第3部 四人目の刻印者
第11章 狩りの街
第277話 狩りの街への旅立ち
【前書き】
第3部第11章『四人目の刻印者』スタートです!!
◇◆◇◆◇◆◇
――ボルテンダールの試練を終えた翌日。
俺たちは今日、『狩りの街』へ向かう。
当初はラーシェスの病を治す依頼でやって来たのだが、あまりにも色々なことがありすぎた。
この街にも愛着が湧いてきた頃だが、俺たちにはやるべき事がある。
そのひとつが『狩りの街』で待っているのだろう。
俺たちはまず、ウィラード伯爵を訪れた。
「レント君、娘を頼んだよ」
「お任せ下さい」
伯爵にとっては大切な一人娘で、溺愛していたので、引き留められるかと思った。
だが、伯爵は快く認めてくれた。
伯爵には、刻印のことはある程度伝えてある。
ご先祖様のこともあり、外の世界に出ることがラーシェスに必要だと理解を示してれた。
「父上、行ってまいります」
ラーシェスが父に抱きつく。
伯爵も強く抱き返し、二人はしばしの名残を味わう。
「ラーシェスよ、レント君の助けになるんだぞ」
身体を放した伯爵の目尻には涙が浮かんでいた――。
――その後。
冒険者ギルドに向かう。
朝早いせいで、ギルドは閑散としていた。
そんな中、エルティアとプレスティトさんに出発を告げる。
「では、行って来ます」
「私もついて行くぞ!」
別れの言葉を告げたら、ポンコツギルドマスターのエルティアが、さも当然とついてこようとした。
――スパァァァン。
お馴染みのハリセンが、エルティアの後頭部をヒットする。
「いたぁぁあ」
エルティアは頭を抱えて、うずくまる。
「さぁ、この隙に出立ください」
「プレスティトさんも、お世話になりました」
「こちらこそ、ありがとうございました。レントさんの【魔蔵庫貸与】のおかげで大繁盛です」
聞いたところ、ギルドの収入は以前に比べ、倍以上になったそうだ。
「エムピーさんも、ご息災で」
「ガンガン儲けます~」
二人に別れを告げ、街の入り口に向かう。
入り口前には、大勢の人が集まっていた。
一番目立つのは、冒険者たちだ。
皆、感謝と別れの言葉を大声で叫んでいる。
一般市民に、コットン先生とルーディ。
貧民街の人々も大勢いる。
「ギルドに人が少ないと思ったら、見送りしてくれるのか……」
この街の役に立てたんだ――と嬉しくなる。
リンカもいつの間にか人気者になっていて、彼女にかけられる声も多かった。
主に、男性の声だが、「お姉様~」と黄色い声も聞こえている。
キモノ姿に二刀を佩く彼女は凜々しく、女性からも評判だ。
そして、もちろん、ラーシェスも。
幼い頃から、彼女はこの街で愛されてきた
彼女との別れに涙ぐんでいる者も少なくない。
猫を被った彼女は、貴族令嬢らしい笑みを浮かべ、手を振っている。
街の入り口付近に一台の馬車が停まっている。
今回、旅の足は馬車だ。
一頭立ての四人乗り馬車を伯爵が用意してくれたのだ。
馬車の脇には、初老の男性が立っている。
「いつでも、出発できます」
今回、御者を務めてくれるのは、伯爵家のガッシュさんだ。
ラーシェスが幼少期から、お世話をしてくれた人らしく、彼女にとって、じいやのような存在だと。
「道中、よろしくお願いします」
俺とリンカは馬車に乗り込む。
ラーシェスは御者台に乗り、ガッシュの隣に座る。
俺と出会ってからのことを彼に話したくて、しょうがないそうだ。
「では、出発します」
ガッシュさんが手綱を操る。
――さあ、『狩りの街』に向けて出発だ!
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『困っている馬車に遭遇する』
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