第2部

第8章 新たな仲間。新たな力。

第123話 再スタート

 お待たせしました第2部スタートです!


【注意】

 第112話『エピローグ』は、元々このお話を第1部で完結させるつもりで書いたものです。

 第2部を続行することになったので、第112話はifストーリーだと思って下さい。


 第2部は第100話『葛藤(下)』の直後、レント視点のカウントダウンから始まります。


 第2部でも、おつき合いよろしくお願いしますm(_ _)m


   ◇◆◇◆◇◆◇


「さあ、カウントダウンだ」


10


――――――――――――――――。


 日付が変わった。

 それと同時に、脳内でいつものアナウンスが流れる。


〈ガイ、ミサ、エルから利息を徴収します!〉

〈対象の魔力不足により徴収量が不足しました!〉


 やはり、間に合わなかったようだ。


〈強制執行を発動します!〉

〈対象のスキル・ギフトを魔力に変換し、返済に割り当てます!〉

〈余剰徴収分は元本返済に回されます!〉

〈以上で、強制執行を完了いたしました!〉


 ヤツらは失った。この五年間で築き上げたものを。

 もう冒険者は廃業だ。

 それだけ失っても、まだ完済にはほど遠い。


 これでやっと、ケリがついた。

 過去とは完全に決別だ。

 もう、ヤツらのことは思い出さない。

 名前を耳にしても、なにも感じない。


 不安そうに見ているリンカを安心させるよう、「大丈夫だよ」と頷いてみせる。

 エムピーは俺を気遣ってか、「マスター、いいこいいこです~」と俺の頭をなでている。


 これで終わりかと思ったが、まだ脳内アナウンスは続いた――。


〈スキル成長条件を満たしました!〉

〈スキル【強制徴収】がレベル1から2に成長しました!〉

〈【自動取立オートレヴィ】が使用可能になりました!〉


「レントさん、どうかしましたか? 大丈夫ですか?」

「ああ、いい知らせだ。新しいスキルを覚えたよ」


 【自動取立オートレヴィ】か、確認してみよう。


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


【強制徴収】

 LV1:貸した魔力を徴収できる。

 LV2:【自動取立オートレヴィ】債務者のMPが設定値以上になったら、自動的に魔力が徴収される(NEW!)


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 【自動補填オートチャージ】に似ているな。

 あっちは自動で貸し出せたんだが、こっちは自動で徴収できる?


「マスター、おめでとうございます~!」

「ああ、これ便利そうだね」

「はい。これでムダなく、効率的に徴収できるです~」


 今までは「一日これだけ」と決めて徴収していた。

 なので、相手のMPが満タン時の自然回復分がムダになっていたのだ。

 このスキルは俺にとっても、相手にとっても得になる。ありがたいスキルだ。


 リンカはよく分かっていなかったが、噛み砕いて説明すると理解してくれた。

 なので、さっそくリンカに許可を得て【自動取立オートレヴィ】を発動させる。【自動補填オートチャージ】も設定値を変える。


 これでリンカは魔力が50%になると同時に、【自動補填オートチャージ】で魔力が70%まで回復。

 魔力が満タンになると同時に、【自動取立オートレヴィ】で10%だけ返済される。


 つまり、リンカの魔力は常に50%以上をキープしつつ、余剰魔力がムダにならなくなったのだ。

 うん、便利だな。

 そう思っていた時、俺はひらめいた。

 そのひらめきに、ゾッとする。


「これ……もしかして…………」


 思わず俺は立ち上がる。


「あっ、マスター、その可能性に気がつきましたか~。さすがです~」


 エムピーがにこやかに告げる。

 だが、俺はそれどころではない。


「これ、悪用できるよね」


 俺は【自動取立オートレヴィ】の恐ろしい使い方を思いついた。

 設定値をゼロにしたら、返済が終わるまで借り手のMPをずっとゼロにしておける。

 そして、もし、強いモンスターと戦闘してる最中に設定値をゼロにしたら……。

 相手は一切のスキルが使えなくなり――。


 【自動取立オートレヴィ】はいくらでも悪用できるスキルだ……。

 あらためて創生神の悪意を感じて震える。


「マスター。ご安心下さい。【自動補填オートチャージ】と一緒で、【自動取立オートレヴィ】も、相手の許可がなければ発動できませんよ」

「…………!」


 エムピーの言葉に、ほっと息を吐く。

 全身が脱力し、椅子に座り込んだ。


 【自動補填オートチャージ】も【自動取立オートレヴィ】もリンカにしか使ったことがない。

 たしかに、発動させるときにリンカに使ってもいいか許可をとっていた。


「まあ、悪質な債務者の場合は、話が別ですけどね~」


 取立の話になると、エムピーは本当に生き生きしてる。


「でも、その考えを思いつくとは、マスターもだいぶ魔力貸しらしくなってきましたね~」


 エムピーはそう言うが、悪用できないと分かり安心した。

 もし、その制限がなかったら、俺はどうしていただろうか――。


 その先は、恐ろしくて考えられなかった。


「大丈夫ですか、レントさん」

「ああ、心配かけたね。もう大丈夫」

「よかったです!」


 ああ、すっかり気が抜けた。

 それはリンカも同じようだ。


「ふわぁ、眠いです」


 可愛いあくびをする。

 普段は早寝早起きなので、もう限界みたいだ。


「もう寝ようか」


 俺は興奮のせいで、眠気は感じない。

 寝つけるかどうか心配だ。


「むむっ、マスター、厄介なヤツが現れるです~」


 急にエムピーが告げる。

 何事かと身構えるが――。


「おっす、なんか面白そうなんで、俺っちも混ぜてくれよ」


 予想に反して、現れたのはちっこい妖精だった。


「俺っちの名前はアンガー。マスターリンカを助けるサポート妖精だぜ」


 エムピーと同じくらいのサイズだが、可愛らしいエムピーとは違い、どこかヤサグレた印象だ。


 口調は乱暴だが、容姿はスラリとした美しい女の子。

 だけど、整った顔立ちが、目つきの悪さで台なしだ。


「おう、レントくん、夜露死苦よろしくな」


 ギロリと睨まれた。鋭い目つきだ。

 だけど、そのサイズで凄まれても、微笑ましいだけだ。


「マスター。アンガーは目つきと態度は最悪ですけど、根はまっすぐなので、許してやってください~」

「おう、エムピー。相変わらずヒラヒラした格好しやがって。サポート妖精なら、ガチっと硬派に決めんかい」

「あと、服装のセンスも最悪です~」

「なんだとぅ」


 確かにお人形さんらしいエムピーとは正反対な格好だ。


 黒い長髪の先端は紫色に染められ。

 白いローブみたいな服を前開きで。

 胸にはサラシを巻いている。


 その格好で、腕を組んで、見上げるようにエムピー睨みつけている。


 ちなみに、服には金色の刺繍で『喧嘩上等』、『天下無双』、『闇我亜あんがあ』『凛華りんか命』などと書かれている。


 よく分かんないけど、これまた、凄い個性的な妖精だな……。


「あのぅ……」


 どこか置いてきぼり感のリンカが尋ねる。


「おっ、俺っちとしたことが失礼しやした。姉御、挨拶が遅くなりました」


 そう言って、アンガーはリンカに向かって、深々と頭を下げる。


「今後は俺っちが全力で姉御のサポートいたしやす。姓はアン、名はガー。未熟者ですが、どうぞコキ使って下さい」


 アンガーってフルネームなんだ……。

 ということはエムピーも? エム・ピー?

 エムピーに視線を向けると、ブンブンと首を振って否定された。


「うん。アンガーちゃん、よろしくね」

「姉御~」


 アンガーはリンカに抱きつく。

 リンカに撫でられ、アンガーは目尻を下げる。

 その姿は可愛らしいサポート妖精だった。


「さあ、そろそろ寝ようか」

「はいっ!」

「アンガー、ちゃんとリンカちゃんを寝かせるんですよ~」

「おぅ! 俺っちの添い寝でバッチリよ」


 アンガーの登場で、すっかり和んだ。

 そのおかげか、その夜はぐっすり眠ることができた。





   ◇◆◇◆◇◆◇


 毎週日曜日19;19更新です。


次回――『予想外の再会』

11月27日更新です。


 アンガーは白い特攻服スタイルです。


   ◇◆◇◆◇◆◇

   ◇◆◇◆◇◆◇


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「第3回HJ小説大賞前期小説家になろう部門」で受賞し、書籍化が決定した


『見掛け倒しのガチムチコミュ障門番リストラされて冒険者になる 〜15年間突っ立ってる間ヒマだったので魔力操作していたら魔力9999に。スタンピードで騎士団壊滅状態らしいけど大丈夫?〜』

https://kakuyomu.jp/works/16816927863361233254


第2部連載再開しました!


お楽しみいただけたら幸いですm(_ _)m


   ◇◆◇◆◇◆◇


ボイコネでも活動始めました。


https://stage.boikone.jp/profile/157784

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