第41話 リンカレベリング(上)

 パーティー登録を済ませた俺たちは、大迷宮第1階層へ移動した。

 今日の目的はリンカのレベリングだ。


 俺のギフトについては、昨日のうちにリンカに伝えてある。

 そして、【魔力貸与】でリンカをサポートすることも。


 ちなみに、リンカのステータスは――。


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名前:リンカ

年齢:18

性別:女


ギフト:阿修羅道(SSS)

MP :10/10


冒険者ランク:F

パーティー:二重逸脱トゥワイス・エクセプショナル


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 リンカは三年間も冒険者をやっているのに、冒険者ランクは初期状態のFランクのまま。

 これまでのパーティーでは、いつまでも成長しないリンカは愛想をつかされ、追放されてきた――七回も。


 その原因はユニークギフトである【阿修羅道】のせいだ。

 このギフトがリンカを今まで苦しめてきたのだ。


 エムピーが言うには――。


「このギフトは育て上げれば最強なのですが、成長がむちゃくちゃ遅いんですよね〜」


 ――とのこと。


 俺のギフトも成長が遅く、ガイたちに置いて行かれた。

 だが、リンカのは俺よりも遥かに成長が遅いらしい。

 冒険者ランクも上がらず、最大魔力量も三年間で2しか増えずに現在10――駆け出し冒険者並みだ。


 だが、俺は決して彼女を見捨てない。

 魔力を貸与して、仲間を育てる――それが《無限の魔蔵庫》の本分だからだ。


「じゃあ、行こうか」

「はいっ!」


 先日お世話になったゴブリンの森に踏み入っていく。

 リンカにとっても楽勝な相手なので、その顔には余裕が感じられる。


 途中何度かゴブリン戦をこなし、二人のギフトの性能を確認し合う。

 予想通り、相性はバッチリだった。


 そして、本日の目的地――ゴブリン・コロニーに到着した。

 やはり、実力を測るにはコロニーが丁度いい試金石だ。


 少し離れた場所からゴブリンどもを観察する。

 その数30体。

 コロニーとしては小規模だ。

 ヤツらはまだ、俺たちの接近に気づいていない。


 最初は様子見ということで、小さなコロニーを選んだ。

 これで問題なければ、段々と規模を大きくしていくつもりだ。


 コロニーを前にして、リンカは少し固くなっている。

 この先、俺は【魔力貸与】でサポートするのみ。

 ここを壊滅させるのは、リンカ一人の仕事だ。


 昨日聞いた話によると、コロニー討伐は何度か経験しているが、ソロ討伐はもちろん初めて。


 確かに、リンカがソロで討伐するのは不可能。

 リンカのギフトを知った俺もそう判断した。

 だが、その不可能を可能にするのが――俺の【魔力貸与】だ。


「大丈夫だ。俺を――いや、自分を信じろ」

「…………はいっ!」


 俺の言葉を頭の中でしばし転がした後、リンカは力強く頷く。

 そして、大剣を握る両手に力を込める。


 リンカが構えるは『死骨剣しこつけん』――クアッド・スケルトンのドロップアイテムだ。

 クアッド・スケルトンの骨で出来た飾り気のない大剣。

 本来、第4階層に出現するモンスターのドロップ品とあって、折れてしまったリンカの剣よりも遥かに高性能な武器だ――固く、重く、鋭い。


 リンカは最初、「こんな貴重な武器受け取れません」と中々了承してくれなかった。

 なんとか「リンカが強くなるのはパーティーにとって、ひいては、俺にとって得になる」と説得して、ようやく受け取ってくれた。


 リンカが詠唱を開始する――。


 物理職のスキルは普通、詠唱を必要としない。

 短い発動語句トリガーを口にするだけで発動する。

 だが、リンカ唯一のスキルは詠唱を必要とするものだった。


壱之太刀いちのたち終之太刀ついのたち――斬り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、一歩踏み込め阿修羅道」


 詠唱を終えたリンカはコロニーに向かって疾駆する――。

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