第191話 和の試練(1)


 翼の生えた小鬼の彫像――ガーゴイルだ。

 赤、青、緑の三体だ。


 今までの試練から想定すると、赤は物理、青は魔法しか通用しないのだろう。

 緑は――確信はないがきっと……。


 戦いにおいて、俺が一番、注意しなければならないのは、魔力量の管理だ。

 以前は【無限の魔蔵庫】に貯まった大量の魔力で、気にせず魔法を連発できたが、今回はそうはいかない。


 【無限の魔蔵庫】のストックは3万ちょっと。

 リンカの【弐之太刀】は1回200MP消費するし、【壱之太刀】の分も必要だ。

 ラーシェスの【魂魄斬裂ソウル・リーパー・ディセクション】は魔力を注げば注ぐほど威力が高まる。

 俺の無空弾も同じだ。

 魔力残量を確認しながら、作戦を立てなければならないが――。


「速攻だ」


 まずは先手を取り、相手の強さを把握する。


「リンカは赤。【弐之太刀】だ」

「はいっ!」


 リンカは左端の赤ガーゴイルを相手に。


「ラーシェスは緑」

「うん」


 ラーシェスは血統斧レイン・イン・ブラッドを持って、緑ガーゴイルだ。


 そして、俺は無空弾のためにシャノンズロッドに魔力を流し――。


壱之太刀いちのたち終之太刀ついのたち――斬り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、一歩踏み込め阿修羅道」


 【壱之太刀】を発動し――。


弐之太刀にのたち後先之太刀ごせんのたち――力に従うは居合いあいあらず、心に勝つが居合なり。雲晴れた、後の光をとくと見よ」


 ――斬ッ!


 赤ガーゴイルに向かって放たれた【弐之太刀】が大きな傷を与えるが、倒すことは出来なかった。

 思ったよりも硬い。

 数発必要だと思っておこう。

 赤ガーゴイルはダメージを受けながらも、その目から赤い光線を放つ。

 瞬間、リンカの身体がブレ、光線を回避する。


 一方。ラーシェスは、血統斧レイン・イン・ブラッドを緑ガーゴイルに向かって振り回すが、相手は素早い動きでヒラリヒラリと飛んで避ける。

 緑ガーゴイルは攻撃はせずに、回避に特化した戦い方だ。


 彼女も修行で鍛えたとは言え、まだまだ経験不足。

 今のラーシェスでは、攻撃を与えるのは難しそうだ。


 そして、俺は――。


「チッ」


 緑ガーゴイルとは対照的に、青ガーゴイルは積極的に攻撃を仕掛けてくる。

 頭上から急降下し、鉤爪で攻撃してくる。

 躱すのは問題ないが、これでは魔力を込められず、無空弾は撃てない。


 嫌らしい敵だ。

 和の試練というだけあって、こっちの連携が問われる。


 ――作戦変更だ。


「リンカは【弐之太刀】。倒れるまでやってくれ」

「はいっ!」

「ラーシェスは青を引きつけてくれ。通常攻撃で良い」

「うん」


 まずはリンカに赤ガーゴイルを仕留めてもらう。

 そして、ラーシェスには青ガーゴイルの相手をしてもらう。

 その間に「無空弾」を撃ちたいのだが、その前に――。


『――【付与:攻撃力増加】』

『――【付与:守備力増加】』

『――【付与:敏捷性増加】』


 LV1の付与魔法で俺たち三人にバフをかけ、さらに――。


『――【付与:攻撃力減少】』

『――【付与:守備力減少】』

『――【付与:敏捷性減少】』


 LV2の付与魔法で敵にデバフをかける。

 そして、すぐにシャノンズロッドを構え「無空弾」の準備に入る。


 動きが良くなったラーシェスは血統斧レイン・イン・ブラッドを振り回し、青ガーゴイルを近づけさせない。

 だが、血統斧レイン・イン・ブラッドが当たっても、青ガーゴイルにはダメージが入らない。

 やはり、コイツには魔法攻撃しか効かないな。


『――【弐之太刀】』


 リンカの放った閃光が赤ガーゴイルを真っ二つに斬り裂く。

 赤ガーゴイルは死体を残さず、消滅した。


 よし、二発で倒せたか。

 さっきまでの試練と違い、一撃で倒す必要はない。

 これなら、無理な相手ではない。


「リンカ、よくやった。次は緑だ」

「はいっ!」


 リンカが緑ガーゴイルに向かう。


「ラーシェスはそのまま、凌いでくれ」

「うん」


 俺はシャノンズロッドにさらに魔力を溜めつつ――。


『――【付与:スキル強化】』


 リンカが赤ガーゴイルを倒すのに【弐之太刀】が二発必要だった。

 それを考えると、まだまだ魔力を溜める必要が――。


 だが、ラーシェスが奮闘しているが、青ガーゴイルの動きがだんだんと激しくなる。

 彼女がバランスを崩したタイミングで青ガーゴイルが襲いかか――。


「無空弾」


 青ガーゴイルに向けて、無空弾を発射する。

 それほど魔力を込めていない状態だったが、青ガーゴイルの肩に当たり、破片が砕け散る。


「大丈夫か?」

「うん、ちゃんと引き受けられなくてゴメン」

「気にしないで。十分だよ」


 倒れた彼女を抱き起こす。

 転びはしたものの、精神状態は安定している。

 この一週間で修羅場を乗り切ったのだと分かる。


 一方のリンカは――。







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『和の試練(2)』


飯島しんごう先生によるコミカライズ2巻、発売中です!



楽しんでいただけましたら、フォロー、★評価お願いしますm(_ _)m

本作品を一人でも多くの方に読んで頂きたいですので、ご協力いただければ幸いですm(_ _)m


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る