第254話 救済方法

【前書き】


 説明会です。後書きで簡単に説明してますので、細かいことに興味が無い方はそちらをお読みください。


   ◇◆◇◆◇◆◇


「優良債務者の皆様~」


 皆の同意が得られたところで、エムピーが姿を現した。

 突然のエムピー出現に、冒険者が「うわっ」と声を上げる。


「どうもです~。魔力運用ならなんでもお任せ、マスターのサポート妖精エムピーです~」


 皆、エムピーの存在を知っていたので、驚きつつも、彼女の話を聞こうと静かになった。


「皆様、忘れているかもしれませんので、説明するです~」


 エムピーが今回の救済策について、説明を始めた――。


 以前、ガイたち『断空の剣』に魔力を貸したのは、【魔力貸与】スキルだ。

 このスキルはパーティーメンバーのみに魔力を貸し出せるスキルだ。

 パーティーを組んでいるときには、パーティー全体の負債として扱われるが、実際は、個人に貸しており、借りた本人しか返済が出来ない。


 あたかもパーティーで借りたように錯覚させるが、実際は本人の負債――この辺り、創世神ユグドラシルの悪意が感じられる。


 ラーシェスと出会ったときもそうだった。

 彼女を救うためには大量の魔力が必要だったが、それはラーシェス個人の負債であり、誰かが肩代わりすることは出来ない。


 これが【魔力貸与】スキルだ。

 だが、俺の【魔力貸与】レベルが上昇したことにより、新たなスキル【魔蔵庫貸与】を取得した。


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【魔蔵庫貸与】


 他人に魔蔵庫を貸与できる。


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 このスキルによって、パーティーメンバー以外にも、魔力を貸せるようになったのだ。

 そして、このスキルはもうひとつの特徴を持っている。


 その名の通り、魔力ではなく、魔蔵庫を貸し出すのだ。

 簡単に言うと、魔力をストック出来る能力を他人に貸すものだ。


 【魔蔵庫】を借りるとステータスはどうなるか?


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【貸与魔蔵庫】


 魔力ストック:0

 魔力残高:0

 返済期限:――


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 この3つがステータスに追加される。

 上の例は、俺から魔力をまったく借りていない状況で、すべての値がゼロだ。


 次のような例を考えよう。

 最大魔力が1,000の人がスタンダードプランで借りる場合。


 ・借りるのは最大魔力の2倍:2,000MP。

 ・利息は2割:400MP。

 ・返済期限は3日後。


 この場合、ステータスは次のようになる。


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【貸与魔蔵庫】


 魔力ストック:2,000

 魔力残高:-2,400

 返済期限:3日後


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 魔力ストックは俺から借りた、自由に使える魔力だ。

 魔力残高は俺とどれだけ貸し借りをしているかを示すもので、返済期限までにゼロにしなければならない。


 注意してもらいたいのは、ゼロ以上――プラスにできることだ。

 魔力残高は自分の魔力と魔力ストックから魔力を移すことで減らせるのだが、借りている以上の魔力を移せば、魔力残高がプラスになる。


 魔力はなにもしていなくても、1時間で最大魔力の1割回復する。

 以前は余剰魔力がムダになったのだが、魔蔵庫を借りることによって、魔力残高に貯められるようになるのだ。

 貯まった魔力があれば、その分、先払いが可能になる。


 たとえば――。


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【貸与魔蔵庫】


 魔力ストック:0

 魔力残高:3,000

 返済期限:――


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 この状態で、スタンダードプランで借りると――。


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【貸与魔蔵庫】


 魔力ストック:2,000

 魔力残高:600

 返済期限:――


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 となる。


 すなわち、魔力残高がマイナスの場合は俺から借りている。

 魔力残高がプラスの場合は俺に貸していることになるのだ。


 そして、【魔蔵庫貸与】のもうひとつの機能。

 それは、他人同士で魔力残高のやり取りが出来るのだ。


 つまり、冒険者がコットン先生に魔力を送ることによって、先生の負債を肩代わりできる。

 これがエムピーとプレスティトさんが考えた解決案だ。


 【魔蔵庫貸与】は俺と契約を交わす必要があるのだが、一人一人とそれをするのは面倒なので、プレスティトさんに預けてある契約書で借りられるようにしている。


 個人間の魔力残高移動もプレスティトさんを介して行えるようにエムピーがやってくれたので、俺がなにかする必要はない。


 魔力残高移動を使えば、俺を介せずに魔力のやり取りが出来る。

 そうしたら、俺の役目がなくなってしまう。

 そこで、魔力残高を移す際には手数料を取るようにしてある。


 手数料は100%。

 たとえば、100MPを相手にあげたい場合には、俺に余計に100MP支払う必要があるのだ。


 コットン先生は救済されて助かる。

 貧民街の人々もより多く助けられる。

 冒険者はコットン先生に恩返しが出来る。


 そして、エムピーは手数料でホクホクだ。


 これが誰も不幸にしない解決法だ。


 エムピーの説明が終わると――。


「よし、俺、やるぞ」

「俺も俺も」

「おい、順番守れよ」


 賛同した冒険者たちは我先に、手続きするために受付カウンターに向かう。


「皆様、ありがとうございました」


 コットン先生は、その場にしゃがみ、泣き出してしまった。

 今まで一人で頑張ってきた苦労。

 それが報われたのだ。


「今回の件で、ますます儲かるです~」


 エムピーは嬉しそうだ。

 いや、この場にいる全員が嬉しいだろう。

 これで、今回の件は無事に解決だ。







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『ボルテンダール墳墓攻略四度目(1)』


 【魔蔵庫貸与】はただ魔力を貸すだけでなく、レントが銀行になって、各人に口座を持たせるようなものです。

 なので、口座に魔力を貯めたり、口座間で魔力を移動したりできます。

 今回は冒険者たちがコットン先生の口座に魔力を振り込んで解決しました。

 ただ、魔力移動には高い手数料がかかるので、よっぽどのことがないと利用する人はいないです。


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