第54話 リンカ(3/4)

 一緒にパーティーを組むことになった後、レントさんは自分のギフトについて説明してくれた。


 《無限の魔蔵庫》という名前。

 その機能。

 今までの苦労。


 驚いたことに、私の【阿修羅道】と同じ、SSSランクのユニークギフトだった。

 ユニークギフト持ちには会ったことがあるが、SSSランクギフトの持ち主は初めてだ。


 そして、私と同じく、ギフトに人生を翻弄されてきたこと。

 私はレントさんに強い親近感を覚えた。


 【魔力貸与】。

 レントさんのスキルがあれば、私の【壱之太刀】は時間切れなく、いつまでも戦える。

 信じられない思いだった。


 だけど、もし、それが本当なら……。


 ただ、もちろん、一方的に私が得をする話ではない。

 借りた魔力は返さなければならない。


「返さなかったら大変なことになるから、ちゃんと返してね」


 レントさんは笑顔だったが、その目の奥底に横たわる凍りついた感情は冗談でないことを明らかにしていた。

 うん。絶対に返そう。固く心に誓った。


 それから、具体的な説明に入った。

 明日、貸与する魔力は600〜700程度。

 利息は1割で、返済期限は特に設けない。

 一年たたない限りは強制的に取り立てできないそうで、それまでに返してくれればよいとの話だった。


 明日やってみて、やっぱりダメだったとしても、それくらいの魔力なら一年あれば問題なく返せるだろう。

 私は一日で最大24MP返せる。30日あれば十分だ。

 一年のうち、30日。

 週に一度は休みを入れるから、余裕を持って返済できる量だ。


「――という話なんだけど、どうかな? 受け入れてもらえるかな?」


 レントさんが説明した内容は理解したつもりだ。

 とくに問題があるとは思えない。


 それに、レントさんの人柄だ。

 今までうまい話を持ちかけて、騙そうとする相手は何人もいた。

 だけど、レントさんからはその手の輩とは違うなにかを感じ取れた。

 そして、レントさんの中にある寂しさも伝わってきた。


 頭でも、気持ちでも、この提案を受け入れようと思った。


 だけど、最終的な判断を下したのは――私の呪いギフトだった。


 ――この話に乗れ。

 ――制約を離れ、思う存分剣を振れ。

 ――その身を真紅に染め上げろ。


 私はレントさんの提案を受け入れた。

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