星
すがら
第1話
昨日夜ふかししたとか、テストがやばいとか、一週間後には忘れてしまっているような話。どうにかして思い出そうとはするけれど、どうしても思い出せなくて虚しくなる。一緒に出かけて遊ぶことも楽しかったけど、そんな他愛のない話をしている時間が一番長かったはずなのに。
突然に奪われてしまったその日常はいくら待っても帰ってこない。そんなこと頭では分かっているけれど、どうしても信じられなくて、今日も僕は君の帰りを待っている。
眠れなくて星空を眺めた夜。落ちていった星に思わずお願いをしたけれど、その願いが叶うことはなかった。
誰もいない家で、久しぶりにカーテンを開けると太陽の光が優しく降り注いでくる。そんな光は僕じゃなくてあいつを温めてほしい。
ふと目を開けると時刻は8時。ぼうっとした頭は一瞬ではっきりした。遅刻は確定だが、急いで準備をして駅に向かう。ホームへ行くと君はベンチで眠っていた。
ホームに君がいることが何故か懐かしく感じた。隣に座っても気がつく様子はない。こんなところで爆睡して大丈夫なのかと思い苦笑すると同時に、長いまつげをして目を閉じている君の、この世のものではないような美しさにどきりとする。
思わず見つめていると君は目を開けて笑った。
「今日はさぼろうか」
真面目な君が言うのは珍しいなと思いながら返事を返す。
話しているとあっという間に時間は過ぎて、気が付くと空が赤く染まり始めていた。
まだ一緒にいたいと思う僕の気持ちとは裏腹に君はもう帰ろうかという。
「私の分まで幸せになってね」
そういってギュッと抱きしめた。抱きしめ返すと君の体温が伝わる。そして静かに目を閉じた。
目を開けるとそこは家だった。外を見るとあの日と同じように星が輝いていた。静かに眺めていると、大きな星がきらりと光って落ちていった。
ガラス越しに映る僕の目からもいくつもの星が落ちていった。
星 すがら @hoshi__yomi
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