第256話 ボルテンダール墳墓攻略四度目(2)

『討伐数:4821/5040』


 ――残り219体。


 初日は100体。

 二日目は200体。


 厳しい戦いを積み重ねた俺たちは一日ごとに急成長を遂げた。

 そして、ついに、昨日は一日かけて1000体。


 今日で、終わらせよう。


 第二試練の場へと転移する。

 もう慣れたもので、動揺することもなく、即座に戦闘体勢に移る。

 三人、背中合わせに構える。

 リンカが前方180度。

 後の90度ずつを俺とラーシェスで受け持つのだ。


 最初のうちは敵に囲まれないように、エルティアの土壁で三方向を守った。

 だが、今はそうしない。


 今後、敵に囲まれることもあるだろう。

 それを想定しての戦い方だ。


 今の俺たちはバッチリと噛み合っている。

 多数のゴーレムやガーゴイルに囲まれても、動ずることなく戦える。


 最初に動いたのはリンカだ――。


 幽冥二刀ヘル・アウェイツは納刀したまま。

 【壱之太刀】も使っていない。


 前回、スキルを多用したリンカは、内なる獣に呑み込まれそうになった。

 それを防ぐのがひとつ目の理由。


 もうひとつは――。


 駆け出したリンカはゴーレムが反応する前に懐に入り込む。

 そして、カタナではなく、手甲と脚甲を生かした連続攻撃を叩き込んでいく。

 カタナほど攻撃力がないので、数発で倒すことはできない。

 なので、リンカは倒しきろうはせず、攻撃を入れると、すぐに次の相手に向かう。


 対複数戦で一番大事なのは、敵に囲まれないこと。連携させないこと。

 リンカはゴーレムの間を縦横無尽に駆け回り、適切に攻撃をヒットさせ、敵につけいる隙を与えない。


 元々、リンカは体術に関しては素人だ。

 だから、誰かから学ぶことも考えたが、彼女が言うには――身体の動かし方は【阿修羅道】が教えてくれる――とのこと。


 実戦は最高の訓練だ。

 この一週間でリンカは見る見るうちに、洗練された動きを習得していった。


 そして――。


参之太刀さんのたちは先の先――かかるも退くも足はただ居つかぬやうに使ふなり。右手をば陽にあらはし、左手は陰にかへして、斬るにあり」


 目に見えぬほどの高速の斬撃を重ね、十数体のゴーレムを葬り去ると。

 次の瞬間には、新たな敵を求めて、駆け出す――。


 一方、ラーシェスの戦い方は――。


「右肩ニャ」


『――【魂魄斬裂ソウル・リーパー・ディセクション】』


 ゴーレムの右肩を血統斧レイン・イン・ブラッドが斬り落とす。

 ゴーレムの弱点であるコアは、個体によって場所が異なる。


 その場所をイータが伝え、ラーシェスが斬る。

 見事なコンビネーションだ。


 ラーシェスは速さも強さも、まだリンカには及ばない。

 受け持ち範囲もリンカの半分だ。

 それでも、自分の役割はキッチリとこなせるようになったのだ。


 俺も二人には負けてられない。


 俺はシャノンズロッドに魔力を溜め、限界まで敵を引きつける。

 そして――。


「無空波」


 無属性魔法レベル2のスキル――無空波。

 レベル1の無空弾が魔力のかたまりを飛ばす単体攻撃なのに対し、無空波は魔力の真空波を飛ばす範囲攻撃だ。


 その範囲に巻き込まれたゴーレムとガーゴイルはズタズタに裂かれ、絶命する。

 リンカやラーシェス同様、俺もこの一週間でこの魔法を使いこなせるようになった。


 今の一撃で倒したモンスターの数は20体以上。

 魔力消費は激しいが、圧倒的な強さを誇る攻撃だ。


 【魔蔵庫貸与】を始めてから一ヶ月近く経った。

 今では、この街だけでなく、かなり広範囲に普及している。

 そして、その分、利息収入もうなぎ登りで増えている。


 次に入手しようと思っているスキルのために、一定量は貯めてあるが、それでも戦闘中に魔力を気にしなくていいほどだ。

 なので、俺たち三人は気兼ねなくスキルを使い、敵を殲滅していく。


 やがて――。



『討伐数:5040/5040』


 目標の討伐数に到達した瞬間、ゴーレムたちがすべて消え去った。


「終わったか……」

「長かったですね」

「ボクはもっと戦いたかったな」


 これで第二の試練はクリアだ。

 次はどんな試練が待ち構えているのか。


「ラーシェスの血を引く者よ。よくぞ、第二の試練を突破した。残るは最後の試練。覚悟して臨むが良い」


 聞き慣れた声が終わると、部屋の中央が赤く光り、床に直径1メートルほどの魔法陣が現れた――。







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『最後の試練(1)』


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