第151話 【魔蔵庫貸与】説明会(1)
――一週間後。
冒険者ギルド内。普段は酒場として使われている場所。
テーブルが撤去され、椅子が並べられている。
冒険者たちはギュウギュウに詰められ、それでも収まりきれずに後ろに立ち並ぶ者も多い。
聞いたところによると、この街で活動している冒険者のうち八割以上が参加しているらしい。
ざわついていたフロアは、重鎮の面々の登場によって静かになる。
最初に口を開いたのはギルドマスターであるエルティアだ。
「さて、今日はよく集まってくれた。私からはひと言だけ、レントは信用できる冒険者だ。ギルドマスターである私が保証しよう。進行はギルド職員であるプレスティトに任せる」
彼女は簡単な挨拶を終えると、長い金髪をなびかせ、プレスティトに場を譲った。
今日も眼鏡をかけて理知的に振る舞っているが、俺には分かる。
挨拶がこれだけなのは、これ以上のセリフを覚えられないからだ。
一部の冒険者は本性を知っているようで、ニヤニヤ笑みを浮かべる。
「では、ここからは私が進行を務めさせていただきます」
幼女体型のプレスティトが頭を下げると、「プレスティトちゃ~ん」「今日もカワイイ~」などの声が飛ぶ。
どれも好意的な声だったが、そんな声も彼女の次の言葉で、シーンと収まる。
「まずは、領主であるウィラード伯爵閣下から、挨拶の言葉を
貴族であり、この地を治める伯爵の登場に、エルティアのときよりも、一層静かになった。
一部の高ランクを除いて、ほとんどの冒険者にとって、貴族は雲の上の存在だ。
慌ててかしこまる者、カチコチに固まる者も多かった。
伯爵が厳かに話し始める。
「冒険者の皆々よ。普段から我が領のため、命を賭してモンスターを戦ってくれることを感謝する。ギルドマスターからもあったように、レントは我が娘の命を救ってくれた。伯爵家として、彼を、また、彼の試みを全面的に支持するつもりだ」
威厳を保ちながらも、冒険者に敬意を払っていることが伝わってくる。
場所によっては領主とギルドの仲が悪かったりするが、この街では両者の関係は良好だ。みんなに慕われているラーシェスの影響も大きいかもしれない。
そんな彼女が次の番だ。
「続いて、伯爵令嬢であり、先日冒険者となったラーシェス嬢からもお言葉を」
「ごきげんよう。わたくしのことは皆様もご存じでしょう。父の言葉は間違いありません。レントはわたくしの命を救ってくださり、それだけでなく、パーティーメンバーとしてわたくしを助けてくれております。わたくしは彼を信じています。皆も、同じように思ってもらえれば嬉しいです」
プレスティトのときとは別の種類、歓声上がる。
やはり、ラーシェス人気はスゴい。
「そして、『双頭の銀狼』のお二人からも」
「レントは」「信用できる」
「それ以上の」「言葉は不要」
最後にデストラさんとシニストラさん。
必要最小限の言葉が、逆に信憑性を高めてくれる。
ギルマスから始まり、二人で終わった挨拶。
彼らのバックアップの効果はもの凄かった。
普段は好き勝手している冒険者が、真剣な顔で話を聞く姿勢になっている。
これならやりやすいな。
「では、続いて本題である【魔蔵庫貸与】について、レントさんから説明をおねがいします」
「ご紹介にあずかりましたレントです。ご存じの方もいるかと思いますが、以前は『断空の剣』に所属していましたが、追放され、今はラーシェス、リンカの二人とともに『
会場がどよめく。
ラーシェスはともかく、この街に来たばかりの俺とリンカは顔を知られていない。
SSSギフトなんて眉唾ものだ。
さっきのみんなの言葉がなければ、信じてもらえないだろう。
「今日は、実例を交えながら、俺のスキル【魔蔵庫貸与】について説明します――」
デストラさんに協力してもらい、実際に貸与と返済について説明していく。
「というように、信用ランクによって、借りられる魔力には上限があります。ただ、それ以外に特別な方法がひとつあります。それは、緊急貸与です。では、デストラさんよろしくお願いします」
「ああ」
デストラさんがみんなに見えるようにステータスを表示する。
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MP:1,125/1,125
【貸与魔蔵庫】
信用ランク:シルバー
魔力ストック:2250
魔力残高:-2,700
返済期限:
・2,700:3日後9:43
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
現在、魔力ストックが2250。魔力残高は-2,700。
これ以上は借りられない状態だ。
数字を見せて、それを聴衆に説明する。
冒険者の皆が数字に強いわけではないが、それでも3分の2くらいは理解しているようだ。
「ここでデストラさんにMP100を緊急貸与してもらいます」
そして、デストラさんが緊急貸与でMPを100借りる。
そうすると――。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『【魔蔵庫貸与】説明会(2)』
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