第72話 第2階層再度

 ――ヤギュウ堂でキモノ作成を依頼した翌日。

 俺たちはダンジョンに向かう。


 一昨日までは『断空の剣』対策に必要な【債権者保護】を購入するために魔力を貯めこんできた。

 ヤツらとの対決も終わり、今日からまた本格的に冒険者活動再開だ。

 それに備えて、いくつかスキルを購入した。


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【購入スキル】


〈強化系〉

 【身体強化LV1】、【気力強化LV1】(NEW!)


〈探索系〉

 【気配察知LV1】


〈隠系〉

 【気配遮断LV1】


〈魔法制御系〉

【魔力操作LV1】


〈物理戦闘系〉

【短剣術LV1】、


〈魔法系〉

【火魔法LV1】、【風魔法LV1】(NEW!)、【水魔法LV1】(NEW!)、【土魔法LV1】(NEW!)、【回復魔法LV1】、【付与魔法LV1】(NEW!)


〈耐性系〉

 【毒耐性LV1】(NEW!)


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 【気力強化】が5千MP。【毒耐性】が3千MP。

 残りの4つの水、風、土、付与魔法が各1千MPだ。

 どのスキルも今日の攻略に役立つものばかりだ。


 総計1万2千MPだが、今の俺は一日当たり3万5千以上使えるので問題ない。

 対決が終わってから、これらスキルを購入した残りの魔力は全部魔力量の増加につぎ込んでいる。

 おかげで、現在の最大魔力量は5,000超えだ。


 今のところは、これらのスキルだけで十分。

 これからしばらくの間も、戦闘に必要な魔力以外は、最大魔力量増加に突っ込みつつ、必要に応じてスキルを買っていくつもりだ。


 というわけで準備は万端。

 今日の目的地は第2階層だ。

 この階層はEランク向けの階層。

 リンカもEランクに上がったし、スキル【壱之太刀】が強力すぎるので、十分戦えるだろう。


 第2階層は第1階層と同じような屋外型のフロアだ。

 第1階層が草原と森林から構成されたシンプルなフロアだったのに対し、ここは、岩山、河川、砂地など、変化に富んだ構成になっている。


 そして、出現モンスターも幅広い。


 岩山では硬いロック系モンスター。

 河川沿いでは、水棲系モンスター。


 ――といったように、その地形に対応したモンスターが出現する。


 その中で、俺たちのターゲットは――。


 第2階層に着いてから30分ほど歩いた。

 途中、何度かモンスターと戦闘になったが、【壱之太刀】を発動させたリンカと、相手に合わせた属性魔法を放つことで、どれも瞬殺だった。


 目の前には切り立った崖。

 そこにポッカリと空いた洞穴。

 大きさは3メートルほど。


 ――メガアントの巣穴だ。


 メガアントはその名の通り、蟻型モンスターだが、その体長は1メートルを超える。

 黒く硬い外骨格に覆われていて、ダメージを与えるには柔らかい関節を狙うのが有効だ。


 巣穴の入り口付近では、数体のメガアントが警戒にあたっている。


「思っていたよりおっきいですね」

「ああ、最初はビビるよね」


 サイズが大きくなっただけで、生理的嫌悪感が激増する。

 初見のリンカは少し気が引けていた。


 一方、エムピーはといえば、のん気に「ありさんです〜」と喜んでいる。

 ギフト妖精である彼女はモンスターに対して恐怖や嫌悪感は感じないらしい。

 なんでも「みんな魔力のこやしです〜」だそうだ。


「大丈夫?」

「……がっ、頑張ります」


 緊張気味のリンカだが、俺はなんの心配もしていない。


「じゃあ、バフかけちゃおう」

「お願いしますっ」


 俺はさっそく覚えたての【付与魔法】の詠唱を始める。


「――【攻撃力上昇】」

「――【守備力上昇】」

「――【敏捷性上昇】」


 3つのバフの重ねがけだ。

 普通はこんなこと出来ないのだが、【魔力出納】が不可能を可能にしてくれる。


「凄いですっ」

「リンカさん、キラキラしてます〜。美味しそうな魔力です〜」


 バフの魔力に包まれ、リンカの身体はかすかに淡い光を放っている。

 これで準備は完了だ。


「では、行きます」


 リンカは大きく深呼吸すると、詠唱を開始した。





   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】

 次回――『メガアントの巣穴(上)』


 アリ退治!

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