第230話 ボルテンダール墳墓攻略二度目(2)


 俺の問いかけにエルティアは自信満々は笑顔を見せた――。


「モンスターはいなかったぞ。まったく、気配は感じられなかった」

「本当?」

「ああ。私ならともかく、精霊が言うんだから、間違いない」


 さっきのは精霊と会話していたのか。

 彼女はともかく、精霊は嘘をついたり、適当なことを言ったりはしないだろう。


「エルティアは覚えてた?」

「バカなことを言うな。そんな昔のことを覚えているわけがないだろ」


 なぜか、さっきよりも自信満々なドヤ顔だ。


「うん……」


 訊いた俺の方がバカだった……。

 リンカもラーシェスも「まあ、そうだよね」と納得している。


「モンスターがいないなら、そんなに心配はないだろ」


 前回も最初はエルティアではなく、俺が行く予定だった。

 またエルティアに行かせると、精霊魔法が使えない今、迷子になるのは確実だ。


「じゃあ、俺が行ってくるよ」

「気をつけてくださいね」

「レントなら大丈夫だよ」

「一時間たっても帰ってこなかったら、街に戻ってくれ」

「レントさん……」

「平気?」

「俺一人なら、どうとでもなるよ」

「心配なら、私もついていくぞ」

「それは間に合ってる」

「むぅ」


 足手まといは連れて行きたくないし、俺の後にエルティアが罠を踏んで、同じ場所に飛ばされるとは限らない。


「行ってくる」


 俺は罠を踏む。

 なにが起こっても良いように心構えていたのだが……。


「なにも起こりませんね」

「みたいだな」


 だが、次の瞬間――。


 ラーシェスの指輪が光る。

 そして、壁の真ん中にふたつのスイッチが現れた。


「これは?」

「二度目で突破できるタイプか」


 一回罠にハマらないと、次に進めないギミックは他のダンジョンでもよくある。

 このタイプは一度目が大変なのだが、今回はエルティアのおかげで楽をさせてもらった。


「どうだ。私のおかげだな!」

「うん。そこは感謝するよ」


 話していると――。


「ねえ、今、頭にフラニスさんの記憶が流れ込んできたんだけど」


 ラーシェスが声をかけてきた。


「分かったことは3つあるよ」

「教えてくれ」

「まず、砂漠の入り口で念じると、ここまで転移出来るみたい」

「それは便利だね」


 転移装置があり、そこから攻略を再開出来るダンジョンがある。

 ここもそのようだ。

 ボルテンダールさんからの、配慮なのか、どうなのかは分からない。

 だけど、これで毎回、砂漠マラソンと罠地帯突破をしなくて済む。


「ふたつのスイッチだけど――」


 右側は青いスイッチ。

 左側は赤いスイッチ。


「青いスイッチを押すと、砂漠の入り口に転移するって」


 おお、帰りも楽できるのか。


「赤いスイッチを押すと、扉が動いて先に進めるんだって」

「良かった。これでここは突破できるんだな」

「やっと進めますね」

「ああ」


 突破方法は分かったが、ひとつ気になることがあった。


「なあ、エルティア」

「なんだ?」

「赤と青は分かるよな」

「失礼な! それくらいは私でも分かるぞ」


 バカにされたと彼女は怒るが、まだ信用できない。


「じゃあ、右側は何色?」

「簡単な。右は赤だ!」

「「「……………………」」」


 まさか、色まで区別できないとは……。


「本当に分かってる? 適当に答えてない?」

「何を言う。私がそんなことするわけないだろっ!」

「じゃあ、これは?」


 エルティアはそう言うが、当てずっぽうの可能性は否定できない。

 それを確かめるために、俺は赤い魔石を見せる。


「赤だ」


 次は青い魔石だ。


「青だ」


 その後、何回かやってみたが、エルティアは一度も間違えない。

 あれ?

 ちゃんと色の区別はついている。

 じゃあ、なんで?

 あっ、そういうことか!







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『ボルテンダール墳墓攻略二度目(3)』


楽しんでいただけましたら、フォロー、★評価お願いしますm(_ _)m

本作品を一人でも多くの方に読んで頂きたいですので、ご協力いただければ幸いですm(_ _)m


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る