第171話 レントの新魔法(5)


「今の魔力はどれくらい貯まっているの?」

「そうですね――」


 現在、魔蔵庫に貯まっている魔力は750,000MP。

 1日で増える魔力量は60,000MP(内訳は以下の通り)。


 自然回復による増加が55,000MP。

 リンカとラーシェスからの利息が1日数百MP。

 『断空の剣』からの取立が1日1,000MP。

 【魔蔵庫貸与】の利息収入が1日3,000MP。


 リンカ・ラーシェスと【魔蔵庫貸与】からの利息はこれから増えていく。

 一方、『断空の剣』からの収入は奴らが死ぬまでは変わらない。

 奴らはそれまでずっと利息を払い続ける。


「考えられない魔力量ね」

「1日で6万も増えるの」


 二人とも魔力量は2万程度。

 ズルしているようなものだ。


「でも、それがレントちゃんのギフトだし、その分苦労してきたんだから」

「そうなの。話は聞いたの。レンレンは頑張ったの」

「ありがとうございます」


 二人の言葉で五年間が報われた気がして、自然と笑みがこぼれる。


「レンレンが買えるスキルの値段を教えるの」

「そうですね。こんな感じです」


 【魔力操作】はLV2が5万、LV3が50万。

 他の属性魔法と回復・付与魔法はLV2が1万、LV3が10万。


「これくらいが今、買えそうなスキルです」

「レベル4スキルはいくらなの?」

「どれも5千万以上です」

「それはちょっと遠いわね」

「さすがに、レベル4は甘くないの」


 レベル4スキルはAランク冒険者がひとつもっているかどうかだ。

 中には複数持っているロジャーさんみたいな例外もいるけど。

 そう考えると高いのも納得だ。


 現在、得られる1日6万ゴルだと、レベル4スキルを購入するのに2年以上かかる。

 【魔蔵庫貸与】が広まれば、利息収入は桁違いに増えるけど、それまでは待っていられない。

 早くフラニス廟の試練をクリアして、次に進みたい。


「なあ、レント」

「なんですか?」


 エルティアが目をキラキラとさせて尋ねてきた。

 ちょうどアイスを食べ終わったところだ。


「精霊魔法は買えないのか?」

「買えることは買えるんですけど……」

「精霊魔法だ! 精霊魔法は最強だぞ!」

「これを見てください。ちなみに俺の魔力は65万MPです」


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 【精霊魔法LV1】5,000,000MP


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 購入できるのは2ヶ月以上先だ。

 これでエルティアも納得してくれる――そう思ったのだが。


「よし、精霊魔法だ!」

「いや、だから、魔力が足りないんです」

「なんだと!? だって、レントは65万あるんだろ?」

「ええ、そうですけど……」

「精霊魔法は50万。買えるじゃないか!」

「…………」

「よく見なさい。精霊魔法は500万よ」

「なんだとっ!?」


 ナミリアさんの突っ込みに、エルティアは信じられないといった様子で、指を折り曲げながらゼロを数えていく。


「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……」


 右手の親指から始まり、順番に進み、小指を折り曲げた。

 「万」まで数え、グーのかたちになったところでエルティアが固まった。


「…………」

「…………」

「…………」


 えーと、もしかして……。

 いや、まさか……。

 さすがにそれはないだろう……。


 そんな中、シャノンさんがエルティアの左手を掴む。

 そして、左手の親指を掴み、折り曲げる。


「10万」


 次いで、人差し指も。


「100万」


 エルティアは口をポカンと開け、両眼はそれ以上に大きく開き、雷に打たれたように全身を震わせる。


「なっ、なんだ……そんな方法が、あったのか」


 まさかだった。

 本当に、彼女をギルマスに任命したの誰だよ!


「わかったかしら?」


 ナミリアさんが「ふぅ」と息を吐き、呆れた視線を向ける。


「安心しろ。私でも、500万の方が75万よりちょっと多いことくらいは知ってるぞ」

「うんうん。エラいの。かしこいの」


 シャノンさんに雑に褒められ、エルティアは胸を張る。


「ということで、どのスキルを購入するか決めるの」







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『レントの新魔法(6)』


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