第67話 宴の後(下)

 大きな疑問が解消したので、他に気になっていたことも尋ねてみる。


「貸し付け相手が『断空の剣』になっているけど、パーティーが解散したらどうなるの?」


「その場合は貸し付け対象がパーティーから、各メンバーに変更され、各人から相当分を徴収することになります〜。なので、心配ご無用です〜」

「連帯責任とかは?」

「それは大丈夫です〜。バックレることは不可能なので、各人からきっちり搾り取りますよ〜」


 都合の悪いことは、他人のせいにするヤツらだ。

 責任をなすりつけ合った末、パーティーが空中分解することも十分にあり得る。

 その点が心配だったが、問題ないことが分かり安心する。


 そして、もうひとつ気になるのが――。


「もし、返し終わる前にヤツらのうちの誰かが死んだらどうなるんだ?」

「債務者が死亡した際には、魂を魔力に変えて弁済させるので問題ありません〜」

「じゃあ、取りっぱぐれはないってことか」

「はいです〜。まあ、その場合、魂を失うことになって、輪廻の輪からはずれ、無間地獄に堕ちることになるんですけどね〜。でも、債務不履行なら、それも当然の報いですよね〜」

「おっ、おう……」


 エムピーさん、笑顔が怖いです。


「まあ、ゴミ虫らに自殺する勇気もないですし、冒険する根性もないでしょう。安心して、骨の髄まで搾り取ってやるです〜」


 すでに20万MP徴収しているが、ヤツらへの貸付量はまったく減っておらず、267万ちょっと残っている。

 エムピーはこっからどれだけ搾り取る気でいるんだろうか……。


「エムピーはどうなると思う?」


 以前エムピーから訊いた話では、今から心を入れ替え、全力で返済すれば、ギリギリ破滅は免れられるそうだ。

 俺としては、是非とも破滅してもらいたいのだが……。


「まず無理でしょう〜。たとえ、心を入れ替えたとしても、すべてを投げ打って、死ぬ気で返済しないと間に合わないです〜」


 エムピーが黒い笑みを浮かべる。


「多少は頑張ると思いますが、まあ、間に合わないでしょうね〜」

「じゃあ、9日後が楽しみだな」

「楽しみです〜」

「私もワクワクしてきましたっ」


 今日の決闘で、虚仮こけにされた屈辱は、何倍にもしてやり返した。

 だが、もうひとつ。

 俺への魔力返済問題は、まったく解決していない。

 9日後こそ、地獄の入り口。

 ヤツらがすべてを失うアリ地獄の始まりだ。


「まあ、ヤツらのことはその日までお預けだな」


 ヤツらがどう破滅するか、その日を指折り数えるのも、また楽しみのひとつだ。

 だが、俺たちには俺たちの冒険もある。


 決闘で一区切りついたし、明日からはまた仕切りなおしだ。


「リンカも頑張ってきたし、ヤツらとのことも一段落ついた。明日は一日お休みにして、明後日からまた、ダンジョン攻略頑張っていこう!」

「はいっ! がんばりますっ!!」

「がんばるですー!!」


 もう夜も遅い。

 俺たちは眠りにつくことにした――。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】

 今回で第5章『『断空の剣』との対決』完結です。

 次から第6章『悪あがき』始まりです。


 まだ懲りていないようです。

 どんな悪あがきをみせてくれるでしょうか。

 お楽しみに!


 次回――『決闘翌日』


   ◇◆◇◆◇◆◇


 実際に借金でお困りの方は、自分で考えてあがこうとせず、一刻も早く専門家に相談することをオススメします。

 悪あがきで好転することはまずないですし、時間とともに状況は悪化します。

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