第244話 ボルテンダール墳墓攻略三度目(2)


「じゃあ、行こうか――」


 俺たちが転移陣に足を踏み入れると――。


「うわっ」


 転移先は――。


「まずは、いったん、体勢を整えるぞッ――」


 俺は皆に指示を出していく。


「リンカは前方の敵を蹴散らせ」

「はいっ!」

「ラーシェスはリンカのサポート」

「任せて!」

「エルティア、土だ」

「わかった」


 俺はエルティアに見えるように、右、後、左の三方向を指差す。


「土精霊よっ。いっけ~~~」


 エルティアが命ずると、三方向に2メートルほど土壁がせり上がる。


 ――ガンガンガン。


 土壁を殴りつける音が聞こえてくるが、壁はビクともしない。

 これで、しばらくは安全なはず。


 転移先がどんな場所なのか、すぐには分からなかった。

 なぜなら、視界に飛び込んできたのは――。


 モンスター。

 モンスター。

 モンスター。

 モンスター。

 モンスター。


 ゴーレムやガーゴイルなど、石で出来た大量のモンスターにだった。

 四方八方、上空からも、モンスターが押し寄せ、それ以外は何も見えなかった。


 エルティアのおかげで、モンスターに取り囲まれる事態は避けられたし。

 前方のゴーレムたちは、リンカとラーシェスが防いでいる。


 そのとき――。


『討伐数:0/5040』


 頭の中に、文が流れた。

 それは俺だけじゃなかったようで、三人とも一瞬、動きを止める。


 そして、リンカとラーシェスがモンスターを倒すたびに――。


『討伐数:1/5040』

『討伐数:2/5040』

『討伐数:3/5040』

『討伐数:4/5040』

『討伐数:5/5040』


 ――数値が増えていく。


 どうやら、ここのモンスターを5040体倒すのが二つ目の試練のようだ。

 問題は、どうやったらここから出られるのか。

 もし、倒しきるまで、出られないとしたら……覚悟を決めないとな。


「エルティア、土壁の状況は?」

「しばらくは大丈夫だ。私の土精霊はそんなにヤワじゃないぞ」

「分かった。壊れそうになったら、壁を作り直してくれ。それまでは待機だ」

「うむ」


 エルティアは物足りなそうな顔つきだけど、ガマンしてもらうしかない。

 ただでさえ、エルティアは魔力返済のために、一日に使用可能なのは6000MPまでと決めてある。

 どれだけの長期戦になるか分からないから、少しの無駄遣いも出来ない。

 最悪、追加貸与も考えないといけないな……。


 一方――。


参之太刀さんのたちは先の先――かかるも退くも足はただ居つかぬやうに使ふなり。右手をば陽にあらはし、左手は陰にかへして、斬るにあり」


 リンカは幽冥二刀ヘル・アウェイツの二刀を用いた光速の剣技で、ゴーレムを次々となぎ倒し。


『――魂魄斬裂ソウル・リーパー・ディセクション


 ラーシェスは血統斧レイン・イン・ブラッドを叩きつけ、魔力を流し込んで敵を倒す。


『――屍肉喰コープス・カニバル


 倒したモンスターから魔力を奪うのも忘れない。


 エルティアと違って、この二人には出し惜しみなしで――と伝えてある。

 【魔蔵庫貸与】による利息のおかげで、俺の魔蔵庫には、かなりの魔力が貯まっている。

 だから、俺も控えたりしない。


『――無空弾』

『――無空弾』

『――無空弾』

『――無空弾』

『――無空弾』


 敵はゴーレムだけではなく、空からガーゴイルも襲ってくる。

 二人が地上の戦いに専念できるよう、空の敵は俺が撃ち落とす。


 なんとか、こちらのペースが掴めた。

 敵の動きが変わらないうちは、このまま順調に戦いを進められる。


 ただ――。


 これは、ボルテンダール試練。

 そう簡単にいくとは思えない。

 なにが起こっても平気なように、細心の注意を払う。


『討伐数:25/5040』


 今の、俺の心拍数は――80。

 平常時を保てている。


 ――5分経過


『討伐数:52/5040』


 前と上は問題ない。

 問題なのは。


 ――ガンガンガン。


 三方向の壁をゴーレムがずっと殴り続けている。


 ――ドオオォン。


 そして、体当たり。


 ――ピシリ。


「レント?」

「ああ、作りなおしてくれ」

「わかった。土精霊やっちゃえ」


 エルティアの土精霊によって、ヒビが塞がっていく。

 崩れかけて居た場所も修復される。


「エルティオ、ナイスだ!」

「えっへん!」


 エルティアも大活躍だ。

 ちゃんと、作戦を決めておいて正解だったな。


 本人に任せると、好き放題になるのは分かっていた。

 だから、プレスティトさんと相談して、エルティアの扱い方を学んだのだ。


 彼女を最適に運用するにはどうすれば良いかというと――。







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『ボルテンダール墳墓攻略三度目(3)』


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