第243話 ボルテンダール墳墓攻略三度目(1)


 ――翌日。


 昨晩は悪質債務者の襲撃を受けるという一騒動があったが、俺たちは今日も変わることなく、ボルテンダールの試練への三度目のトライだ。


 昨日は頭を散々使った末、なんとか謎解きをクリアできた。

 それもラーシェスのおかげ。

 彼女がいなかったら、ずっとあそこで足止めを喰らったかもしれない。

 そう思って、試しにプレスティトさんに問題を出してみたら、彼女もあっさりと正解した。


 やっぱり、頭の良い人は違うな――と思ったが、彼女も「こんなの慣れです」と当然のような顔をしていた。

 そういうものなのだろう。


 だが、俺は気にしていない。

 俺はソロ冒険者ではない。

 パーティーは役割分担。

 その中に一人でも解ける者がいたら、それで十分だ。

 この先も謎解きはラーシェスに任せよう。


 ともあれ、俺たちは砂漠入り口から謎解きの間に転移して攻略再開だ。

 部屋の床には謎解きを解いた事によって出現した魔法陣があり、この先は第二の試練が待ち構えている。

 ここまでの試練はゴーレムと戦ったくらいで、頭を使うばかりだったが、アンガーが言うには、この先は本気でヤバいそうだ。

 どんな強敵が出るのか、万全の準備を整える。


「まずはリンカ」

「はい!」


 リンカは先日手に入れたユニークウェポン【幽冥二刀ヘル・アウェイツ】を抜く。

 二刀のうち、長い方が【冥土】。短い方が【穢土】。

 どちらも向こうが透けて見えるほど薄い刃だ。

 その色は、彼女の髪と同じ水色。

 まさに、彼女のために存在する二刀だ。


 リンカはスキルを発動させる――。


壱之太刀いちのたち終之太刀ついのたち――斬り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、一歩踏み込め阿修羅道」


 リンカが【壱之太刀】を発動させると、彼女の身体と【幽冥二刀ヘル・アウェイツ】が赤い闘気で包まれる。

 長短ふたつの水色刀身が、まるで血を求めるように赤く染まる。

 リンカの表情はいつもと変わらないように見えるが、心なしか、表情の奥に恐ろしいまでに研ぎ澄まされた戦意が感じられる。


 彼女の武器は【幽冥二刀ヘル・アウェイツ】だけでなく、手甲と脚甲も加わった。

 斬るだけでなく、殴る蹴る――【壱之太刀】で強化された身体で縦横無尽に暴れ回ってくれるだろう。


「行けます」

「俺っちも行けるッス」


 彼女のサポート妖精、アンガーもリンカの肩に乗り、戦意を見せる。


「ラーシェスは?」

「ボクも良いよ。イータ?」

「やっ、やるニャ。今日は本気出すニャ」

「ちゃんと働いたら、ご褒美あげるよ」


 彼女は言わなかったが、「でも、サボったら――」とイータに視線で告げる。

 イータもそれを悟っており、ビクビクと震えている。


 アンガーの敵や罠を察する能力。

 イータの敵の弱点を発見する能力。

 どちらも、頼りにさせてもらおう。


 ラーシェスは彼女のユニークウェポン――赤黒く禍々しい血統斧レイン・イン・ブラッドを構える。

 ジンさんから貰った布で丁寧に手入れされており、邪悪さが以前よりも増している。

 同じようにラーシェスの神経も研ぎ澄まされている。

 気負いもなく、気が抜けてもいない。

 ベストに近いコンディションだ。


 そして、もう一人――。


「エルティアは?」


 尋ねられたエルティアはサムズアップ。

 今日もちゃんと言いつけ通り、彼女は黙っている。


「俺が指示出すまでは、手出し無用だからね」


 エルティアがコクコクと頷く。

 一度、ハリセンを見せてからは、人が変わったように従順になった。

 俺も好んでハリセンを使いたいわけではないから、ちゃんと従ってくれれば良いのだが……。


 最後に、俺もとっておきの武器――シャノンズロッドを持つ。


「じゃあ、行こうか――」







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『ボルテンダール墳墓攻略三度目(2)』


楽しんでいただけましたら、フォロー、★評価お願いしますm(_ _)m

本作品を一人でも多くの方に読んで頂きたいですので、ご協力いただければ幸いですm(_ _)m


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る