第216話 ボルテンダール墳墓攻略一度目(6)

【前書き】


予約投稿間違えてましたm(_ _)m

本日2話投稿の2話目です


   ◇◆◇◆◇◆◇



 リンカとラーシェスはもう一体のゴーレムに襲いかかる。

 まず、初手はリンカだ。


壱之太刀いちのたち終之太刀ついのたち――斬り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、一歩踏み込め阿修羅道」


 壱之太刀を発動させて斬り込む。

 ゴーレムが反応するより早く、懐に潜り込み、斬撃をひとつ。

 ゴーレムもそれほど動きが遅いわけでもないが、それ以上にリンカが速い。

 一週間前の、俺が知っているリンカよりも断然に速い。


 そして、それだけではない。

 リンカの攻撃はちゃんとスペースを作った。

 ゴーレムの真横、そのスペースをラーシェスが駆け抜けていく。


 リンカは一撃入れると、追撃はせず、一歩後ろに下がる。

 ゴーレムはリンカに反撃しようと腕を振り回すが、リンカは華麗なステップでそれを避ける。


 その間に。

 後ろに回り込んだラーシェスが――。


『――【魂魄斬裂ソウル・リーパー・ディセクション】』


 血統斧レイン・イン・ブラッドによる攻撃をガラ空きの背中に振り下ろす。

 斧はゴーレムの背中に深く突き刺さる。


 【魂魄斬裂ソウル・リーパー・ディセクション】は魔力を使用した攻撃。相手に武器を突き立てたまま魔力を注ぎ込むほど強力になる。

 一秒、二秒、三秒……。


 こちらも以前と比べ、格段に威力が増している。

 やがて――。


 ゴーレムは形を失い、バラバラになって地面に崩れ落ちる。


『――【屍肉喰コープス・カニバル】』


 崩れ去ったゴーレムから、ラーシェスが魔力を吸収する。


「終わりました!」

「やったよ!」

「二人とも、成長したね」


 攻撃力やスキルの力だけではない。

 『流星群』から学んだのだろう。

 コンビネーションや戦いの組み立て方まで、成長している。

 まさに、無駄のない戦い方。完全勝利だ。


 そして――。


「どうだ! 私の精霊術は!」


 もう一方は自信満々にドヤ顔だ。

 確かに、彼女の精霊術は強い。

 精霊術は。


 それ以外は……お察しだ。


「あのー、ひとつ良いですか?」

「なんだ、恐れ入ったか!」

「いや、そうじゃなくて……」


 リンカがラーシェスに問いかける。


「エルティアさんって、フォークはどっちの手で持ちますか?」


 やっぱり、左右が分かっていないエルティアに疑問を持ったようだ。


「フォーク? ああ、あの食べるときに刺すやつだな! それくらいは知ってるぞ!」


 フォークを知っていることだけで自慢気味だ。

 三歳児かな?


「フォークはどっちの手で持ちますか?」

「どっちの手……?」


 悩み出した。

 ごめん。三歳児に失礼だった。


 エルティアは左右の手を上げたり、下げたり。

 確認しているのだが……。


「その日の気分だ!」


 良い意味でとらえれば、両利きってことだ。


「じゃあ、良いです……」


 フォークで左右を教えよう作戦は失敗。

 リンカは投げ出してしまった。

 リンカの呆れ顔を見るのは初めてかもしれない。

 良い経験をさせてもらった。


「ボクも良いかな?」

「ああ、ドンとこい!」


 今度はラーシェスの番だ。


「エルティアはどんなパーティーにいたの?」

「パーティーか」


 エルティアが眉間にしわを寄せて、考え込む。

 俺も気になっていた質問だ。

 やがて、口を開く。


「昔はいろんなパーティーに入っていたのだがな。なぜか、いつも同じ結果になるのだ」


 だいたい想像はついた。

 ラーシェスとリンカも俺と同じ想像をしてるのだろう。


「どんな結果?」

「ああ、どんなパーティーに入っても、しばらくすると『君にはもっと相応しいパーティーがある』と、私を評価してくれてな」


 ああ、やっぱり……。

 エルティアとパーティーを組める冒険者は存在しないか。

 パーティーメンバーを苦労がしのばれる。

 お疲れさまでした。


「そこまで褒められたら、どうしようもないからな」


 俺たち三人とも彼らの気持ちを理解しているが、言葉通りに受け取っているのが一人。

 ともあれ、「エルティアがどんなパーティーに属していたか」と言う疑問は解決した。


「まあ、私は強かったからな。ソロでもなんの問題もなかったがな!」


 その点だけは評価せずにはいられない。

 水属性に強いゴーレム、しかもそれなりの強さのヤツを水精霊で倒しちゃったからな。

 その上、本人は軽々といった調子だし。


「質問は済んだか? じゃあ、冒険再開だ! ついてこい!」






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『ボルテンダール墳墓攻略一度目(7)』


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