第142話 今後についての話し合い


「さて、ひと段落したところで、話をしようか」


 俺は満足げな二人に尋ねる。


「ラーシェスはなにか話したいことある?」

「二人の過去が知りたいな」

「そうだね――」


 俺とリンカの過去について、ひと通り説明した。


「ヒドい……」


 俺もリンカもパーティーメンバーから裏切られたことを知り、ラーシェスは唇を噛みしめる。


「二人とも、大変だったんだ」

「他人事じゃないよ、ラーシェスの進む道もとても険しい」

「大丈夫だよ。ボクには二人がいるからね。一人じゃない」


 彼女には俺たちと同じ思いはさせたくない。

 それに――。


「他にもSSSギフト――『七罪』を背負った人が間違いなくいる。きっと四人」

「ボクと、レントと、リンカ。7引く3ってことだね」

「ああ。彼らを助けたい」

「反対する理由がないよ」


 彼女の性格からいって、俺がこうしたいと言ったら、それに従ってくれるだろう。

 だが、今の言葉は本音だ。

 彼女も同じ思いだ。


「とはいえ、当てがまったくないんだよね」

「そっか……」

「ああ、ラーシェスと出会えたのもたまたまだ。デストラさんたちが声をかけてくれなかったら、出会えなかった」

「うん」

「下手にあちこち行っても、入れ違いになる。それよりも一カ所に留まって情報を集める方が良い」


 俺の言葉に二人とも頷く。


「なので、どこを拠点にするか。メルバに戻るか、ここにいるか。どちらにしろ、戦い続けるのが前提だ」

「そうだね……」「はい」

「メルバなら大迷宮。この街なら二つ候補がある。ボルテンダール墳墓か――」

「ニーラクピルコ森林だね」

「ああ。その通り」

「森林ですか?」

「ああ。今、双頭のメンバーがエリクサーの素材採取に行ってる場所だ」

「あそこは資源が豊富だよ。この街の冒険者のほとんどはあそこが目的」

「そういうこと。この3つのどれがいい?」

「うーん、大迷宮も見てみたいけど……今は強くなりたい」

「私も強い相手がいる場所で。そろそろ【弐之太刀】を使わないと、身体が満足してくれないです」

「ああ、俺もリンカにいっぱい貸さないといけない」


 ザコが倒しているだけでは、SSSギフトは許してくれない。

 リンカの【弐之太刀】の消費魔力は100。

 強敵相手にこれを連発するのが、俺にもリンカにも一番いいだろう。

 それに、ラーシェスの【屍肉喰コープス・カニバル】によるドレインも強敵を相手にするしかない。


 と言うのも――。


 今日のゴーレム討伐数は720。

 一体倒すごとに屍肉喰コープス・カニバルでラーシェスのMPは1増える。

 イータに60必要なので、残りは俺に返済される。

 元々の貸し付け額が1,100だったので、660返済して、残りの債務は340。

 となるはずなのだが、実際のところ、返済量は400で、残りの債務は700。


 なぜかというと、終盤、サンドゴーレムに屍肉喰コープス・カニバルを使っても、吸収できるMPが1になり、使っても魔力が増えなくなったのだ。

 俺のファイアボールがハイオークに効かなかったのと同様、弱すぎるモンスターからはドレインできないのだろう。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


名前:ラーシェス

年齢:15

性別:女


ギフト:【御魂喰いみたまぐい】(SSS)

MP :54/54 WMP(98)


冒険者ランク:E

パーティー:二重逸脱トゥワイス・エクセプショナル


スキル:

屍肉喰コープス・カニバル

 モンスターの死体から魔力を吸収する。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


最大魔量が54に増えたのはいいのだが、明日はイータに260喰わせなければならないのだ。


「どこがいいって言っても、ボクには情報がないからね。大迷宮を見てみたい気持ちもあるけど、レントに任せるよ」

「私もレントの判断に従います」

「そうだね……エムピーの意見は?」

「はいー、魔力運用なら、このエムピーにお任せ下さい!」


 ピザと格闘中で、口元にチーズがついているエムピーが顔を上げる。

 この姿を見て大丈夫かと思うが、サポート妖精としては間違ったことは言わない。

 リンカもラーシェスも俺から魔力を借りている身。

 二人の情報は中央情報機構ユグドラシルを通じて、エムピーには筒抜けだ。


「まず、リンカさん。【壱之太刀】は常時発動で、【弐之太刀】もガンガン使って下さい。今は投資の時期です。魔力のことは気にせず、いや、むしろ、マスターからバリバリ借りちゃって下さい」

「大丈夫なの?」

「はいっ! ゴミクズ――もとい、悪質な債務者には容赦しませんが、優良な債務者にはいい顧客でいてもらわないとです」

「わかったよ。それで、ラーシェスは?」

「ラーシェスさんの場合は、まず【屍肉喰コープス・カニバル】を使いまくって下さい。そうすれば、新しいスキルを覚えます。そうしたら、ラーシェスさんもマスターから魔力借りまくりで、スキル使いまくりです!」

「エムピーの言葉については信じて貰うしかないけど、二人とも、それでいいかな?」

「もちろんです。レントさんを信じてます」

「ボクも信じるよ。レントがいなかったら死んでたからね」

「ありがとう。なら、しばらくは今日と同じ砂漠だ。あそこが一番狩れる。明日はもっと奥まで進もう」

「はい!」「うん」






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『双頭の銀狼からの提案』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る