第241話 悪質債務者の襲撃


 リーダーの言葉に男たちは獲物を抜き、俺に斬りかかってきた――。


 冒険者が20人。

 あまり、品の良くなさそうな奴らだ。

 どれも皆、切羽詰まった顔をしている。


 起死回生の一発逆転を狙った――とうところだろう。


 ここの街の冒険者は気の良い人が多いが、やはり、この手の輩はどこにでもいる。


 まずは魔法の一斉掃射。

 火風水土――さまざまな属性の魔法攻撃が俺に向かって放たれ。

 次いで、剣や槍、殴りかかってくる奴も。

 急造のグループにしては連携が取れている。


 よほど、恨みを買っているようで、何度も何度も怒りを込めた攻撃が俺を襲う。


 だがしかし――。


 ――【債権者保護】


 絶対無敵の反則スキル。

 債務者の攻撃は、債権者である俺には一切届かない。

 奴らの攻撃は全て無効化される。


 この街の者には、俺の強さだけでなく、【債権者保護】のスキルも見せていない。

 奴らの顔に驚愕と怯えが浮かぶ。


「なっ、なんで無傷なんだッ!」

「クソッ、かかれっ!」


 やけくそになって攻めてくるが、無駄な攻撃だ。

 やがて、奴らは攻撃が届かないことを悟る。


「もう、終わりか? じゃあ、俺のターンだ」


 俺は奴らに向かって、魔法を発動させる。


「――ファイアボール」

「――ファイアボール」

「――ファイアボール」

「――ファイアボール」

「――ファイアボール」

「――ファイアボール」

「――ファイアボール」


 最弱魔法であるファイアボール。

 債務者を殺すのは、大きな損失だ。

 手加減して倒すには、これが丁度いい。


 相手が強ければレジストされてしまうが、そこまで強い者はいなかった。

 奴らはこんがりとローストされ、戦意を失い、地べたに這いつくばる。

 俺の出番は終わり、後はエムピーの出番だ。

 奴らは俺との戦いで大ダメージを負ったが、本当の地獄はこの先に待っている。

 同情する気は一切ないが。


「終わったよ」


 俺が声をかけると、物陰から見ていた二人が出て来る。


「なに、今の?」

「ああ、あれは――」


 リンカはガイたちとの決闘で知っているが、ラーシェスには教えていなかったので、彼女に説明する。


「うわあ。これも反則スキルだね~」


 彼女が言う通り、【債権者保護】がある限り、追い詰められた債務者が自棄になって襲ってきてもなんの問題もない。


「コイツらは俺が見ておくから、ギルドの人を呼んで来て」

「はい、行ってきます」


 不審な動きがあれば、俺は遠慮なくファイアボールを撃つつもりだが、奴らは完全に戦意を失っていて、動く気配もなかった。

 やがて、二人がプレスティトさんと数人の冒険者を連れて戻って来た。


「コイツらですか?」

「はい」


 ここに来る間にリンカが説明したようで、そこからはスムーズだった。


「なるほど、そういうことですか」

「太ぇ野郎どもだな」


 怒った冒険者たちは、容赦なく賊どもを鋼鉄の鎖でグルグル巻きにしていく。


「俺たちが連れてくから、後は任せろ」


 そう言って、繋がれた鎖で引きずりながら、奴らは連行されていった。


「ギルドはどう処遇するんですか?」

「冒険者への襲撃は重罪です。それに、この街の冒険者はレントさんに大きな恩があります。中途半端な罰では、皆、納得しないでしょう」


 冒険者は一般人とは隔絶した力を持つ。

 それゆえに、暴力には大きなペナルティーが課される。

 これだけの大人数での襲撃。

 悪質にも程がある行いに、どのような罰があるかは、想像がつく。

 その罰が俺にとって望ましくないことも。


「奴らの処罰について、お願いがあるのですが――」


 俺はプレスティトさんに頼む。







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『悪質債務者の末路』



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