第9章 継がれる過去

第162話 シャノンの報告

【前書き】


第9章スタートです!


   ◇◆◇◆◇◆◇


 ――冒険者ギルドで【魔蔵庫貸与】の説明会がひと段落した頃。


「なに? なにが起こったの?」


 ギルドに入ってきて、不思議そうに尋ねたのは俺の知る女性。

 『双頭の銀狼』の魔術師シャノンさんだ。


「シャノン」「お帰り」

「あっ、リーダー。これなんなの?」


 彼女は俺たちに気がつき、こちらに向かってくる。

 彼女は他の二人と一緒に、エリクサー素材を集めに行っていた。

 帰還したのは彼女一人だけのようだ。

 それが引っかかるが……。


「あっ、レンレン、おひさー」

「お久しぶりです」

「それより」「報告は?」

「あっ、そうそう。大変なの」


 その態度から、二人はなにかを察したようだ。

 彼女は小声で伝える。


「ニーラクピルコ森林で異変が起こったの。ローリーとセリカは念のために残っているの」

「そうか」「丁度よかった」

「ギルマスに」「報告しよう」

「そうだの」


 いったい、なにが起こったのだろうか……疑問に思っている俺に、姿を消したままのエムピーが念話で呼びかけてきた。


『マスターマスター』

『どうしたの?』

『この話、マスターも聞いておいた方がイイですよ』

『俺たちに関係ある?』

『大アリです~』

『わかった』


「皆さん、よければ俺も同席させてもらえませんか」

「それは君の」「ギフトに関係が?」

「俺かどうかは分かりませんが、俺たちに関係ある話だと思います」


 二人の視線が俺の肩に注がれる。

 エムピーが乗っているその肩に。

 彼らには見えないハズなんだが。


「わかった。レント君も」「一緒においで」

「ありがとうございます」


 了承を得たところで、シャノンさんが口を挟む。


「え~、なになに~、面白い話なの? というか、令嬢の件はどうなったの?」

「わたくしなら全快しましたわ。レントのおかげです」


 シャノンさんは今さら気がついたようで、ラーシェスに視線を向ける。


「すっごい元気なの。連絡通りなの」


 シャノンさんはラーシェスの身体をペチペチと触る。

 背が低い彼女がぴょんぴょん跳びはねる様は、小動物のようで和まされる。

 ご覧の通り、シャノンさんは人なつっこく、距離感が近い。

 俺も以前、よく触られた。


 白いローブに埋もれそうな彼女が褐色の顔を俺に向ける。


「聞いてはいたけど、レンレン凄いの」

「はい。彼は命の恩人です」


 シャノンさんが今度は俺の両手を掴み、ブンブンと振り回す。


「シャノン」「話はそれくらい」

「あ、そうだったの。報告なの。レンレン、後でゆっくり聞かせてなの」

「レント君」「行こう」


   ◇◆◇◆◇◆◇


「なるほど、よし、そこに行こう」


 ギルドマスターの執務室には、双頭の三人、俺、エルティア、プレスティトの六人が揃い、ちょうど報告を終えたところだ。

 今すぐにでも飛び出そうと立ち上がったのは、ギルドマスターでエルフのエルティア。

 眼鏡をかけて理知的な雰囲気を醸し出しているが、実際はただのポンコツだ。

 苦笑いしている双頭の三人も知っているのだろう。


 その彼女の頭をスパコーンと叩いたのが、彼女の娘でありハーフエルフのプレスティトだ。

 彼女こそが「スライム以下の知性」と形容する母に代わって、ギルドの実質的な支配者だ。


「はいはい、どうせ、分かってないんだから、ちゃんと座ってましょうね」

「なっ、なんだ、その言いようは!」

「じゃあ、理解してるんですか?」

「もちろんだ。森に謎の物体が現れた。だから、私が調査に行く」

「おお、すごいすごい、調査なんて難しい言葉を知ってるんですね。エライエライ」

「そうだろ、もっと褒めてもいいんだぞ」


 プレスティトに頭を雑に撫でられて、エルティアはご満悦のようだが、軽くあしらわれているだけだと気づかないのは本人だけだ。


「それで、どうやって調べるんですか?」

「簡単だ。敵がいたらやっつける」


 プレスティトは大きくをため息をつく。


「ギルマスがこんな感じですので、皆様に調査を依頼します」

「なっ、こんな感じとはなんだ!」

「あー、はいはい。それでは、報告は私の方までよろしくお願いします」

「わかった」「行ってくる」

「行ってくるの」


 双頭の三人は慣れた態度で、親子漫才をスルーして立ち上がる。

 俺も彼らに従って、部屋を後にした。


「じゃあ、みんなで」「森に行こう」

「出発なの」

「シャノンに案内は」「任せた」

「任せてなの」


 双頭の三人と俺たち三人の計六人は森に向けて出発した。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『ニーラクピルコ森』


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