第150話 下準備(2)
「では、試してみましょう。エルティアさん、ステータスを見せてもらえますか、魔力量だけでいいので」
「ああ、構わんぞ。ステータス、オープン」
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MP:3,197/3,197
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さすがはギルマス。頭はともかく魔力量は並外れている。
Aランクでもこの値は中々いない。
「まずは500MPほど貸してみましょう」
「おう、かかって来い」
別に、取って食おうって訳じゃないのに。
ともあれ、【魔蔵庫貸与】を試す。
昨日、双頭の二人にやったので、やり方は分かっている。
「おっ、なんだコレ!?」
今、彼女の脳内にアナウンスが流れている。
<レントから【魔蔵庫貸与】を受けますか?>
「それを受け入れると意識してください」
「受け入れる……っと」
「では、ステータスを表示してみてください」
「ふむふむ、なんか分からんが変なのが増えてるな」
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【貸与魔蔵庫】
信用ランク:シルバー
魔力ストック:500
魔力残高:-600
返済期限:
・3日後11:18
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「そういうことですね。完全に理解しました」
もちろん、この返事はプレスティト。
エルティアさんは完全にキャパシティオーバーのようで、考えるのを放棄してる顔だ。
「思考停止したバカは放っておきましょう。バカ母、なにか魔法を使って下さい」
「おい、その呼び方っ!」
「いいから早く」
「むっ」
ふくれっ面のエルティアが魔法を発動させる。
『――【
魔力の壁を感じる。
この部屋に結界が張られたようだ。
「魔力が減ってるでしょ?」
「当然だ。魔法を使ったら魔力が減る。さすがにそれくらいは知っている」
エルティアは「どうだ、物知りだろ」と胸を張っているが、そんなこと今日デビューした冒険者だって知っている。
「魔力はいくら残ってる?」
「えーと、精霊結界を使うと魔力が350減るから……」
「どうせ、引き算できないでしょ」
「うむ。繰り上がりとか、繰り下がりとか、難しすぎて諦めたからな」
「はあ。3,197引く350は2,847。ステータス確認して」
「えーと……本当だ!」
「それで、レントさん、次は具体的には?」
「ああ、同じようにイメージするだけでいいんだよ。エルティアさん、魔力を350チャージするって思ってください」
「うん…………ええっ!?」
「魔力が回復してますよね?」
「なんで!? なんで!? なんで!?」
「だから、そういうスキルなんだって」
プレスティトは母に呆れる。
「これスゴくない? スゴくない? スゴくない?」
一方のエルティアさんはものすごい興奮だ。
「ようやくわかったようです。バカな母で本当にすみません」
「よしっ! 採用っ!」
エルティアさんは興奮が収まらないようだ。
「えっ、これでいいんですか?」
「いいんです」
「うん、娘よ、あとは任せた」
こんなに簡単にギルマスの許可が下りるとは思わなかったので拍子抜けだ。
「母はお飾り。判子を押すだけの仕事ですので」
「ああ、実際にこのギルドを回しているのはプレスティトだからな。いや、それにしても、これはスゴいスキルだな。魔法が使い放題ではないか!!」
「ダメですよ。勝手に借りちゃ。借りるときは、私の許可を取ってからだからね」
「え~~~~」
テンションが高かったエルティアさんは、しょぼんと落ち込んでしまう。
「母に好き勝手させたら、間違いなく破産しますからね。では、レントさん、別の部屋で、詳しい話をしましょう」
ほったらかしにして良いのかな、と思うが――。
「バカがいると、話が進みませんので」
辛辣な答えが返ってきた。
その後、別室で詳細を詰めていく。
「一週間後に説明会を開きましょう」
「伯爵とラーシェスさん、そして、母の連名にしましょう」
「双頭のお二人に宣伝していただけるようなので、任せましょう」
「ラーシェスは冒険者から慕われているので、ラーシェスさんからもお願いします」
「後は、張り紙をして、チラシも配りましょうか」
「レントさんの【魔蔵庫貸与】について、いくつか訊きたいことがあるので、それも確認していきましょう」
プレスティトは次々とアイディアを出していく。
いやあ、本当に優秀だ。
優秀な部下がいれば、トップは判子を押すだけでいい、とよく聞く。
ギルマスがアレでも、プレスティトがいれば、ギルドは安泰だ。
それからの一週間はあっという間だった――。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
次回――『【魔蔵庫貸与】説明会(1)』
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