これも世界史では超重要単語ですね。内容忘れましたが、古きエジプトの石碑です。なんかの記念の内容を新製文字(ヒエログリフ)、古代エジプト文字、ギリシャ語で同じ言葉が書かれています。

 三ヶ国語で書いている目的は、その記念すべき出来事を後世に語り継がせるために、どれか一つの言語でも残れば後世でも解読できる、と当世の人が考えたからです。


 そしてその目論見は当たり、前者二つは失われましたが、ギリシャ語は残ったためその内容は理解されました。それだけではなく、フランス人の偉大なるシャンポリオンの手によって、解読ができなかったヒエログリフが絵を示していても表意文字(つまり漢字のように文字が意味を示すもの)ではなく、英語のように発音記号を示す、表音文字であるということが明らかになって、ヒエログリフの解読が進むキッカケとなりました。その結果、現代では一度使用者が絶滅した言語であるヒエログリフは、容易に解読できるようになりました。


 このロゼッタストーンは、比喩としてもよく引き合いに出されます。現代では、デジタル化が進み、こうして僕がインターネット上で執筆活動をしていて、お金をかけずに自分の考えを世界中に届けることができます。そして、デジタルでの伝言ゲームは、はっきりした数値を、機械が送受信するために、伝達しても全く情報は劣化しません。LINEは違うようですが、ネット上にある写真をダウンロードしても、そのサイトで見たとおりの写真を自分の手元に、もっといえば、ロサンゼルスで撮影され、ネット上に投稿されたデータを、撮影した画像の100%を日本の福岡にいる僕がダウンロードできます。


 しかし一方で、アナログのデータは、伝達が全くできません。マチュピチュ遺跡にある石の壁は、石と石が上手く積み重ねられており、その石の間にはカミソリ一枚(定規一本)も入らない、と称えられていますが、これほどのテクノロジーも、時代を経て失われてしまいました。伝言ゲームは、伝言が終わってしまえばそこで途絶えてしまいます。また、アナログの録音といえばレコード盤か、カセットになるでしょうが、三回録音するだけで音は形を失う筈です。デジタルの場合はただシェアすればいいのに。


こんな特徴がありますが、それでもアナログの一つの象徴になっているがロゼッタストーンです。この石碑は、紀元前196年に作られたものです。それなのにしかし、1822年に再び解読されました。

これはデジタルでは起こり得るでしょうか? デジタルの強みは、サーバーが生きている限り、永遠にデータが等質に劣化せずに保管されることです。しかし、もし人間が絶滅したら? もしサーバーが全て破壊されたら? 復旧は極めて大変な作業になり、集められた人間の知恵はいとも簡単に永遠に失われてしまいます。 コンピュータが失われた後世の人々が再びコンピュータの中の宝の山を掘り出す、そんなことは到底できないでしょう。それどころか、水に漬ける、折る、などその宝の山をそれこそ夢幻に変えてしまう行動を取ることでしょう。まず電気には気付かないことでしょうし、過電圧もデータには良くありません。

デジタルには千年のスパンで考えるとそのような問題点があります。しかし、石碑にすれば、100℃ちょっとでは燃えません。また、例えば太宰府に隕石が降ろうと地震が起ころうと、京都にある石碑は全く被害を受けません(たぶん)。しかも、この地球には地震がまったく起こらず、また雨も全く降らない場所があるので劣化を遅くすることは可能です。あとは印字ですね。100年間で経年劣化し、字面が潰れているものも多くあります。そこをどうにかできれば、デジタルよりも遥かに長い期間データを保存することができます。まあ、字数が小説に比べても少ないという大きな難点がありますが、本も羊皮紙で作成し、適切に保存すれば千年以上保存できる、まあ、大量出版されてた場合のことですが。


本と、石碑の適切なバランス、そしてロゼッタストーンのように言語の翻訳を可能とする存在が揃えば、永遠の記憶を作ることももしかしたら可能になるかもしれません。

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