第163話 ニーラクピルコ森
シャノンさんの話によると、ニーラクピルコの森に今まで存在しなかった
モンスターの気配や不穏な空気は感じられなかったが、念のために魔法使いであるセリカさんが結界魔法を張り、斥候職のローリーさんと二人で警戒にあたっているそうだ。
街から歩いて一時間ほど。危険なモンスターは出ないので、森の中を会話しながら歩いて行く。
リンカとラーシェスは双子と話す機会が欲しかったようで、同じ近接戦闘職としてのアドバイスを受けている。
一方の俺はというと――。
「ねえねえ、レンレンの話が聞きたいの」
腕にしがみついたシャノンさんに話をせがまれていた。
おっとりとした口調だけど、グイグイと迫ってくる。
シャノンさんとはガイとの決闘直後に少し顔を合わせたのが最後だ。
そのときに、ギフトが【無限の魔蔵庫】に進化したことは簡単に伝えてある。
「その後、ガイたちとは――」
奴らとの結末を説明する。
「あー、やっぱりなの。いつか、やらかすとは思ってたの。自業自得なの」
昔から彼女はガイたち三人を嫌っていたな。
今も、ざまぁみろという顔だ。
「でも、よかったの。これでレンレンは好きに生きられるの」
「そうですね。解放された気分です」
「しかも、二人のカワイイ女の子と一緒なの。レンレンはモテモテなの」
リンカとラーシェスとはそういう関係ではないのだけど……。
「私もレンレンとずっと一緒にいたいなの」
「いや、そういうわけにも……」
俺の腕を掴む手に力が入る。
身体も密着し、歩きづらい。
俺は誤魔化すように話題を変える。
「他のSSSギフトの持ち主を探しているんですけど、まったく情報がなくいんですよね。シャノンさんは心当たりありますか?」
「うーん……」
なにかを思い出そうと、シャノンさんは頭を巡らす。
「関係ないかもしれないの」
「構いませんよ。どんなちょっとしたことでもいいので」
「『狩りの街』を牛耳っている男が不思議なギフトを持っているって聞いたの」
「『狩りの街』ですか……」
『狩りの街』――冒険者が集まる特殊な街だ。
有名ではあるが、俺は行ったことがない。
「この一件が終わったら、行ってみます」
「違ったら、ごめんなの」
「気にしませんよ」
「あの町は一癖も二癖もあるの。レンレンなら大丈夫だと思うけど、気をつけるの」
「ありがとうございます」
「そうそう。さっきのギルドでなにがあったの? トラブルじゃないとは思ったの」
「それはですね――」
俺が【魔蔵庫貸与】の説明会について説明すると――。
「凄いなの。さすがはレンレンなの。私も借りたいの」
「もちろん、構いませんよ」
俺が頷くとエムピーがポンと姿を現す。
「わ、カワイイの」
「お初にお目にかかります~。マスターのサポート妖精をしてるエムピーと申します~。このたびは【魔蔵庫貸与】をご利用いただきありがとうございます~」
「ほんとにいたの。初めて見るの。抱っこしていいの?」
「マスター?」
「うん、いいよ」
「やたーなの」
シャノンさんは俺の腕から離れ、胸の中でぎゅーっとエムピーを抱きしめ、頬ずりする。
「えへへなの。連れて帰りたいの」
「残念ながら、私はマスターのものですので」
「だよねなの」
ひと通りエムピーを堪能した後で、シャノンさんはエムピーを手放す。
「では、【魔蔵庫貸与】の手続きを致しますね~。どれくらい借りますか?」
「マックスでお願いするの」
「承知しました~。最初はシルバーランクなので、最大魔力量の2倍まで借りられます~。利息は2割。3日以内に返済してくださいね~」
「おっけーなの」
シャノンさんの最大魔力は約1,500MP。
貸し出しは限界の3,000MP
俺には利息で600MPが入る計算だ。
三日以内に貸し出しの2割。
この街の多くの冒険者が借りてくれたし、いったいどれくらいの利息が入ってくるのか、今から楽しみだ。
「ご利用ありがとうございました~」
エムピーはほくほく顔だ。
いつみても、魔力を貸すときのエムピーは本当に生き生きしている。
「じゃあ、ちょっと試してくるの」
「えっ」
俺が止める間もなく、シャノンさんは森の狭い道から離れ、森の中へと突っ込んでいった――。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『フラニス廟』
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