第189話 魔の試練(1)
俺はそれと同時に、もうひとつの秘策を使う――。
そう。
俺の師匠はもう一人。
努力の鬼――付与術士のナミリアさんだ。
無属性魔法もそうだったが、彼女の教えを習得するのは簡単ではなかった。
ふたつの修行を同時進行で進めるのは地獄のような厳しさだった。
俺は記憶を振り返る――。
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修行を始めて3日目のことだ。
一日5万以上の魔力を消費して、無空弾を撃ちまくっていた。
魔力を流し込む方法にも慣れてきて、それなりの威力の無空弾を撃てるようになった。
「無空弾」
前に突き出した腕から放たれた無空弾が大岩に直撃する。
シャノンさんが土魔法で作り出したもので、自然の岩より硬くなっている。
岩を大破させるほどではないが、穴を貫通させることが出来た。
「良い調子なの。第一段階はクリアなの」
「なんとか出来ました」
「レンレン、頑張ったの」
シャノンさんは俺を見て笑顔を向けるが、その後、ナミリアさんを見て顔をしかめた。
「悔しいけど、無駄乳の出番なの。とっても悔しいの」
「あらあら、やっと私の出番ね」
シャノンさんとは対照的に、ナミリアさんはニッコニコだ。
この2日間、修行へのアドバイスをくれるのはシャノンさんだけで、ナミリアは俺を応援するだけだった。
その応援もめげそうになる俺を励ますだけではなく、肉体的にきわどい応援もあった。
そのナミリアさんがやる気満々で言い出してきた。
「さあ、始めましょ。まずは付与魔法をLV3まで上げて」
LV2が1万、LV3が10万の合わせて11万MP。
これで魔蔵庫の残り魔力は10万を切った。
「付与魔法の修行は厳しいけど、ついて来てね」
「はい!」
無属性魔法でも限界ギリギリの修行だった。
努力家のナミリアさんのいう「厳しい」に背筋が冷たくなる。
だが、それでも、やるしかない。
俺が心を奮い立たせると、ナミリアさんの付与魔法講座が始まった。
「付与魔法は他の属性魔法と違う。それが厳しい理由ね」
「普通の魔法は魔力を火や水など他の物に変換させる」
「それに対して、付与魔法は魔力を他者に作用させるもの。相手にどれだけ届けられるかで強さが決まるのよ――」
続く彼女の説明で分かったのだが。
――LV1の対象は味方、人間。相手がどれだけ受け入れるかによって、効果が上がる。だから、知らない人よりも信頼してくれる仲間の方が効果が大きい。
――LV2の対象は敵、モンスター。拒もうとする相手のレジスト値を越える必要がある。
――そして、LV3の対象はスキル。そのスキルをどれだけ理解しているかかっている。
「レントちゃんの場合は、LV1の【魔力上昇】よりもLV3の【スキル強化】の方が効果的よ」
「分かりました」
「レントちゃんはこの2日間で無属性魔法に慣れてきた。だから、このタイミングで修行を始めるのよ」
だから、最初は無属性魔法の修行を優先させたのか。
「まずはシャノンちゃんの無空弾に挑戦よ。それで慣れたら自分の無空弾ね」
「はい」
「私も協力するから、レンレンも頑張るの」
「お願いします」
「じゃあ、始めましょ」
「始めるの」
シャノンさんが杖を構える。
魔力を流すと、杖の先端が光り輝く。
「あそこに向かって付与魔法を飛ばすわよ。まずはお手本ね」
ナミリアさんが付与魔法を使用すると、シャノンさんの杖の光が大きくなった。
「まあ、こんな感じよ」
「凄いですね」
「さっきも言ったけど、使用するスキルが決まってるなら、相手の魔力を強化するよりスキル自体を強化した方が効果が大きくなるわ」
今回の試練では『無空弾』を使うことが決まっている。だから、スキル強化なのか。
「次はレントちゃんの番ね。構えてみて、まずは構えるだけでいいわ」
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『魔の試練(2)』
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