第169話 レントの新魔法(3)


 ――というわけで翌日。


「シャノンの魔法講座なの」

「お姉さんがいいこと教えてあげる」

「我が叡智をそなたに授けよう。さあ、頭を撫でるのだ」


 シャノンさんには右腕をガッシリと掴まれ。

 ナミリアさんに後ろから抱きつかれ。


「なんでコイツがいるの。聞いてないの」

「えー、つれないこと言わないでよ」


 シャノンさんにジト目を向けられたナミリアさんが口を尖らせる。


「シャノンちゃんも一緒に可愛がってあげるからね」


 ナミリアさんは俺だけでなく、シャノンさんも一緒にギュッと抱く。

 より密着することになり、柔らかいものに押しつぶされ、息が出来なくなる。


「むう、離すの。その無駄な脂肪どけるの」


 シャノンさんは自分のとは対極的なナミリアさんの大きな胸に親のかたきのような鋭い視線を向ける。

 拘束から逃れようと一生懸命にもがくが、ナミリアさんの方が力が強く、なかなか逃れられない。

 そのせいで俺は二人に揉みくちゃにされる。

 気持ちいいんだけど、恥ずかしくて、どうしたら良いか分からず、修行前から精神がゴリゴリと削られていく。


「シャノンちゃんは可愛いわね」


 ナミリアさんにはシャノンさんのことを伝えそびれたけど、むしろ、シャノンさんがいることに喜んでいる。

 小動物を可愛がる調子で頭を撫でて、鬱陶しそうなシャノンさんに振り払われたところだ。


「むうなの」


 一方、ほっぺを膨らませるシャノンさんだが、本当に怒っているわけではなさそう。

 彼女が敵意を向けているのは、ナミリアさんの「ばいんばいん」だけのようだ。


「レント、手がおろそかになっておるぞ」


 俺たちのイチャイチャにへそを曲げたようで、トゲのある言葉だ。

 そう、この場にいる最後の一人――ポンコツギルマスのエルティア。

 どこから聞きつけたのか、今回の件に乱入してきたのだ。


 なぜかナデナデを要求してきて、撫でてあげるとご機嫌になる。

 いや、ホントにギルマス?

 うーん、この人の評価がドンドン下がっていく。


「レントちゃん、バカは放って、お姉さんとイイことしましょ」

「ふふふ。私のことをバカだと言ったな。知っているぞ。お前は私の同類だとな」

「あら、一緒にしないでもらえないかしら」

「乳デカ女はバカだと決まってるのだ! だから、ナミリアは私の仲間なのだ!」

「違うの。エルティアは私の仲間なの。対ムダ乳同盟なの」

「なっ、一緒にするな、小賢し娘よ」


 エルティアもエルフ体型で胸はスッキリしている。


「えーと、ナミリアさんはエルティアのことが嫌いなんですか?」

「別に嫌いじゃないわ。ただ、バカなのに魔法に関しては天才なのが納得いかないだけよ」


 天然な天才肌ってことかな?


「そうなんですか?」

「うんなの。エルティアはおバカワイイし、魔法も一級品なの」

「ふはは、私は天才だからな」

「そういうところが、腹立つのよ」

「エルティアさんはナミリアさんのことが好きみたいですね」

「ああ、バカ仲間なのだ。あの乳がそれを証明している」


 どうやら、エルティアは「巨乳はバカ」説派らしい、やっぱりポンコツだ。


「シャノンさんはエルティアさんのことが好きみたいですね」

「うんなの。逆に、ナミリアは許せないの」


 シャノンさんはそこを睨みつける。


「あら、私はシャノンちゃん好きよ。ちっちゃくってカワイイじゃない」

「むうなの」

「私はコイツは嫌いだ。いつも小難しいことばかり言うからな」


 ようやく三人の人間関係が把握できた。

 ナミリアさんはシャノンさんが好きで、エルティアが嫌い。

 エルティアはナミリアさんが好きで、シャノンさんが嫌い。

 シャノンさんはエルティアさんが好きで、ナミリアさんが嫌い。


 まあ、本気で嫌っているわけでないようだが。

 なんだ、この三すくみ状態……。


 呆れる俺を放っておいて、三人は言い合いを続ける。


 うーん…………。

 協力してくれるのはありがたいんだけど、いつ始まるんだろ…………。







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『レントの新魔法(4)』


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