第71話 断空の剣10:ベッドの上で(下)
「お話できるようなので、今後の治療と費用についてお伝えします」
治療師が説明を始める。
「ここに入院すると、1日1万ゴルで最低限の治療を受けられます。今の経過から判断すると、5日間の入院になりますね」
「5日だとっ!?」
レントが告げた期限まで今日を入れて8日間。
なにかしら、手を打たないとマズい。
こんな場所でノンビリはしてるわけにはいかない。
「そんなにいられるかっ!」
「中途退院はご自由ですが、オススメいたしません。完治する前に無理をすると、傷が開いてしまいますよ」
「だが、無い袖は振れねえ」
それに、お金の問題もある。
治療費は五日間三人で15万ゴル。
一方、高額な高速馬車代を払ったせいで、『断空の剣』の所持金は8万ゴルしかない。
これでは2日間が限界だ。
「ご安心下さい。ギルドから融資を受けられます」
「融資だと?」
「はい。『断空の剣』はBランクパーティーで、借金の履歴もございません。なので、ギルドからの融資で治療費を賄うことが可能です」
「融資か……」
借りたところで、魔力が枯渇し満足に戦えない状態の今、返すあてはない。
だが、この場を乗り切るには、ギルドから借金するしか方法はなかった。
とりあえず、当面はどうにかなったことに、ガイは安心する。
そして、安心すれば、欲が出てくる。
「もっと早く出られる方法はないのかッ?」
「ええ、ございます」
「早くそれを教えろっ!」
「1日1万ゴルの治療費で受けれるのは最低限の治療です。追加料金を支払って特別治療を受ければ、明日には全快して退院できますよ」
「その特別治療ってのは、いくらするんだ?」
「3人分、諸経費すべて合わせると94万ゴルになります」
「クッ……。それも融資でまかなえるのか?」
「はい。問題ありません」
なんとか早期退院の目処が立ち、ガイは胸を撫で下ろす。
高額の借金になるが、それは後回し。
まずはレントの事をどうにかしないと。
そして、また、欲が出る。
毒を喰らわば皿まで、とガイは問いかける。
「ちなみに、最高でいくらまで借りれるんだ?」
「『断空の剣』さんは初回借り入れですので、100万ゴルが上限となります」
チッ、とガイは内心で舌打ちする。
それじゃあ、手持ちと合わせても14万ゴルしか残らねえじゃないかと。
「……じゃあ、100万ゴル貸してくれ」
「承知いたしました。利息は1割、返済期限は1ヶ月後ですが、よろしいですか?」
ギルドからの借り入れは返済期限厳守。
一ヶ月以内に利息を含めて返済しきれない場合は、強制的に資産が差し押さえられる。
優しいレントのように利息さえ払えば待ってくれるわけではないのだ。
「ああ、かまわん」
「では、特別治療の準備に取りかかりますね。それまで、安静にしていて下さいね」
治療師は言い残すと、部屋を後にする。
「クソっ、どうしろってんだよッ!」
吐き捨てた言葉が、静かな部屋に響く。
レントが告げた運命の日まで、対策できるのは今日を含めて8日間。
彼らはどう過ごすのか?
返済に全力を尽くすのか?
無駄にあがくのか?
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