第255話 ボルテンダール墳墓攻略四度目(1)

 ――ボルテンダール第二の試練に挑み初めてから一週間がたった。


 今日も試練に挑むために、俺たちはボルテンダール墳墓に向かう。

 俺たち四人が砂漠の前に立つと――。


「うわっぷ」


 今日は風が強い、砂埃が舞い、ピラミッドがかすんで見える。

 その砂がラーシェスの目に入り、彼女は涙ぐみながら、砂を払おうと必死だ。

 リンカも顔の前に手を当てて、砂が目に入らないようにしている。


「なんか、今日は特別だって、砂漠も言っているみたいだな」


 長かった第二の試練。

 それは倒しても倒しても、無限に湧いてくるゴーレムとガーゴイルを倒し続けること。

 やっと終わりが見えてきた。


『討伐数:4821/5040』


「今日で終わらせよう」

「そうですね!」

「うん!」


 俺たち三人が気持ちを通じ合わせると、後から四人目が声をかけてきた。


「なあ、今日もダメなのか?」

「だから、言っただろ」


 駄々をこねているのはギルドマスターのエルティアだ。

 真面目を装う伊達眼鏡はポンコツがバレているので意味を成していないが、砂を防ぐのには役立っているようだ。


「確かに、感謝している。エルティアがいなかったら、第二の試練に挑むのはもっと大変だった」

「そうだろ、そうだろ!」


 エルティアの精霊魔法は罠回避に大いに役立った。

 謎解きには、まったくの戦力外だったが。


「これは俺たちの試練だ。気持ちはありがたいが、遠慮してくれ」

「むぅ」


 これでこのやり取りも五回目だ。

 第二の試練の初日と二日目は彼女にも同行してもらったが、三日目以降は俺たち三人だけで挑んでいる。


 これは俺たちに課された試練だ。

 ただ、クリアするだけが目的だったら、エルティアに協力してもらって、もっと早く終わっただろう。


 だが、これは試練。

 俺たちが強くなるための、格好の機会だ。


 大量の敵に、終わりのない戦い。

 ゴブリンの巣穴のように大量のモンスター相手の戦いが出来る場所はいくつかある。

 だが、この試練ほど強く、絶え間ない戦闘を強いられる場所は聞いたことがない。


 これはラーシェスのご先祖様でSSSギフトの持ち主であるボルテンダールが、次代のSSSギフトの持ち主に課した試練。

 彼なりの愛情なんだろうと思う。


 そして、間違いなく、俺たちは強くなった。

 たった一週間だが、その密度は濃すぎた。

 普通の冒険者の一年分、下手したら、数年分の経験を積めたのだ。


 強くなり、自信がついた。

 とくに、ラーシェスはもう、いっぱしの冒険者だ。


 というわけで、断られても、毎日毎日ついて来るエルティアには申し訳ないが、今日も三人だけで挑むのだ。


「エルティアは自分の仕事をしような。プレスティトさんが怒ってたよ」

「むっ、むぅ。仕方がないか……」


 俺の言葉にエルティアはしょげ返る。

 ここ数日の彼女は――。

 俺たちについてここまでやって来て。

 俺に断られて。

 憂さ晴らしにゴーレムに八つ当たりして。


 溜まりに溜まった書類仕事をほったらかしてるので、帰るたびに叱られている。

 ちなみに、例のハリセンはプレスティトさんに返してある。


 街に帰ってハリセンにしばかれながら、嫌々仕事をするのだが、彼女の頭では次の日になると、すっかり忘れてしまい、こうやって俺たちについてくるのだ。

 プレスティトさんの苦労がしのばれる。


「よし、行こう」


 ラーシェスがフラニスさんから貰った指輪をかざすと――。


 ――次の瞬間、第一の試練を終えた場所に転移する。


 俺の武器はシャノンズロッド。

 ラーシェスはユニークウェポンの血統斧レイン・イン・ブラッド

 そして、リンカはといえば、ユニークウェポンの幽冥二刀ヘル・アウェイツを腰に差している。


 三人とも、戦闘準備はバッチリ。

 俺たちは見合わせて、第二の試練の舞台へと転移する――。







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『ボルテンダール墳墓攻略四度目(2)』


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