第156話 SS ロシアンたこ焼き(3)
「いっせいのせで、激辛たこ焼きを食べたと思う人を指差してくださ~い」
よし、決めた――。
「それでは、いっせいのせ~」
エムピーの言葉でみんな指を指すが――。
「え?」
みんなの声が重なる。
なぜなら、6人全員が誰かを指差していたからだ。
「誰ですか~、嘘ついてるのは~?」
激辛を食べた誰かがしれっと嘘をついている。
そんなことをしても、意味ないはずなのだが……。
「まあ、いいです。すぐにわかりますから~」
皿を裏返せば、犯人はバレる。
だが、エムピーはそうせず、話を続ける。
「それにしても、意外でした~」
誰が誰を指したかだが――。
エムピー以外の5人はエムピーを指し。
エムピーは俺を指していた。
「なんで、みんな私だと思ったんですか?」
「エムピーが一番演技が上手いと思ったから」
まず、リンカとアンガーは外して良いだろう。
このペアは揃って、演技ができてなかった。
問題は残り3人。イータ、エムピー、ラーシェスだ。
3人の中で一番演技力が高いのはエムピーだ。
他の二人にエムピー並みの演技はできないだろう。
俺がエムピーの問いに答えると。
「腹黒エムピーに決まってるニャ」
「エムピーさんはいつもなに考えてるかわからないです」
「俺っちはエムピーに食べさせたかったからっす」
「ボクはカンで選んだよ」
他のみんなも口々に理由を述べる。
「む~、酷いです~。でも、残念でした~。私じゃないです~」
「え~~」
「皆さん、激辛たこ焼きどうぞです~」
この瞬間、5人の罰ゲームが決まった。
いや、誰かがアタりを引いたはずなので、四人か。
「ちなみに俺も違うよ」
「え!? 私は絶対にマスターだと思ってました」
「なんで?」
「他の四人は演技が雑だったり、反応が分かりやす過ぎたからです~」
奇しくもエムピーは俺と同じ理由で選んだようだ。
「それにしても誰ですか~」
エムピーが順番に見ていくが、全員首を横に振るだけだ。
「もう、仕方ないです~」
エムピーが皿をひっくり返す。
皿の裏には○がひとつ。
アタリの場所に書かれている。
「この場所は~」
みんなが集中する中、エムピーが挙げた名は――。
「ラーシェスさんです~」
「えっ!? ボク!?」
「まだしらばっくれるですか~?」
「いや、しらばっくれるって、普通に美味しかったよ?」
ラーシェスは不思議そうに首をかしげる。
とてもとぼけてるようには見えない。
もしかして……。
「ねえ、これ食べてみて」
「うん」
ラーシェスに罰ゲーム用の激辛たこ焼きを渡す。
彼女はそれをパクリ。
「うん。美味しい。全部食べていい?」
「あっ、ああ……」
みんなが呆れる中、ラーシェスはすべて平らげてしまう。
「辛いの平気なの?」
「これ、辛いの?」
ラーシェスはキョトンと首をかしげる。
「辛いってよく分かんないんだよね。今日は激辛を楽しみにしてたんだけど……」
その言葉にみんな黙り込む。
まさか、ラーシェスにそんな特性があったとは……。
このゲームに激辛耐性持ちは反則だろ……。
そんなこんなで大盛り上がりのはずのイベントは尻すぼみのまま終わりを迎えた――。
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【後書き】
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