【2/9コミックス2巻発売】貸した魔力は【リボ払い】で強制徴収〜パーティー追放された俺は、可愛いサポート妖精と一緒に取り立てた魔力を運用して最強を目指す。限界まで搾り取ってやるから地獄を見やがれ〜
第197話 SS 第一回『あるじのここが好き』選手権(下)
第197話 SS 第一回『あるじのここが好き』選手権(下)
「では、続いて、アンガーの番です~。リンカさんの良いところを言うです~」
「おっ、おいらか。任せるッス」
アンガーはドンッと胸を誇らしげに叩く。
「ウチの姐御は
独特な話しぶりは二匹にはいまいち分からなかったが、その熱い思いだけはしっかりと伝わってきた。
「駄猫は、リンカさんのどこが良いです?」
「リンカは優しいニャ。オーナーがやり過ぎたとき、止めてくれるニャ」
「そうです~。リンカさんは優しいです~。しかも、リンカさんも優良債務者です~。とくに【弐之太刀】が美味しいです~。一回で3分の2も魔力消費するです~。ガンガン連発して欲しいです~。リンカさんは、今後も魔力消費の多いスキルを覚えるので、今から楽しみです~」
うっとりとした口振りのエムピーに、二匹は呆れ顔だ。
「エムピーは魔力以外は興味ないのかニャ?」
「姐御に対して、失礼ッス」
二匹は不満をあわらにするが――
「魔力以上に大切なものってありますか~?」
二人は揺らぎない姿にこれ以上言っても無駄だと口をつぐむ。
「さすがにそれは冗談です~。二人ともマスターの良い仲間です~。マスターが二人をサポートし、二人がマスターをサポートする。最高の仲間です~」
「そうッス」
「それは同意ニャ」
二匹とも、エムピーは魔力にしか興味を持っていないと思っていた。
だが、意外にも真っ当なことを言うエムピーに、二人も納得する。
「それでは、最後にマスターの良いところですが、私は最後にします~。イータからどうぞです~」
「ズルいニャ。エムピーから言うニャ」
「司会者の特権です~。駄猫は黙るです~」
「おいらは、別に構わないッス」
エムピーはアンガーを見て頷く。
「では、アンガーからです~」
「むっ、無視するニャ~」
「うっす。レント君の良いところは、ビシッと筋を通すところッス。男の中の男ッス」
「うんうん、良く分かってるです~」
「『断空の剣』への制裁、おいらは姐御の中から見てたッスが、一切手加減せず、裏切り者に鉄鎚を下したのが、最高にスカッとしたッス」
「そんな話があったかニャ?」
「あれを見逃したのは、もったいなかったッスよ」
「はーい、アンガーは百点満点の答です~」
「うっす」
エムピーに褒められ、アンガーは気合いの入ったポーズで応じる。
「では、駄猫の番です~」
「イータは、美味しい魔力だ大好きだニャ~」
「確かにマスターの魔力は極上です~」
イータもエムピーも蕩けた顔を見せる。
しばらくして、エムピーは元の顔に戻り、イータを問い詰める。
「で? 他には? マスターの良いところは? 性格は?」
いや、元の顔ではない。
いつものエムピーのまとう朗らかな空気が一変して張り詰める。
「ニャニャ⁉」
「まさか、魔量だけじゃないよね?」
「ちっ、違うニャ……他にも、レントの良いところはあるニャ」
慌てて取り繕おうとするイータの頭をハリセンで叩く。
「レント? マスターのことを呼び捨て? 駄猫には、お仕置きが必要かな?」
まるで飼い主のラーシェスが乗り移ったような口調にイータは震え上がる。
「ごっ、ごめんニャ。レントさんニャ。これからはちゃんと『さん付け』で呼ぶニャ」
イータは必死に頭を下げる。
その頭にエムピーがハリセンを連打。
激しい音が響き渡るが、本来、ハリセンは音の割りに痛みが少ない責め具、もとい、道具だ。
そのはずなのだが……。
イータは叩かれるたびに悲鳴をあげ、しおらしくなっていく。
やっぱり、痛いのかもしれない。
「そろそろ、許してやるッス。コイツもしっかり、反省したッス」
「そうニャ。ごめんなさいニャ」
「分かればよろしい」
エムピーはスッキリした顔で言う。
一方の、イータはヘロヘロだ。
「早く、答えるです~」
エムピーはいつもの口調に戻ったが、イータは震え声のまま答える。
「レントさんは優しいニャ。オーナーを救ってくれたニャ。【魔蔵庫貸与】でみんなを幸せにするニャ。戦いのときも、周りをよく見て、オーナーのサポートしてくれるニャ。それと、オーナーが【
「よろしい」
恐怖にかられていつまでも続きそうだったイータの弁明だったが、エムピーはそれを途中で止める。
「それだけ分かってれば良いです~。普段から、その気持ちを忘れず、感謝するです~」
イータはコクコクと頷く。
もともとエムピーに苦手意識を持っていたが、ラーシェスだけでなく、エムピーも怒らせてはならないと悟った。
とくに、マスターであるレントのことには要注意だとも。
「では、最後に、私が思うマスターの良いところです~」
「うす」
「ニャ」
「それは――」
エムピーは自信満々に胸を張る。
「マスターの良いところは――全てです」
「え?」
「ニャ?」
予想外の発言に、二匹は驚きの声を漏らした。
「マスターは完璧な存在です~。それ以上の言葉が必要ですか~」
自分は間違ったことは言っていない。
自分の言葉が真実である。
エムピーの態度は揺るぎない。
先ほど、折檻されたイータも。
それを見ていたアンガーも。
黙って、首をコクコクと動かすしか出来なかった。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『レントとの出会い:ナミリアの場合』
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