第173話 レントの新魔法(7)
「問題はそのスキルの値段次第なの。もし、それが買えれば、レンレンの悩みは解決なの」
どうなんだろ?
「買えなかったら、他の方法を考えるの」
「買えるといいわね」
買えるかどうか。
こんなときは――俺が念話で話しかけると。
「はじめまして~。マスターのサポート妖精のエムピーです~。魔力運用ならお任せください~」
エムピーがみんなの前に姿を現した。
宙に浮かぶ彼女に三人が驚く
「リーダーから聞いてたの。ホントだったの。カワイイの」
シャノンさんは手を伸ばし、エムピーの頭を撫でる。
「ちっちゃくて、可愛いわね」
ナミリアさんはニッコリ笑顔。
「そうなのだ。コイツがサポート妖精なのだ」
一人だけエムピーを知っていたエルティアが自慢げに胸を張る。
口の周りはチョコでベタベタ。まるで子どもだ。
「シャノンさんが言ってるスキルは分かる?」
「もちろんです~。シャノンさんも債務者なので、すべては
「今の魔力量で買える?」
「買えます~。それが最適プランです~」
「さすがはシャノンちゃんね。これだけの情報から正解にたどり着けるなんて」
エムピーの言葉にホッと胸をなで下ろす。
それとともに、シャノンさんの魔法知識に感謝する。
「シャノンさん、教えてください」
「分かったの。火属性はLV3なので、まずは他の属性魔法――風水土聖闇をレベル2に上げるの」
「分かりました」
言われた通り、5つのスキルのレベルを上げる。
ひとつ1万。合わせて5万。残りは70万ちょっと。
「新しい魔法スキルは買えるようになってるの?」
「確認しますね」
リストを順番にチェックしていき――。
「あっ! 無属性魔法ってのが買えるようになってます」
「やっぱりなの。無属性魔法は火風水土聖闇――6つの属性魔法がLV2になると使えるようになるの」
無属性魔法――聞いたことがない魔法だ。
「よく知ってましたね」
「うんなの。私は使えるの」
「えー、ホントッ⁉」
ナミリアさんが驚きの声を上がる。
「存在は知っていたけど、シャノンちゃんが使えるなんてビックリよ。やっぱり、凄いわね」
「そんなに凄いことなんですか?」
「ええ。人によってそれぞれ得意な属性と苦手な属性があるのよ」
「ええ、それは知ってます」
たとえば、ミサは火と風は得意だったが、水と土は苦手だった。
その意味でも、どの属性も簡単に買える俺の【スキル購入】は反則なのだ。
「全属性を鍛えるなんて、普通は考えないわよ。苦手な属性を鍛えるくらいなら、得意属性を鍛える方が良いもの」
満遍なく育てても、器用貧乏になるだけ。
それなら、得意属性に特化した方が良い。
それが常識だ。
「苦手な属性っていうけど、それはその属性の理解が足りないだけなの。術理をちゃんと理解すれば良いだけなの」
「って軽く言ってるけど、シャノンちゃんだけだからね。そんなことできるの」
ナミリアさんが呆れ顔で告げる。
まあ、そうだよな。
そんなに簡単にできるなら、誰でもやっている。
「お手本を見せるの」
シャノンさんが近くの木に向かって杖を構える。
「無空弾」
彼女が唱えると杖の先から、拳大の白い球が飛んでいき――木にぶつかる。
木には小さな傷ができただけだ。
「……」
「魔力の弾を飛ばすの――これが無属性魔法なの」
「この程度なんですか?」
シャノンさんがわざわざ勧めてくれた無属性魔法。
強力な魔法だと期待していただけに、拍子抜けだ。
「もう一度やってみるの」
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『レントの新魔法(8)』
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