第215話 ボルテンダール墳墓攻略一度目(5)

【前書き】


予約投稿間違えてましたm(_ _)m

本日2話投稿の1話目です


   ◇◆◇◆◇◆◇



「あっちから、モンスターがやって来るッス」


 アンガーが指差す、その先から――。


「ゴーレムッス。二体やって来るッス」

「よし、私の出番だな!」

「ちょっと、待って」

「なっ、なんだ、レント」

「作戦を立てる」


 今すぐにでも走りだそうとするエルティアの腕を掴む。

 不服そうなエルティアから、二人に視線を移す。

 二人とも、俺を見てうなずいた。

 俺に指揮を任せてくれた。


 それと同時に、アンガーがイータの頭を叩く。


「いつまで寝てるッス。お前の出番ッス」

「痛いニャ。止めるニャ」


 文句を言いながらも、イータが首をもたげる。

 そして、けだる気にゴーレム見て言う。


「あっちが水、こっちは火に弱いニャ」


 アンガーが悪意を感じ取れるのに対し、イータは敵の弱点が分かる。

 ゴーレムは個体によって弱点属性が違うので、砂漠での戦いでも役立った。

 あんまり役立たずだとラーシェスのお仕置きが待ってるからな。


「砂漠のに比べたらどう?」

「エリア5のヤツより強いです」

「そうなの?」


 ラーシェスは経験不足で分からないようだが、リンカは敵の力を見計らえる。

 流星群と一緒にエリア5で戦って来た。

 それより強い相手でリンカの顔がこわばる。

 そして、リンカの言葉を聞いて、ラーシェスも真剣な顔になる。


「リンカとラーシェスで右側のヤツ」

「はい!」

「了解だよ」

「エルティアは左側だ」

「左? どっちだ?」


 こっちから見た左側。

 向こうから見た左側。


 二通りあるが、「左側」と言った場合、「こっちから見た左側」。

 それが冒険者の暗黙の了解。

 パーティーメンバー以外と一緒に戦うことも多いので、間違えないように冒険者の間では常識なのだ。

 左がエルティ。右が二人。

 左が水に弱く。右が火に弱い。

 こうしたのには、理由があるのだが……。


「あっちだ」

「分かったぞ。任せろ1」


 俺は左側のゴーレムを指差す。

 ここまでしたら、間違えないだろうが、少し不安だ。


「言い方が悪かった。リンカとラーシェスは、エルティアとは別の一体だ」

「そうですね!」

「うん」


 二人とも、苦笑いだ。

 けれど、それで良い意味で緊張が解けた。

 エルティアに感謝すべきか……。


 エルティアは早速、一人で飛び出し、二人もそれに続く。

 ちなみに、今回の戦闘に俺は参加しない。

 最初の戦闘は二人に任せると決めていた。


 一週間の修行成果を見るためだ。

 どうしてもピンチになれば、俺も参加するが、多分大丈夫だろう。

 俺が出来るサポートとしては、付与魔術か無属性魔法がベストだ。

 他の手段としては、火魔法レベル3のファイアトルネードがある。

 火属性に弱い相手なら、無空弾よりもこっちの方が効率が良い。

 だから、二人には右側を攻めるように指示した。

 指示したのだが……。


 なんで、指差しまでしたのに、間違えるんだ?

 こんなんで、よく、Aランクになったんだ?


 ともかく、エルティアは右のゴーレムに向かって走って行く。


「水精霊よ。ぐちゃぐちゃだー」


 エルティアは走りながら、水精霊をけしかける。

 火属性に弱いゴーレムに向かって。


 直径1メートルほどの水球が、ゴーレムにぶつかり、破裂する。

 言葉通り、グチャグチャになってバラバラだ。


「よーし、よくやったー」


 ……いろいろと言いたいことがある。


 まず、右と左を覚えよう。

 フォークを持つ方が左手だ。

 子どもでも理解できる。


 そして、彼女のパーティーメンバーについて。

 どうやって、彼女と意思疎通が出来たんだろうか。

 俺には、不可能にしか思えない。


 もうひとつ。

 遠距離魔法を使うのに、なんで走って行ったのか。

 その場で撃つよな、普通。


 最後に。

 火属性に弱いことは、水属性に強いということだ。

 それなのに、なんでいとも簡単に水球一発でゴーレムを倒せたのか。


 ――ポンコツですが、誰よりも精霊に愛されています。悔しいですが。


 プレスティトの言葉通り、戦力は桁外れだ。

 ボルテンダール試練をクリアするために、大きな力になってくれるだろう。

 そして、きっと、それ以上に迷惑をかけてくれるだろう。


 俺が複雑な思いをしている間にも――。


 リンカとラーシェスはもう一体のゴーレムに襲いかかる。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『ボルテンダール墳墓攻略一度目(6)』


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