第55話 リンカ(4/4)

壱之太刀いちのたち終之太刀ついのたち――斬り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、一歩踏み込め阿修羅道」


 ゴブリン・コロニーを前に【壱之太刀】を発動する。

 沸き上がる高揚感と破壊衝動。

 いつもより、強大。

 これまで感じたことがないほどだ。


 ――そうだ。それでいい。

 ――殺せ。ころせ。コロセ。


 心の声に衝き動かされ、コロニーに向かって走り出す。


 無数のゴブリンがいるが、敵ではない。

 ただの的だ。

 剣の養分だ。


 剣を振るう度にゴブリンの首が飛び、それにともなって高揚感が強くなる。

 振る度に剣は疾く、鋭く、正確に。


 初めて自分の身体の動かし方を理解した。


 もっと。


 もっともっと。


 もっともっともっと。


 剣を振り抜くと同時に、次の獲物に駆け寄り、首を飛ばす。

 自分が作り出すリズムが戦場を絡めとる。

 まるで、舞台の主役になった気分。


「ああ、これが《阿修羅道》――」


 今までは、魔力切れを気にしていて、ここまで没頭できなかった。

 だけど、今は――。


 チラリとレントさんに視線を向ける。

 私を信頼してくれているようで、離れた場所でこちらを見守っている。


 そして――。


 レントさんとの繋がりを感じる。

 彼の魔力が私に流れ込んでくるのが分かる。

 その魔力が、私を動かす原動力!


 レントさんがいれば、いつまでも戦ってられる。

 全身が高揚感で支配される。

 とてつもない快感に身体が震え上がる。


 ――そうだ。戦い続けろ。

 ――死ぬその瞬間まで、剣を振るえ。

 ――立ちふさがるすべてを斬り伏せろ。


「この時間がいつまでも続いて欲しい……」


 しかし、ゴブリン三十体程度では、長くはもたなかった。


 ふっ――と身体からがなにかが抜ける感覚。

 敵がいなくなって【壱之太刀】が解除されたのだ。


 いつもなら、この後に技後硬直が襲ってくるはずだが……。

 いつまで待っても技後硬直は起こらない。

 それどころか、戦闘前よりも身体が軽く感じられる。


「もっと、もっともっと、戦いたいっ!」


 お試しの一日だったはずが、私はもうレントさんから離れられなくなってしまったことに気づいた。


 昨日まで、私は自分のギフトを恨んでいた。

 このギフトさえなければ、と何度も思った。


 だけど、もうダメだ。

 この快感を知ってしまったら、抜け出せない。


 私自身が剣なんだ。

 敵を倒す――それだけを目的にした剣なんだ。

 他の生き方なんか、できっこない。


 レントさんには感謝している。

 私の行くべき道を与えてくれたから。


 でも、私をこの道に引き込んだ責任は取ってもらわないとね。

 一生、ついていくから、ちゃんと最後まで責任取ってね。





   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】

 今回で間章1『リンカ』完結です。

 次から第5章『『断空の剣』との対決』始まりです。


 次回――『再会』


 三週間ぶりの再会です。



   ◇◆◇◆◇◆◇


【宣伝】


2023.9.1 以下2作品が連載中です。

こちらも是非お楽しみください!


『変身ダンジョンヒーロー!』


ダンジョン×配信×変身ヒーロー


https://kakuyomu.jp/works/16817330661800085119




『主人公? 悪役? かませ犬? 俺が転生したのは主人公の友人キャラだっ!』


鬼畜ゲーに転生し、ゲーム知識とプレイヤースキルで無双ハーレム!


https://kakuyomu.jp/works/16817330655366308258

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る