第166話 フラニスの試練(2)


 ――斬ッ!


 赤い壁に大きな亀裂が入る。

 それから、壁は崩れ、跡形もなく消滅した。


「やりました!」

「さすがだね」

「リンカ、凄いっ!」


 リンカの【壱之太刀】発動状態での【弐之太刀】はBランクパーティーで挑むべきハイオークを一撃で倒せる。

 攻撃力だけをとれば、彼女はAランクかそれ以上の力がある。

 これで壁が壊れなかったら、今の俺たちでは到底クリア不可能だったが、そこまでは要求されていないようだ。


 赤壁が消え、その先に現れたのは青い壁だった。


「其方は武の力を示した。次は、魔の力を示せ」


 さっきと同じ声が告げる。


「今度は魔法で壁を壊せってことだろうけど……」


 三人で顔を見合わせる。


「ねえ、レント、ボクのスキルって物理攻撃なの、魔法攻撃なの?」

「多分、物理攻撃だと思うけど、試してみる?」

「うん」


 ラーシェスは【魂魄斬裂ソウル・リーパー・ディセクション】で試みるが、やっぱり壁には傷ひとつない。


「うーん。ダメか。ボクはやっぱり、足手まといかな……」

「いや、これはラーシェスの試練だ。きっと、出番があるはず」

「そうですよ。ラーシェスにはラーシェスの良いところがあるんです!」

「うん。出来ないことを悩んでもしょうがないか。二人とも、ありがと」


 リンカは魔法を使えないし、ラーシェスもダメだった。

 ここは俺の出番なのだが――。


「とりあえず、ダメ元で試してみるよ」


 俺は壁に向かって魔法を放つ。


「――ファイアボール」

「――ファイアボール」

「――ファイアボール」

「――ファイアボール」

「――ファイアボール」


 だが、壁には傷ひとつつかない。

 続いて、他の属性魔法も試してみたが、同じ結果に終わった。


「やっぱり、ダメだな」


 俺が使えるのはレベル1の魔法のみ。

 ハイオークにすらダメージを与えられない。

 どうするか――。


 ウチのパーティーの弱点が露呈した。

 俺たちはまともな魔法攻撃を持ち合わせていない。

 今までは二人の圧倒的な物理攻撃力でなんとかなった。

 が。

 モンスターの中には物理攻撃が効かないヤツもいる。

 そのうちなんとかしなければ、と思っていたが――。


「魔法スキルを買うよ」


 【無限の魔蔵庫】の魔力運用LV3の【スキル購入】。

 魔力でスキルを購入出来る。

 俺が購入するのは――【火魔法LV2】と【火魔法LV3】だ。

 本当はLv4まで上げたいのだが、魔力が足りない。

 これで上手くいけば良いのだが……。


「――ファイアトルネード」


 【火魔法LV3】の火魔法。

 巨大な火炎の竜巻が壁を襲う。

 が。

 壁に吸い込まれるようにして、竜巻は消え去る。


「――ファイアトルネード」

「――ファイアトルネード」

「――ファイアトルネード」


 消費魔力はファイアボールとは比べものにならないが、魔蔵庫には大量の魔力が貯蔵されている。

 いくらでも打ち続けられるが――。


「ダメだな……」


 まったく手応えがない。

 これ以上は時間と魔力の無駄だ。


「多分、一発の強さが求められるんだ」


 いわゆるレジスト値。

 ハイオーク相手にファイアボール連発が効かなかったように、一定の強さがないと、壁にはダメージが通らないのだ。

 すなわち、Lv3の魔法ではリンカ並みの威力が出せない。

 これは対策を練る必要があるな――そう思ったとき。


「魔の力は不十分。出直すがよい」


 次の瞬間、俺たちは光に包まれた――。




「おう、お前たち大丈夫か?」

「怪我は」「なさそう」

「心配したわよ」

「レンレン、無事、良かった」


 どうやら、廟の外に追い出されたようだ。

 『双頭の銀狼』の面々に心配そうに声をかけられた。


「ええ、大丈夫です。危険があるわけじゃなかったです」


 彼らに廟での試練について説明する――。


「なら、レントに」「任せる」

「はい、対策を練ってから、再度挑戦してみたいと思います」


 今日はここまで。

 俺たちはフラニス廟を後にして、街に戻った。







   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『レントの魔法修行(1)』


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