第213話 ボルテンダール墳墓攻略一度目(3)
大きな音と共に砂漠が盛り上がる。
いや、正確には、砂漠の中に埋まっていた建造物がせり上がってるんだ。
1メートルくらいの立方体の石が何段にも組まれ、見た感じ高さは100メートル以上ありそうだ。
「うわっ」
「デカいな」
「凄いです!」
俺たち三人は高く見上げる。
地上に出現しているダンジョンはいくつもあるが、その中でもかなりの大きさだ。
「この建物は……」
巨大さはそれだけで迫力だ。
南方の砂漠の国で王族の墓として立てられた同じ様なものがある――たしか、ピラミッドと言ったか。
ボルテンダールはそこの生まれなのだろうか。
「こんなに大きいの初めて見たよ。王城よりも大きいね」
「私もです。レントは?」
「俺はもっと高い塔型のダンジョンに入ったことがあるよ。天高くまでそびえてて、てっぺんが見えないほどだった」
「そんなのがあるんだ」
「見てみたいです!」
「そのうち、行ってみようか?」
「はい!」
「ボクも楽しみだよ」
確かに俺たちには目的がある。
他のSSSギフトの持ち主を探し、フラニスさんから聞いたように、なにかやらねばならぬことがある。
だけど、冒険を楽しむ心も忘れたくない。
「ラーシェスのご先祖様って凄いね」
「ボクもできるようになるのかな?」
ラーシェスのギフトは【
魔力を喰らい尽くすギフトとこの巨大建造物は結びつきそうもない。
「いや、他のSSSギフト持ちが建てたのかもしれない」
「ああ、そうかも」
「昔のみんなも、私たちみたいに仲が良かったんでしょうか?」
「そうだと良いね」
俺たちがそんな会話をしていると――。
「よし、ここは私に任せろ!」
いつの間にか復活していた、エルティアが自信満々に手を挙げる。
俺はジト目で尋ねる。
「どうするつもり?」
「はっはっは。なにも入り口から入る必要はなかろう」
彼女は建物のてっぺんを指差す。
みんなの視線が彼女に集まるが、もちろん、誰も期待はしていない。
いや、なにをやらかしてくれるか、そういう意味では期待している。
「私は高いところが大好きだ!」
「うっ、うん……」
「たいてい、こういうダンジョンは一番上がゴールだ」
間違ったことは言っていない。
そして、なにをやるか大体、想像はついた。
「というわけで、風精霊よ!」
彼女の足元から風が生じ、ふわりと身体が持ち上がる。
「これが私の精霊術だ。ちょっと、飛んで見てくるぞ」
ボルテンダールの試練がそんな簡単にいくとは思えないけど……。
「行けえーー」
風になびく金髪とともに、彼女は高く高く飛んでいく。
そして、中腹の辺りで――。
――ガン。
彼女は透明な壁に阻まれ、落下する。
そして、ゴンゴンゴンと石に叩きつけられながら、転がり落ちてくる。
「うわあああああ」
エルティアの絶叫が響く。
やっぱりという空気が流れる中、俺たちの前まで転がってきたエルティアは目を回したのか、ぐったりと大の字になる。
「ううう。気持ち悪いいい~~~」
どうやら、酔ってしまったようだ。
「やっぱり、ズルはできないね」
「登ってくのもダメなんでしょうね」
「試してみる?」
墳墓は階段状になっており、外から登ることが出来る。
どうせ対策されているだろうけど、大した手間でもないし、試してみてもいいだろう。
「やってみます!」
「気をつけてね」
リンカなら言うまでもなく、エルティアみたいな無様な結果にはならないだろう。
「行ってきます!」
トントントンと。
彼女はハカマをはためかせつつ、一段ずつ登っていく。
そして、中腹――エルティアがぶつかった辺りで一度止まると、そこで手を建物の方に向ける。
彼女の手は見えない障壁に阻まれたようで、こちらを振り返り、両手でバツ印を作ってみせた。
「やっぱり、見えない障壁がありますね」
リンカは大きな声でこちらに伝える。
予想通りの結果だ。
「じゃあ、やってみます」
そう言って、リンカは剣を構える。
「
壱之太刀で身体強化して――。
「
強烈な一撃を放つ。
が。
やはり、障壁にはダメージを与えられない。
「無理でした」
リンカは気落ちした様子もなく、体重を感じさせない軽やかな動きで俺たちのところに戻ってくる。
「やっぱりね」
「そうだよね」
やはり、その対策はされていた。
ちゃんと入り口から攻略していくしかないだろう。
建物の一番下の段。
俺たちが立っている前に、フラニス廟の入り口にあったような膜が存在する。
ここが入り口だろう。
俺たちは気を引き締めて、膜を通り抜ける。
「まっ、待ってくれ。私も行くぞ」
ただ、一人、試練が始まる前から疲労困憊なのがいるが、まあ、気にしないで行こう。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『ボルテンダール墳墓攻略一度目(4)』
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