第148話 ゴーレム狩りを終えて

 リンカとラーシェスは自分のステータスを覗き込む。


「えーと……私の魔力は208から261に増えてます!」

「ボクは54から145、それに冒険者ランクもDに上がってるよ!!」

「それはまた」「信じられない」


 二人の報告を聞いて、双子はピクリと眉を動かす。

 俺の驚きも彼らに匹敵する。

 リンカが50、ラーシェスは90。

 あり得ないほどの成長だ。

 これがSSSギフトのシナジー効果か。

 三人でこれだけだ。人数が増えたらどうなることか……。


 そんな話をしているうちに、街に帰還した。


「お二人は明日はどうしますか?」

「さすがの僕たちも」「明日は休むよ」


 顔に出さないが、二人にも疲労があるようだ。


「一日休んで」「魔力を返済する」


 今から魔力を使わなければ、明日のこの時間には完済になる。


「素晴らしい心がけです~。債務者の鑑です~」


 エムピーがうっとりと笑みを浮かべる。

 ほんと、貸し借りの話になると生き生きするね。


「この調子で、どんどん借りて、ガンガン返して下さい~」

「ひとつ」「訊きたい」

「魔力に関することなら、なんでもお答えしますよ~」

「前もって支払いは」「可能?」

「もちろんです~」

「なら、返済が終わっても」「魔力を預けておく」

「承知しました~。そのように設定しておきます~」


 前もっての返済。これはリンカたちにもやってることだ。

 二人の場合、明日の晩に今回の返済が完了した後、次に冒険に出るまでは魔力がムダになる。

 その分を次回借りる分の返済として前もって支払えば、それを回避できる。

 そして、こっちも貸し倒れのリスクを下げられる。

 お互いにとって得になるのだ。

 そのうえ、煩わしい手続きはエムピーが【自動補填オートチャージ】と【自動取立オートレヴィ】で勝手にやってくれる。


「良かったら、夕食を一緒にしませんか?」

「その誘いは」「嬉しいけど」

「すでに先約が」「あるんだ」

「お偉いさんとの」「会食が」

「それなら、しょうがないですね」

「そのとき」「【魔蔵庫貸与】の話」

「伝えて」「おこうか?」

「是非お願いします」

「僕たちができることなら」「いくらでも協力する」

「だから」「なんでも頼って」

「ありがとうございます」


 俺から振ろうと思っていた話だが、二人は察してくれた。

 その心遣いに感謝し、俺は頭を下げる。


 この後、二人と別れ、俺たち三人はギルド酒場で夕食だ。

 食事がひと段落したところで、俺は切り出す。


「この先の話をしよう」

「【魔蔵庫貸与】の話ですよね?」

「しばらくは砂漠で戦力アップって言ってたよね?」

「ああ、二人の言う通りだ。だけど、【魔蔵庫貸与】を習得して話が変わった。これからは魔力を溜めるのを優先したい。だから、【魔蔵庫貸与】を公開して、魔力を集めよう」

「この街でやるの?」

「ああ。メルバに戻ることも考えた。【魔蔵庫貸与】のためには冒険者が多ければ多いほどいい」

「たしかに、そうですね」

「だけど、俺のことをどれだけ信じてもらえるか分からないし、変なヤツに逆恨みされたりするかもしれない」

「そうですね……」


 ガイたちとのやり取りを知っているリンカは複雑な表情を浮かべる。


「その点、この街なら、ラーシェスと伯爵、そして『双頭の銀狼』の信用が使える」

「たしかに、ラーシェスの歓迎ぶりを見ると心配なさそうですね」

「双頭の二人がさっそく、根回ししてくれるようだし、こっちもラーシェスの名前を利用させてもらおう」

「ボクに任せて」

「というわけで準備が整ったら、冒険者みんなに説明会を開く。早ければ数日後かな」

「その間はどうします?」

「ボクはもっと戦いたい。強くなりたい」

「明日は休みにするけど、それまでゴーレム狩りを続けよう。俺たちは休ませてもらえないからね」


 俺の言葉に二人は苦笑い。

 二人とも戦って強くなりたいという意志は間違いない。

 だが、それと同時に内なる獣の渇望があることも間違いない。


「今日くらいはのんびり呑もう」

「うん、もっともっと」

「いいですね」


 俺たちは遅くまで、食事と酒と会話を楽しんだ――。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『下準備(1)』

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